21、闇の覚醒
閃光が炎の玉を飲み込み、旋風が魔物を一掃した。
その先に立っていたのは、金色に輝く3本のテールをなびかせた、少女だった。
「ユミルさん!」
ロミリアがその少女の名を呼んだ。
「お待たせロミリアちゃん。大丈夫だった?」
「はい! なんとか大丈夫です!」
「そう、よかった」
あれから俺達は全速力で戻ってきた。なんとか間に合ったようだ。
俺はロミリアちゃんの無事な姿を確認し、四天王に目を向けた。
「あんたが四天王ね?」
「ああそうだ、俺様が四天王、炎の闘士、ピアノヴァ様だ」
「それ、ノヴァリートアバターよね?」
赤黒い肌に、髪は炎で燃え盛っており、全身に炎を纏っている男。ユミルもその姿に覚えがあった。
ノヴァリートアバター。直接は見た事はなかったが、その姿は炎神、ノヴァリートにそっくりである。
「てめえも知ってやがるか……そうか、やっぱりてめえが!」
ピアノヴァがこちらに向かって吼える。
「てめえがあの! 最強の三本角か!」
「あっ」
ブチッ
この野郎、ロミリアちゃん達に手を出した挙句、言ってはならん事を言いやがったな。
「あんたが私達と同じ転生者だって事は、よおおおおおくわかったわ。ノヴァリートアバターに加え、そのあだ名を知ってるんだもんね」
俺はトリプルテールを輝かせ、エターナルを取り出す。そしてピアノヴァに向かってニッコリと笑いかけた。
「私ね? そのあだ名、キライなの。これは角じゃなくてトリプルテールなの」
「知るかよ! いいからさっさとかかってこいよ! 角女!」
「決定、あんたはぶっ殺す!」
俺はピアノヴァに向かって駆け出す。
ピアノヴァは俺に向かって右手を前に出し、炎を繰り出した。
「はっ! 真正面から向かってくるとは、良い的だぜ!」
「エターナル・キル」
俺はエターナルのキルモードを発動させる。エターナルが赤く染まる。
そして、俺はエターナルで炎を切り裂く。
「なにっ!」
俺はそのまま切り裂かれた炎の中を突っ込み、ピアノヴァを斜めに切り裂いた。
「ぐおおおああああああ!」
「エターナル・キルは全てを切り裂く。あんたが私達と同じ転生者であろうと、あんたが私達の敵なら、私は容赦しない。躊躇しないって決めてるの」
ピアノヴァは真っ二つになった。
……だが。
「ぐ、ぐおおおおおお!」
ピアノヴァの切られた身体は、再生していった。
「ふ、ふざけんな! この俺様が、この程度でやられるかよ!」
「へえ、再生出来るんだ?」
「そうだ! 残念だったな! てめえに勝ち目はねえぜ!」
「どうかな? ねえ、あんたあと何回、再生できるの?」
「あ?」
俺は再び、エターナルを振るい、ピアノヴァを切り裂いていく。
「ぐおおおおおおお!!!」
「再生しようが関係ない。再生する度に切り裂いてやる!」
「こ、このおおお、ぐああああ! は、はええ! 再生が、追いつかな……ぐああああ!」
俺は次々とピアノヴァを切り裂いていく。再生なんて気にせずに、細切れにしていく。
ピアノヴァは我慢できなくなり、炎を噴射して空へと舞い上がる。
「はぁ、はぁ、くそ! このバケモンがあああああ!」
ピアノヴァは手をかざし、炎の玉を作り始める。
「吹き飛ばしてやる! この俺様の、バーニングノヴァでなああああ!!」
「ユミルさん!」
ロミリアちゃんが叫ぶ。
「大丈夫」
俺はロミリアちゃんに笑いかけると、エターナルの力を解放する。
「エターナル、全力解放!」
エターナルが金色の輝きを放つ。
「空にいるなら丁度いいわ。空に向かって放てば、周囲への被害は少ないもんね」
「おおおらああああ! 死ねええええ! 角女あああああ!」
「私のこれはトリプルテールだって言ってるでしょ! 冥土の土産に覚えていきなさい!」
そして俺は、空に向かってエターナルを振り切る。
「死ねええええ! バーニングノヴァあああ!!」
「エターナル・ブレイカーあああああああああ!!」
ピアノヴァが炎の玉を繰り出し、俺はエターナルブレイカーを放つ。
結果はさっきと同じ。バーニングノヴァを、エターナルブレイカーが飲み込む。
「ち、ちくしょおおおおお! こんな馬鹿なああああああ!!」
そして、閃光はピアノヴァをも飲み込んだ。
閃光が治まると、空にピアノヴァは存在していなかった。
「ユミルさん!」
ロミリアちゃんが駆けて来る。よく見るとボロボロだった。
「ロミリアちゃん、大丈夫?」
「はい! ユミルさんの顔を見たら、元気になりました!」
「そっか、よかった」
