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23、飛翔! エターナルウイング!

 炎の四天王との戦いが終わった。

 闇の力から解放された俺に、ロミリアちゃん達が駆けて来る。


「ユミルさん! 大丈夫ですか? いつものユミルさん、ですよね?」

「うん。ごめんね、心配かけちゃって」

「一体何がどうなっていたのでござるか?」


 何がどうなっていたのか。

 実の所、俺自身もよくわかってはいない。


「うーん、どう説明したらいいものかしら」



 -私が説明しましょう-


 俺が言葉を選んでいると、辺りに不思議な声が響いた。


 俺達が不思議な声に気付いた瞬間、周りに光の結界が広がった。


「な、なに?」


 空に金髪の女性の姿が浮かび上がる。

 ……見た事ない女性だ。


「初めまして。私はこの世界の創造神、アラマです」

「そ、創造神?」


 これはまた、神様ときたか。


「か、神様ですか?」

「はい。今回の事、色々と疑問に思う事があるでしょう。その事を説明しにきました」

「は、はあ」


 突然の事に驚く俺達。しかしそんな驚く俺達に、創造神様は真実を告げた。



 さて、そうして始まった神様のありがたいお話だが。

 ……長い。

 しかも話があっちにいったりこっちにいったりするもんだからわかりづらい。


 というわけで話をまとめてみた。


 この世界では創造神と、突然現れた暗黒神との戦いがあった。

 暗黒神が何者かはわからないが、とにかく戦いは熾烈を極めた。


 その余波が、俺達の世界にまできた。

 それがあの「Fine Online」のイベント会場で起きた爆発だ。

 俺達は本来死ぬところだったが、俺達の世界の神様が助けてくれた。

 なんと、「Fine Online」を作ったのも俺達の世界の神様だった。


 俺達の世界の神様によって俺達は助かったが、暗黒神がその場に居た5人を連れ去ってしまった。

 それが魔王と四天王だ。

 ちなみに、魔王が復活までに3年かかるのは、暗黒神の力を完全に受け継いでいるからだそうだ。

 世界に与える影響が多いから時間がかかるのだとか。


 この世界の創造神は俺達の世界の神様にお詫びをしたそうだが、その時、俺達の神様はこの創造神に「許してほしければこの6人を異世界に召還させて、魔王を退治させろ」と言ってきたらしい。

 こうして俺達……ユミル、ロミリア、ランラン、クリーナ、デュノス、オリブーの6人は、この世界に召還されたそうだ。

 俺達の世界の神様は何を考えているんだか。


 創造神もなぜ俺達6人を選んだのか疑問に思って聞いたそうだが、その答えが……


「この6人が私の作ったゲームで最もロールプレイを楽しんでいたからだ。きっと異世界でも楽しく生きていくだろう」


 だそうだ。

 実は俺のエターナル、なんと俺達の世界の神様が、俺の事を気に入ってくれてプレゼントしてくれたものだそうだ。どうりで作成した時の事を覚えていないはずだ。俺は自分で作ったと思い込んでいたってわけだ。

 

 こうして異世界に召還された俺達6人と、共に旅立つ事になったこの世界の選ばれし6人は、魔王を倒す事になったのだ。

 魔王を倒さなければこの世界は暗黒神の力を宿した魔王に破壊されてしまうらしい。

 

 創造神様の話はここまで。あとは俺達の質問タイムとなった。


 俺達は元の世界に帰れるのか? 少なくとも今は次元が安定していない為、帰る事は出来ないらしい。

 倒された魔王達はどうなるのか? 魂が浄化された後、元の世界に別人として転生されるとか。

 元の世界での俺達は? 行方不明扱いだそうだ。

 なぜ俺達は中の人に変化するのか? 俺達の世界の神様の仕業らしいが詳しくはわからない。

 俺が闇のユミルになったのはなぜか? わからない。


 ……と、創造神様との話はこんな感じだった。


「私、すごく一生懸命たくさんしゃべったのに、とっても重要な話だったのに! こんな扱い酷いです!」


 創造神様が泣いている。いやだって長いんだもん。いつ終わるのかと思ったよ。


「……もういいです、というわけで、魔王退治は任せましたよ」


 完全に投げやりになってるなー、創造神様。



 ユミル達を見つめながら、創造神は、あの神との話を思い出していた。


「ロールプレイを楽しんでいた者達、という事は、しょせん遊び、ですよね? 大丈夫なのですか? 辛い現実に直面した時、彼らは耐えられるのでしょうか?」

「ユミル以外はユミルの気を引く事しか考えていないからな、何があってもユミルがいれば大丈夫だ。ユミルとデュノスは大の冒険好きだから何があっても前向きに生きていくだろう。オリブーは夢が叶っているからな。そうそう折れる事はないさ。あいつらは大丈夫だ、私が保証するよ」

「そう……なのですか」


 いまだにあの言葉を完全には信じられない。しかしこの者達は四天王の一人を倒した。このまま、魔王も倒してくれるかもしれない。少しは、信じていいのかもしれない。


 創造神は、ユミル達に向かって微笑むと、再びユミルに語りかけた。


「そうだ、ユミル。あなたにはあの神から、新たなる力を預かっています。その力を授けましょう」

「新たなる力、ですか?」

「ええ、どうですか? 力が欲しいですか?」

「そりゃまあ、貰えるものなら」

「ではユミル、これから先、私の話をカットしないと誓いますか?」


 ……は?


