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水筒と軍帽
見た事のない草木、鳥、虫。
どこか違う土の匂い。
暖かな気候。
空は変わらず青空があった。
「満州ではなさそうだな」
隣のルミに話そうとしたがいなかった。
振り返ると俺の少し後ろを歩いていた。
人攫いにあったんだ。警戒して当然か。
「……水飲むか?」
「……え?」
「そんな遠くにいないで、こっちに来い」
「……うん」
恐る恐る俺に近づく。
「……ほら」
「?これなに?」
「水筒だよ。水が入ってる」
「見た事ない水筒……」
水筒は知っているようだったが、珍しがっているようだ。
蓋を引っ張って開けようとしている。
「ここを回すと開くんだ」
「うん……あ、開いた!」
喉が乾いていたのだろう。
ルミは水筒に口を付けるとゴクゴク飲んでいた。
……飲み干しそうな勢いだった。
「全部飲むなよ。大事に飲むんだ」
「う、うん」
ルミはハッとして口を離して、俺に返した。
俺はルミの分も考慮して水を口に含む程度に潤し、ルミに尋ねた。
「この辺りは詳しいか?」
ルミは首を横に振った。
「そうか……せめて道があればな」
しばらく歩くと、日差しが強く感じたので、軍帽を脱ぎ、ルミに被せた。
「……ありがと」
ブカブカな軍帽を両手で押さえ、小さな声でお礼を言っていた。
「気にするな。……お、道があるぞ」
明らかに人の手が加わった道に出た。
俺たちは道沿いに歩き始める。
街か村があればいいが……




