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あなたの色に染まりたい~ハズレスキルでしたが王子様に見初められました  作者: 伊織ライ


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救出

「──レニエ侯爵と侯爵夫人については滞りなく捕縛が完了している。セレスティーヌ嬢は両親と別の馬車で身分を偽装し王都を抜け出していたが、それも次の検問所ですぐさま発見し既に捕縛済みだ。あとは犯罪と知りつつ彼らに与していた者を順に捕らえて調べていたんだが……拠点となっていた屋敷に残されていた資料から、レニエ家に敵対する過激派組織の存在が明らかになったんだ」

「それが、あの人たちですか……?」

「ああ、そうだ。ほとんどがレニエ家の犯罪行為による被害者たちで、その非道な行いにより家族の命を奪われた者も多かった。貴族に反逆して処刑されてでも、仇を討たんとして機会を狙っていたようだ。あの家は、自領の領民を攫って他国に売ったりもしていたようだからな……。我が国の民は皆、洗礼式の後にスキルを授かるだろう? そして片方の親がスキルを持っていれば、その性質が子世代に遺伝する可能性があることも確認されている。他国民からしたら、強大な力を持つ特殊な存在を手に入れるチャンスということになるのだろうな……。平民同士の真っ当な婚姻であれば国際結婚も禁じられていないが、そもそも平民はほとんど生まれた町から出ることもない。だからこそこれまではさほど問題視されていなかったところもあるが、これからはもっと真剣に考えていかないとならないだろうな。今回のように、本人の意思とは反して無理矢理子を孕まされる危険性もある。貴族間の結婚だけでなく、今後は平民にまで範囲を広げてしっかりと彼らを守る法律を整備していかなければ」


 レニエ侯爵家が行っていた悪事の悍ましさに背筋が震える。私もこれからひとり国を出て、外国にしばらく滞在する予定だったのだ。例えハズレであってもスキルを持つ人間である以上、そういう可能性もあったのだと改めて実感してしまった。

 この国の貴族は基本的に皆、攻撃スキルを持っている。だから、無理矢理攫われるようなことはあまり考えられないけれど……私には自分を守る力がない。そして私は色変えというハズレスキルしか授からなかったけれど、生家であるデュラン家は代々強力な火魔法を受け継いできたという歴史があるのだ。私の生む子にもその血は確実に入るのだから、この胎を狙われることだって十分考えられる。実際今回襲われた時にも、ほとんど抵抗することなど出来なかったではないか。せめてスキルを使わずとも、身を守る程度に戦う力があればまだ違ったのかもしれないけれど……。


「レニエ家の悪行に痺れを切らした彼らは、とうとう復讐のために動き出してしまったんだ。俺たちの摘発を待ってもらえたら一番良かったんだが……正規の手段で騎士に捕縛されたとしても、国が正当に彼らを裁いてくれるのかどうかと疑問に思われてしまったらしい。貴族といえば即ちあのレニエ家の面々のイメージしか持たない彼らからすれば、同じ貴族が作ったルールなど信頼に足るものではないのは仕方ないが……。確かに受けてきた被害は甚大だし、俺たちの動きが遅かったせいもある。もっと早くレニエ家をなんとかできていれば、助けられた人がいたかもしれないのだから」


 はぁ、と小さくため息を吐くフェリックス殿下は少し落ち込んでいる様子だった。それはそうだろう、他でもなく彼自身が、今回レニエ侯爵家の罪を暴くために自ら現地へ足を運び当事者たちを捕縛してきたというのだから。

 動きが遅かったと言っても、フェリックス殿下自身は留学から戻ってきたばかりである。きっと政務に携わるようになってすぐ、かの家の状態に気付いたからこそすぐに調査を開始したはずだ。

 あれこれ言い訳をしようと思えばいくらだって理由は付けられる。それでも殿下は、レニエ家の被害者である彼らに罪を犯させたくはなかったのだと思う。けれど、復讐のために走り出してしまった彼らを止めるには一歩遅かった。


「こちらでも出来る限り被害者の売られた先を調査して、助けられる者は助けてきたつもりなんだ。けれど侯爵も馬鹿ではないから、全員を見付けるのに時間がかかってしまって……証拠を固めるまではこの事件を公表することも出来なかったしな。図らずも君を襲った者を捕えたことで組織の全貌が判明し、調査を進めることが出来そうだ。これで余すところなく、侯爵がこれまで行ってきた全ての罪を裁くことが出来るだろう」

「……お役に立てたなら、良かったです」


 私の言葉に、フェリックス殿下は痛みを堪えるような表情を見せた。


「それでも俺は……君をこんな危険な目に合わせてしまって、本当に申し訳ないことをした。どれほどの権力や地位を得たとて、大事な人ひとり守れないのでは何の意味もないというのに」

「殿下のせいではありません。私が、ただ愚かだっただけで」


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