滞在
数週間後
俺はタダで宿や食事をもらうのも偲びないので騎士団の道場で柔術を教えていた。
「シカノスケさん、今日はこれぐらいに」
「そうだな。みんな!今日はここまでにしよう」
「シカノスケさんのおかげで格闘術がだいぶよくなりました」
「俺より団長に教えて貰った方がいいんじゃないのか?俺より強いぞ」
「あの方は教え方が感覚なので……」
「そうなんだな。じゃあ俺は宿に戻るよ」
「ありがとうございました」
宿に戻るとルミが駆け寄ってきた。
「おじちゃん!わたし、今日もお手伝いしたんだよ!」
「そうか、偉いな」
俺はルミの頭を撫でた。
「シカさん、今日もお疲れ様。お風呂沸かしてあるよ」
「ああ、すまない」
宿屋の親子がシカさんと呼ぶようになってどれぐらい過ごしただろうか。
しばらくプレッツェルの姿も見ていない。
早くルミを母親の元へ送り届けたいのだが……思ってたより時間がかかるらしい。
「シカさん、今日いい酒が入ったんだ。飲まないか?」
「おお、かたじけない」
風呂に入り、親父と酒を飲んでいると来客があった。
タルト騎士団長だ。
「シカノスケ、今日は報告に来た」
「久しいな。カールの事か?」
「ああ、王都で裁きが下った。証言と調査が決め手になって、カール公は失脚した。これで公として追っ手が来ることはもうない」
「そうか……では、明日騎士団と伯爵に挨拶に行こう。……ところで、お前もどうだ?」
俺はタルトにも酒を勧めた。
「いや、任務中だ。それに……私は下戸でな」
「そうか……ならば、強く言えんな」
「では、明日待ってるぞ。プレッツェル伯爵もいるはずだ」
「わかった。伯爵は飲めるのか?」
「ああ、嗜む程度だと思うが」
「世話になったから手土産は持って行かんとな」
「喜ぶと思うぞ。それと私が留守の間、騎士団に格闘術を教えてくれたらしいな」
「ああ、恩返しがしたくてな」
「礼を言う。世話になったな」
「こちらこそ」
タルトは帰って行った。
「おじちゃん、明日からレイア村に行くの?」
「ああ、朝早いから今日は早めに寝ておけ」
「うん!」