俺はエターナルのヒールモードを発動させる。エターナルが緑色に輝き、ロミリアちゃんに剣先をそっと当てると、ロミリアちゃんの身体が癒えていく。
「はう、気持ちいいですー」
「ずいぶんギリギリだったみたいでござるな」
「そんな事無いもーん」
ロミリアちゃんとランランが戯れる。
周りを見渡せば、みんな無事……でもなかった。ヤラレッパとカマッセと、騎士団長さんが倒れたままだ。リーノが回復魔法を唱えている。
「ユミッチ、こっちも回復、手伝ってくれる?」
「わかったわ」
リーノに言われ、俺はまず、ヤラレッパを回復させた。一番怪我が酷かったからだ。
「む? すまないな、助けられたか」
「貸しいちだからね? ヤラレッパ」
「だから俺の名前はヤラレールだと言っているだろう!」
その後カマッセと騎士団長さんも回復させた。軽症のキミッチやトリメンテはリーノが回復させた。
「みなさんお疲れ様でした、なんとか四天王を倒す事が出来ましたね」
キミッチがホッとしていた。
俺はみんなに、四天王のアジトになっていた塔も無事破壊できた事を伝えた。
「そうか、結果から言えば四天王がこちらに来ていたのだから、塔を破壊する必要は無かったと思うのだが」
「周囲の魔物ごとふっ飛ばしたんだからいいじゃないですか」
騎士団長が余計な事を言うので反論しておいた。
そうして俺達が談笑している頃、すぐ近くで、異変が起きていた。
「ちくしょう! なんでだ! なんで俺様があんなやつに負ける! 俺様は、最強だったはずだ!」
それはほぼ消し炭になったピアノヴァだった。
すでに再生能力は尽きており、このまま消滅していく運命であった。
「身体が再生しねえ! なんでだ! くそ! この世界で力をつけて、いずれあの魔王の野郎もぶっ殺して! 俺様が最強になるはずだったのに!」
どんどん消えていくピアノヴァ。
その時だった。
-力が欲しいか-
「あ?」
突如、頭の中に声が響く。
-力が欲しいかと聞いている-
力……欲しい。欲しいに決まっている。最強を目指しているのだ。力なんてあっても困るものではない。
「欲しいに、決まってんだろう! 力だ! そうだ、俺様は力が欲しいんだ!」
-ならばくれてやろう、力を-
その瞬間、ピアノヴァが闇に包まれた。
「が! がああああああああああ!!」
炎と闇が交じり合い、再びピアノヴァの姿が形成される。
いきなり叫び声が聞こえた。
その方向を見ると、闇が交じった炎が立ち上がっていた。
「な、なに?」
俺達が驚愕していると、そこに再び、四天王のひとり、炎の闘士、ピアノヴァが立っていた。
「コロス……ナニモカモ……破壊スル!」
ピアノヴァの目に光は無かった。その全身には炎と闇を纏っていた。
「気をつけろ、さっきとは様子が違うようだ」
デュノスが全員に警戒を促す。
「グオオオアアアアアアア!!」
ピアノヴァが駆け出す。
俺は危険を察知し、エターナルを取り出して前に出る。
「ぐっ!」
エターナルとピアノヴァの拳がぶつかり合う。先程とは比べ物にならない程のスピードとパワーだ。
「な、なんなの一体?」
ピアノヴァの変化とパワーに驚く俺。
そんな時、俺にも、不思議な声が聞こえた。
-チ。奴め、余計な手を出しおって-
誰だ? 頭の中に女性の声がした。
-いいだろう、そっちがその気なら、こっちも黙って見てはおらん-
一瞬、視界が消える。
真っ暗な闇が広がる。
そして、その闇の中に、黒髪の女性が浮かび上がった。
フッと笑うと、黒髪の女性は、ユミルを抱きしめた。
「ああああああああああああ!!」
「ゆ、ユミルさん!」
突然ユミルが叫びだしたと思ったら、ピアノヴァと同じ様に、ユミルも闇を纏いだした。
金色の髪に闇が混じる。全身にも、闇の力が浸透していく。
「ゆ、ユミルさん?」
「ゆ、ユミル殿?」
ピアノヴァが本能的に後ろに飛び、距離を取る。
「ナ、ナンダ? ナンナンダキサマハ?」
ピアノヴァの問いに、誰も応えない。
気づくと空には暗雲が立ち込めており、周囲には黒い霧が漂っていた。
誰も言葉を発せず、どう反応していいのかわからずに、立ち尽くしている。
……音が鳴った。何かが切り裂かれる音が。
「ア? アアアアアアアアア!?」
ピアノヴァが叫ぶ。見るとピアノヴァの左腕が消し飛んでいた。
消し飛んだ左腕から伸びる、赤と黒が混じった軌跡。
その軌跡を追った先には、闇に包まれ、赤と黒の輝きを放つエターナルと
全身に闇を纏い、金と黒が混じったトリプルテールをなびかせる、無表情のユミルが居た。




