領主
西へ西へと向かっていると、村が見えてきた。
「見えてきたぞ。今日は布団で寝れるな」
「うん!お部屋広いかな?」
「広いといいな」
村の入口を入ると村人たちは皆、俺たちの姿を奇怪なものを見るような目で見て、家の中に入って行った。
無理もない、日本の軍服の男と白い少女だからな。
「旅の方!」
民家の中から中年の女に話しかけられた。
「家に入りなさい!」
「なぜだ?」
「いいから!急いで!」
俺たちはわけも分からぬまま家に招かれた。
「理由を教えてはくれんか?」
「今から領主のカールが見回りに来るんだよ!」
「領主?それと何か関係が?」
「カールは白い少女を探しててね、その子連れてかれちまうよ!」
俺とルミは顔を見合せた。
「ほら、来たよ!」
カールと呼ばれた領主は屈強そうな護衛を付けて村にやってきた。
「随分小柄な領主だな」
「護衛がデカイだけさ」
背丈はさほど高くなく、痩躯。鷲のように鋭い目つきが印象的だった
老人の男がカールに近づく。
俺は女に話しかけた。
「あのご老人は?」
「村長さんだよ」
村長はカールに尋ねた。
「カール様、今日は何用ですか?」
「この辺りで白い少女を追った部下が行方不明でね。見なかったか?」
「……いえ、見てませんな」
「そうか……」
カールはそれだけ言うと、護衛の一人の肩を一度叩いた。
すると護衛が村長を殴りつけた。
ゴツン!
「ぐあ!」
村長はその場に倒れた。
「部下がこの村を通った事は連絡が入っている。知らない訳がないだろう」
村長は立ち上がると、
「……見ておりません」
ドカッ!
村長はふらっと立ち寄った俺たちを庇って決して口を割らなかった。
俺は家の中で歯ぎしりをした。
「……。」
無言で銃剣を歩兵銃に装着すると
「およしよ、村長の好意を無にする気かい?」
「なぜ見ず知らずの俺たちを庇うんだ?」
「今までやられて来た事を考えるとね。こうする事でしか私らは反抗できんのさ」
「何をされた?」
「……私は6歳の子供を殺されたよ」
俺は頭に血が上るのを感じた。
「やめなったら!あの護衛、あんなのがゴマンといるのさ。特に傍にいる黒い甲冑着た男いるだろ?」
見ると、体が一際大きい黒い騎士がいた。
「あいつは黒騎士のクッキーだ。バケモノみたいに強いって噂さ」
村長は尚も殴られている。
「もう、勘弁ならねぇ」
「怒ってくれるのは嬉しいけどね、私らには私らの戦いがあるのさ」
俺は拳を握りしめた。




