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19、迫り来る、炎の四天王!

「そなた、ユミルといったか?」


 ファイアルト王国の騎士団長を倒し、エターナルを収納した俺に、王様が話しかけてくる。


「はい、ユミル・メヅカと申します」

「ふむ、そなたの実力はしかと見せてもらった。騎士団長、どうだろう? この者達に任せて良いかな?」


 王様は騎士団長に目を向ける。騎士団長は少し思案すると、王様に返事した。


「はい、この者達もそれを望んでいる様ですし、実力も問題ないかと」

「よし、それではユミル、そしてキミッチよ」

「はい」

「そなた達の望み通り、我が国に襲撃してきておる、四天王の討伐を命じる!」


 え? あれ? 俺達、四天王倒したいなんて言ったっけ?


「ありがとうございます、全力で挑みます!」


 キミッチがそう言って頭を下げる。そういえば話の流れで、四天王を倒すのを手伝いますって言ってたんだっけ。


「騎士団長、そなたに任せる。四天王について説明してやってくれ」

「かしこまりました! それでは場所を移そうか。ついてきてくれ」


 そう言われて、俺達は場所を移す事になり、騎士団長について行った。着いた先はこの国の作戦会議室だった。


「四天王のアジトはこの国の北にある塔だ」


 そう言って地図を広げる。

 騎士団長の話では塔のまわりには魔物がひしめいており、ほとんどがお馴染みのファイドックや炎を纏った豚の魔物、ファイブーだが、数が多すぎる上に、四天王の強さは飛び抜けている為、安易に攻められないでいるのだそうだ。


「四天王は強い。私も戦いを挑んだが、正直遊ばれていたと思う。やつが本気を出せば、私は生きてはいなかっただろう。やつが出てくる事を考えると、安易に攻めるわけものいかなかったのだ」


 騎士団長が表情を歪める。どうやら四天王の強さだけは確かな様だ。


「みなさん、よろしいですわね? 私達の目的は、この多数の魔物を倒しつつ、四天王を撃破する事です」


 キミッチが地図を広げながら俺達に改めて説明する。地図で地形を見ながらどこからどう攻めるのが良いか、思案している様だが。


「ねえキミッチ、私にひとつ、考えがあるんだけど」

「なんですかユミルさん?」


 俺は地図を見て、思った事を言ってみる。


「この塔の周りって、特に何もないみたいだから、いっその事エターナルブレイカーで吹っ飛ばすってのはどうかな? って」

「は? それってあの、学園でゴーレムを倒してクレーターを作ったあの技、ですわよね?」

「うん」


 それなら、被害も少ないしあっという間に終わると思うんだけど。


「ふむ、ありだな」

「ありなの!?」


 デュノスが肯定し、リーノが突っ込みを入れる。


「エターナルブレイカーなら、四天王ごと周囲の魔物も一掃出来るし、良い手だと思うが?」

「だよねー」


 さすがデュノス、わかってるじゃないか。


「……騎士団長さん、どうかしら? この塔の周辺で、破壊してはいけないものってありますか?」


 キミッチが騎士団長に尋ねる。騎士団長はわけがわからないといった顔をしている。


「ああ、特に無いが……どういう事だ? 話を聞いていると塔周辺をまとめて吹き飛ばす手がある様だが?」

「はい、私の必殺技なら可能です」

「そ、そうなのか……」

「待って! そもそも塔自体、壊してもいいものなんですか?」


 リーノが騎士団長に確認する。そうか、そもそも塔を無傷でとか言われたらこの作戦は却下だよな。


「ああ構わんさ。四天王に占領され続けるよりはマシだ」


 良かった、ふっ飛ばしても大丈夫らしい。


「特に反対意見がないのであれば、その手でいこう。それでメンバーだが、ユミルは当然として、後は俺とランランで塔に向かおうと思うのだが、どうだろう?」


 デュノスが作戦を提示する。


「へ? 拙者でござるか?」

「うむ、塔を吹き飛ばすだけならユミルだけで大丈夫だろうが、塔の周辺に万が一、人がいてはまずい。その為、塔の周辺を探れる者が必要だ。ゆえにランラン、お前の力が必要だ」

