桜
西に向かい、街道を俺たちは歩いていた。
「おじちゃん」
そう言うとルミは手を差し出した。俺はルミと手を繋いで歩いた。
「遠いからいくつか村を経由してから行くぞ」
「うん!」
次の村までは結構時間がかかるな。
しばらく歩くと辺りが暗くなってきた。
「今日はこの辺りで野宿をしよう。薪を集めてくれ」
「うん!」
「俺の目が届く所で集めろ」
「わかってるよー!」
その間に俺は携帯天幕を張った後、薪集めを手伝った。
「少し……集め過ぎたな」
「いっぱい集まったね!」
俺たちは笑った。
薪を準備して、マッチで火をつける。
「え?!今のどうやったの?」
「え?ああ、マッチだ。この棒を擦ると燃えるんだ」
「わたしにもやらせて!」
「……次な」
……マッチも、無駄には出来んな。
春と気候は似ているが、夜はまだ肌寒い。満州ほどではないが。
(雪之丞……故郷の土に帰れたのだろうか……)
焚き火に当たりながらルミが色々話しかけてきた。
「おじちゃんはどこから来たの?」
「日本という国だ」
「ニホン?遠いの?」
……ここは俺が知ってる世界ではないらしい。
「ああ……すごく遠いよ」
「レイア村着いたらおじちゃん帰っちゃうの?」
「そうだな。帰り方を探すよ」
「そっか……」
ルミは一度寂しそうな顔をすると再び口を開いた。
「もし、帰ったら何がしたい?」
「そうだなぁ……」
ルミは俺の言葉をわくわくしながら待っていた。
「桜が見たいな。今頃満開で綺麗だろうよ」
「サクラ?」
「春に咲く、薄桃色の綺麗な花だ」
「見てみたい!」
「ああ……いずれ見れるといいな」
「うん!」




