親父の酒
その夜。
宿屋の親父は部屋に酒を持ってきてくれた。
そのまま部屋飲もうと言う流れになり、俺と親父は酒を酌み交わした。
ルミには牛乳を持ってきてくれた。
「強い酒だ。だがどこか果物のような甘みがある」
「わかるかね?」
「なぜ、俺に酒を?」
「何か訳ありと思ってね。張り詰めてたからうちではリラックスして欲しかったんだよ。それに……一人で飲むのは味気ないからな!」
「……かたじけない」
「お前さんは随分静かに飲むね」
「……口下手でな」
「その子はお前さんの子かい?」
「いや、ここ……こっちの国で初めて会った子だ。故郷に送り届けると約束した」
「通りで似てないはずだ!お前さん珍しい顔立ちしてるからね!」
親父は豪快に笑った。
「親父、レイア村はどんな所だ?」
「静かな村さ、そこも一応プレッツェル伯爵の統治下だから平和だよ」
「そうか……」
俺は少し安心した。
「お前さん故郷はどこかね?」
「日本てところだ。この国の地図にはな
いだろうが……小さな島国だ」
「ニホンか……知らんな。海の向こうかい?」
「そんなところだ」
「長旅だったろう。今夜は旅の疲れを癒してくれ」
そう言うと親父は立ち上がった。
「美味い酒をありがとう」
「いやいや、付き合わせて悪いね。じゃあ、おやすみ。お嬢ちゃんもな」
親父は部屋を出て行った。
「おじちゃん、よかったね」
「ああ。……そろそろ寝るか」
「うん!」
その日は俺もルミもフカフカのベッドで深く眠った。
この旅が始まってから初めての事だった。