「私の話をカットして勝手にまとめたりしないと、誓いますか?」


 この神様、根に持ってたのか。意外とめんどくさいな。


「わかりました、今後は気をつけます」

「よろしい、では力を授けましょう」


 そういうと、創造神の手が光った。その光は、俺の中に吸い込まれていった。


「これは……」

「それがあなたの新たなる力、エターナルウイングです」

「エターナルウイング」


 ウイング、翼って事はもしかして、空を飛べるのか?


「さあ、早速使ってみなさい」

「わかりました、エターナルウイング!」


 俺がそう叫ぶと、俺の背中に羽が生えた。俺は思いっきりジャンプすると、空へと舞い上がった。


「おおおおおおおおお!」


 俺はしばらく、空を自由に飛びまわった。すごく気持ちいい。


 ……だが、俺はこの時忘れていた。


「さて、そろそろ降りよ……う……か……」


 地上に降りようとして、下を見た瞬間、俺は固まった。


 忘れていたが俺は、高所恐怖症だったのだ。


 ……怖い。こわいこわいこわいこわいこわいこわい


 下を見ると下半身の感覚が無くなっていく。降りられない、どうしよう?


 俺は恐怖と戦いながら、上を向いたままなんとかゆっくりと降りていった。涙目だった。



「どうでしたか? 空を自由に飛んだ感想は?」


 創造神が笑顔で俺に聞いてくる。


「私、この力、いらない」

「えええ!?」


 俺はエターナルウイングを封印する事にした。



 創造神様は帰っていった。最後まで何か言いたそうな顔をしていた。


 さて、戦いも終わり、俺達の謎も解けたのでそろそろ城へ報告に行こうと思ったが、そこで放心していたキミッチに呼び止められた。


「色々全然まったく理解が追いつかないのですが、ひとつずつ聞いていいかしら?」


 そういえば俺達の事ばっかりで、キミッチ達の事を放ったらかしだった。


「そうぞうしん、あんこくしん、かみさまがいっぱい……」

「トリッチー! 帰ってきてー!」


 現実逃避しているトリメンテをリーノが呼び戻そうとしている。これは説明しないとまずいよな。


 俺はキミッチ達に、俺達の事を話す事にした。



「創造神、暗黒神、別の世界にその世界の神様。魔王達もあなた達の世界から連れてこられた元人間で、あなた達は中に別の人間が居て……はぁ、一度に受け止めるのは難しい話ですわね」


 キミッチがため息をつく。


「黙っていてごめんなさい、私が部屋をひとりにして欲しいってお願いしたのも、その……」

「あなたの中の人が男性だから、ですわね? そしてあなたと一緒にいると、ロミリアさん、ランランさん、クリーナさんも男性になってしまう、と?」

「そうなんです」


「ちょっと待って! それじゃあ私達、今まで中身が男の人と、一緒の部屋で寝たりお風呂に入ったりしてたわけ?」


 トリメンテが騒ぎ出す。


「いや! 私はちゃんと見ないようにしてたよ? 学園ではお風呂に一緒に入らない様にしてたし!」

「私達は、ユミルさん以外に興味ありませんから」

「でござるな」

「同じく」


 俺達はそれぞれ言い訳をする……というかロミリアちゃん達のは言い訳じゃないな。


「そういう問題じゃないでしょーーーー!」

 

 トリメンテが叫ぶ、そんな様子を見て、リーノが笑っていた。あ、殴られた。


「いったーい、トリッチなにすんのよー?」

「笑ってる場合じゃないでしょ! 私達、色々見られちゃったのよ?」

「えー、だって今更気にしてもしょうがないじゃーん」

「そうですわね、今更言ってもしょうがないですわ」

「ちょっといいの! キミッチまで!」


 キミッチもリーノも、しょうがないと言う。それに対してトリメンテの勢いが止まらない。


「全てが良いとは言えませんが、事情が事情なだけにしょうがなかったとも思いますわ。もし私達があの神様を実際に見る前に今回の事を説明されても信じなかったでしょうし、ユミルさん達が男性になる所を見せられれば、不審者として学園から追い出していたでしょう」

