41/50
武士道
話を聞き終えたプレッツェルの眼には怒りの色が湧き上がり、手はわなわなと震えていた。
「そうか……」
「これが俺たちの知っている全てだ。なぜルミを狙うかまでは知らん」
「タルト……カール公の領地に行き、現地の人々の話を聞いてこい。騎士団を動かせ」
「はっ!」
そう言うとタルトは部屋から出て行った。
「少し時間がかかるが、私が何とかしよう。すまんがしばらくこの街に滞在しては頂けんか?」
「なぜだ?」
「今後の旅路を安全にするためだよ。宿代は私が出す」
「なぜそこまで?」
「君の騎士道への礼儀だよ」
「武士道だ」
「ブシドー?」
「俺の国の心構えだ」
「そうか……ひとつ聞きたい」
「なんだ?」
「なぜ見ず知らずの少女の為にそこまでする?」
「約束したからだ」
「……それだけか?」
「……それで十分だろう」
「シカノスケ……。お前のような人間は久しく見ておらん」
プレッツェルは胸に手を当てた。
恐らくこの国での敬意の示し方なのだろう。
それだけはわかった。
「ところで、シカノスケ。私に仕える気はないか?」
「それはお断りさせて頂く」
「なぜだ?」
「俺は祖国に捧げた身ゆえ、その頼みは聞けん」
「そうか……残念だ。気が変わったらいつでも屋敷に来てくれ」
「……ああ」




