サリアの災いを呼ぶ姫 6
「……いやだ、また枯れちゃったわ」
回廊で、イザベラ王妃付きの侍女ララは暗い顔で呟いた。
「どうしたの?」
彼女と仲の良い王太子付きの侍女サナが声をかける。
「薔薇よ。王妃様のお部屋の薔薇が何度替えても枯れちゃうの。庭園の花もみんな枯れちゃったし……、王妃様の不機嫌がとまらないし、何だか怖いわ」
「何それ、朝から王妃宮は、何故か水も干上がっちゃったんでしょう?」
「そうよ。レティシア姫に意地悪ばっかりするから、前王か前王妃の娘を苛めるなって呪いじゃないのってみんな怖がって陰で言ってるわ」
「でも、レティシア姫は、ディアナの王子様と幸せなんでしょう? ディアナではイザベラ様に意地悪されてたことなんて思い出さないんじゃないの? フェリス殿下と二人でレティシア姫の馬まで迎えに来たって、美貌のディアナの王弟殿下の話題でいま持ちきりで……」
「それがね……フェリス殿下があんまり素敵だったんで、レティシア姫の婿には惜しくなったらしくて、アドリアナ姫と取り換えろ、て手紙書いたの、イザベラ様」
こそこそとララはサナの耳に囁く。
「え、それは……無理じゃない? もうレティシア姫、輿入れしちゃってるんだし……意外にディアナの王弟殿下とうまくいってるみたいだし……そんなことしたら、ディアナ王家が怒るんじゃ……」
「そう思うでしょう? 私達だって、それはちょっと……と思ってるけど、王妃様は占い師にレティシア姫は不吉だって占いさせてすっかり上機嫌なのよ」
「あの王妃様には逆らえない気の弱い占い師? でも魔法はディアナのお家芸でしょう? いつもの嘘の占いは通じないんじゃ……あ」
「しーっ。いくらアレク様付きでも、そんなこと言ったのバレたら首になるわよ」
慌ててララが指をサナの唇の前に立てる。
「ごめん。ありがと。……だってみんな、本当は思ってないわよ。怒られるから、そういう振りをしてただけで。レティシア姫は確かに子供らしからぬ変わった姫だったけど、小さいのに本ばかり読んでたせいか、やけに賢かっただけで、何も悪いものがついてるわけじゃ……」
「そうねぇ。レティシア姫は、ディアナにお嫁に行けてよかったと思うの。私だってあんな小さな姫様苛めるの嫌だったもの。でも王妃様には言えないわ。レティシア姫が賢いとか可愛いとか言っちゃダメよ。里に返されちゃうわ」
レティシアが疎まれた理由は、可愛らしい容姿に加えての子供らしからぬ聡明さで、それは幼い天才という訳ではなくて前世の記憶のせいなのだが、どちらにしろ、もっと年齢相応のあどけない姫だったら、脅威とは思われず、迫害もされなかったかも知れない。
「レティシア派が姫の身を案じて、ディアナに逃がしたんだって言われてたものね。でも、レティシア姫、本当に強運ね。醜い変人と思ってたら、輝くような御方だったんでしょう? フェリス殿下から御言葉賜ったっていう厩番まで鼻高々よ。アレク様のご友人もお噂してらしたけど、フローレンス大陸で一番美しい王弟殿下なんですって? そんな御方が、なんでちいさなレティシア姫を花嫁に貰われたのかしら?」
「さあ。ディアナの事情はわからないけど、おかげでイザベラ様は大変よ。そんな優れた方だと知らせなかった外務大臣が悪いって。でも大臣は呼び出されても、冷たいのものよ。私めには両陛下からフェリス殿下に関する御下問がございませんでした。一言お尋ね頂ければ、フェリス殿下は幼い頃から天才少年の聞こえも高く、聡明で魔法にも武芸にも通じ、始祖レーヴェ神に生き写しと言われる美貌の方だとお伝えできたのですがって嫌味満点よ」
「ちっとも興味なかったんでしょうね。嫌いなレティシア姫の嫁入り先なんて」
「イザベラ様はいままで王妃になるおつもりでお暮しだった訳ではないから……。とはいえ、もう少し外国のことにも興味を持たれた方がいいわよね」
「お勉強はともかく、花嫁交換はやめたほうがいいと思うわ。 城下でも凄くフェリス殿下とレティシア姫とサイファの可愛い絵姿が出回ってるし、ディアナの御機嫌も損ねるけど、サリアの国民感情も損ねるわよ。みんな、お可哀想なレティシア姫様がディアナで幸せそうでよかった! さすがだレーヴェ神ありがとう! て喜んでるんだから……」
レティシアの婿は僕であって、お気楽な竜王陛下のレーヴェではありませんが? とフェリスが聞いてたら、苦笑しそうな侍女たちのお喋りではある。
もういちごの季節も終わりかな~
と今日うちの犬王子と食べてた苺が凄く美味しかったです!
今年はレティシア書く気分盛り上げていこうと苺だけは贅沢して
よく苺食べてますが、今日の苺は眼の覚める美味しさでした(笑)
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コミック三巻表紙❤
五歳で、竜コミック連載