「それは……そう、かも」

「そうなると、自分達がこの世界に呼ばれた目的もわからなかった彼女達は非常に困った事になったでしょう。私が同じ状況になれば、私も事情を隠したと思いますわ」


 キミッチがトリメンテを説得する。確かに、あの時は安易な行動は控えたかったし、誰を信用していいのかもわからなかったもんな。


「それを思えば、今こうして私達に事情を説明してくれたという事は、私達を信じて貰えたと考えて良いのですわよね?」

「うん。そうだね、私達はキミッチ達の事、信じてる。少なくとも、私達の事情は話しても良いと思った」

「であれば、これ以上これまでの事を問いただすつもりはありませんわ。もちろん、これからは相応の対応をさせて頂きますけど」


 そう言うと、キミッチは話を切り上げた。

 トリメンテはまだ何か言いたそうだったがそれを飲み込んだ。


「わかったわよ、これまではこれまで、これからはこれからね。はいはいわかりました!」


 あ、これ半分やけくそだ。後でまた何か言われそうだなぁ。


「それではみなさん、ひとまず城に戻りましょう。これ以上王様を待たせるわけにもいきませんし」

「あ、ああ。そうしてくれると助かる」


 キミッチの提案に、話についていけていなかったこの国の騎士団長さんが頷いた。


 俺達は城に向かった。その道の途中で、キミッチが気になる事を言った。


「責任は取ってもらいますから」


 一瞬、小声で言われたその一言。何の事か聞こうとしたが結局教えてはくれなかった。



 そういえば、デュノスがずっと黙ったままだった。あの時の事は……聞かない方がいいんだろうな。でも気になる。あの時の、俺を闇のユミルから元に戻してくれた時のデュノスの口調、あれはなんだったのか?

 デュノスの中の人の事は詮索しないと決めたが、気になるものは気になるんだ。デュノスの中の人、一体どんな人なんだろう?


 そんな事を考えていたら、城に着いた。


 城に着いた俺達は炎の四天王を倒した事を報告した。

 神様の事は、神様が張った結界のおかげで、俺達以外には見えていなかったらしい。その為、どう説明したもんかと思っていたが、騎士団長さんの判断で今は秘密にする事になった。今話しても、余計な混乱を招くだけだろうという事だ。俺の中で騎士団長さんの株が上がった。


 その後うれしい情報があった。光の国と炎の国の通信が回復したのだ。炎の四天王を倒した事によって通信を妨げていた何かがなくなったらしい。

 この調子で四天王を倒していけば、各国の通信も回復するだろう。俺達の目標がひとつ増えた。

 王様に続き、キミッチが光の国の王様と通信していた。家族と話をしてホッとしたのか、キミッチの目には涙が浮かんでいたが、俺は見なかった事にした。


 そして宴会が始まる。……が、俺達の本番は今日ではない。

 俺達は必殺技を使うと、その分次の日に空腹感が襲ってくるというデメリットを抱えている。

 今日はたくさんエターナルブレイカーを使った。明日は間違いなくかつてない空腹感が襲ってくるだろう。

 俺達は王様にその事を話し、今日は食事はそこそこに、明日に豪勢な食事をお願いした。


 そして迎えた次の日! 予想通り、俺達はかつてない空腹感に襲われた。

 たくさんのご馳走が用意されていたが、食べても食べても満腹にならない。

 俺達はさながら、暴走した吸引機と化していた。

 俺達以外はドン引きしていた。オリブーだけは食事に目を輝かせ、レシピを聞いたりメモを取ったりしていた。


 平和な時間だった。少なくともこの時は。



「王様! 至急申し上げたい事が!」


 勢いよくドアが開かれたと思ったら、一人の兵士が叫びながら飛び込んできた。


「何事だ!」


 騎士団長さんが問いただす。


「申し上げます! 先程、水の国の使者が参りました! しかし、しかし!」

「どうしたというのだ!」


 伝達に来た兵士の様子が明らかにおかしい。一体何があったというのか。


「水の国の使者が申すには、水の国はすでに魔王軍の四天王に支配され、国から逃げ出そうとした者を殺しているそうです! 我が国に参った使者も、何とか追っ手を巻いて逃げ切ったそうですが、傷が深く……我々に水の国の状況を告げた後、気絶し、目を覚ましません」

「な、なんだと!」


 水の国が四天王に支配されている。

 炎の国を救い、食事を楽しんでいた俺達に、衝撃の知らせが入った。



 こうして、俺達の次の行き先が決まった。


いわゆる説明回でした。2回にわけようかとも思いましたが説明回を2回続けてやるものどうかと思いました。楽しく読める様にするのは難しいです。


そして今回で炎の大陸編が終わり、次回からは水の大陸編が始まります!

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