大和魂
ビスケットは懐に入った俺に向けて剣を突き立てようとした。
しかし、その手が震え、口から一筋の血を流し、剣を落とした。
俺は既にナイフをビスケットの胴に深く突き立てていた。
そのまま捻りあげる。
「ぐ、ぐふっ……」
ビスケットは激しく吐血して仰向けに倒れた。
「はぁ……はぁ……」
俺は肩で息をしていた。
(強敵だった……)
「シカノスケよ……み、見事だ」
「……なぜ、人攫いを?」
「……食っていくためさ」
そう言うとビスケットは星空を見上げ、静かに息を引き取った。
「おじちゃぁん!!」
ルミは体当たりするように抱きついてきた。
「無事か……ルミ」
俺はルミを撫でた。
「おじちゃん!怪我いっぱいしてる!」
「ああ、浅い傷……いや、そうでもないな」
俺は身体中の痛みに耐えながら、浅く土を掘り、簡単な墓を作った。
「おじちゃん何でお墓作るの?」
「敵だったが……凄い男だったからな」
「凄くないと作られないの?」
「……ああ、生きる為に全力を出し合ったからな」
俺はルミに支えられながらフラフラと天幕へ戻った。
「おじちゃん、大丈夫?」
俺は深めの切り傷を縫っていた。
「死にはせん。ルミ、裁縫はできるか?」
「え、う、うん、簡単なのなら」
「すまんが、背中の傷縫ってくれないか?」
「え、やったことないし、怖いよ……」
「傷が塞がればいいんだ。荒くても構わん」
「う、うん……」
ルミは嫌々ながらやってくれた。
「痛くないの?」
「そりゃあ痛いさ」
「でも全然痛がらない……」
「大和魂だよ」
「や、やまと?」
「かくすれば、かくなるものと知りながら、やむにやまれぬ大和魂ってな」
背中のルミの手が止まる。
「……わかんない」
「上手く説明はできんな……。気にせず縫え」
慣れない手つきだったがルミはしっかりと縫ってくれた。
ちょっと突っ張るが……
「なかなか上手いじゃないか」
「もうやりたくない……」
俺はルミの頭を撫でた。