「なるほど、ではデュノス殿が着いてくる理由は?」

「アジトを吹き飛ばしても四天王が生き残る可能性がある。なんらかの突発的な理由で吹き飛ばす前に戦闘になる事もある。そういった事から、戦力は必要だろう?」


 おお、なるほど。さすがデュノスだ。


「はい! それなら私も行きます! 私もユミルさんを守りたいです!」


 ロミリアちゃんが手を挙げるが、却下される。


「駄目だ、もし俺達がアジトに向かっている間に四天王と入れ違いになれば、この国に四天王が来てしまうかもしれん。その時の為に、戦力を残しておく事も必要だ」

「うー」


 ロミリアちゃんがむくれる。可愛い。


「そうね、私は今のデュノスの案で構わないけど?」

「拙者もでござるなー」


 俺とランランが手を挙げる。それを確認して、キミッチがまとめる。


「それでは、ユミルさん、ランランさん、デュノスさんの3人で四天王のアジトに向かい、アジトを四天王ごと破壊する。もし四天王が入れ違いでこちらに来れば残りの私達で撃破する。これで良いですね?」

「無理はしないでいい。もし四天王がこちらに来たら、空に魔法を打ち上げて知らせてくれればいい。その時は急いで俺達も戻ろう」


「その心配はないぜデュノス! もし四天王が現れたら、俺が倒してやるからさ!」

「俺もいる、安心して行って来い」


 ヤラレールとカマッセが自信満々に宣言する。いやお前ら、それフラグ……まあいいか。


 俺達は作戦の最終確認を行うと、四天王のアジトへと向かった。



 それから数時間後、俺とデュノスとランランはアジトの前まで来ていた。


「じゃあランラン、お願いね」

「了解でござる!」


 ランランが周囲の偵察に向かう。


「何もないといいんだけど」

「そうだな。しかし言われた通り、すごい数の魔物だ」

「そうね」


 俺とデュノスは息を潜めて、アジトの方を見る。アジトの周辺には情報通り大量の魔物が居た。

 しばらくすると、ランランが戻ってきた。


「うーん、どうも四天王は不在の様でござるなー。それらしいやつはいなかったでござる」

「それはまずいな、国の方に向かったのかもしれん」

「ちなみに、情報通り、周囲に壊すとまずそうなものはなかったでござる。人もいなかったでござるよ」

「じゃあ、手っ取り早くぶっ飛ばして、急いで戻った方がいいわね」

「そうだな」


 そうと決まれば話は早い。俺は早速エターナルを取り出して、力を解放する。

 ……明日また空腹になるだろうからお礼にたんまり食事をさせてもらおう。


「エターナル、全力解放!」


 エターナルが金色の光に包まれる。俺はエターナルを振りかぶる。

 その光に魔物たちが気付くが、もう遅い。


「まとめて吹き飛びなさい! エターナル・ブレイカーああああああああ!!」


 エターナルを振り下ろし、閃光がアジトに向かって放たれる。

 閃光が周囲に居た魔物たちを巻き込み、アジトを中心に爆発する。

 光が空へと舞い上がり、全てを飲み込んでいく。


 光が治まると、周囲の魔物は全滅。アジトであった塔は跡形も無く、クレーターが出来ていた。


「任務完了ー!」


 私は二人に向かって、Vサインを送る。


「相変わらず出鱈目でござるなーそれ」

「まったくだ」


 なんだよー、早く片付いたんだからいいじゃないか。


「さて、それでは戻るか、四天王が国に向かっているかもしれんからな」

「そうね」


 俺達は来た道を戻ろうとする。


「その前にユミル殿、ちょっといいでござるか?」


 ランランが俺を呼び止める。


「なに? ランラン」

「ユミル殿ー、最近拙者、頑張っていると思わないでござるか?」


 いきなりなんだ? 確かに旅に出てからはランランに周囲の情報を探ってもらったりと、色々頑張ってくれていると思うけど。


「拙者、そろそろご褒美が欲しいでござるよー」

「え? それはいいけど、今は急がないと」

「ロミリアやクリーナ殿がいない、今がチャンスなんでござるよー! 二人がいると邪魔されるでござるし、ちょっとくらいならいいでござろう?」


 ランランがデュノスを見る。デュノスがため息をつく。


「早くしろよ」

「やったー! というわけでユミル殿ー、ご褒美ー」

「でも、具体的に私に何をしろっていうの?」

「まずはこうでござるー!」


 そう言ってランランが抱きついてくる。


「ちょ、ちょっとランラン?」

「うーん、ユミル殿、やわらかいでござるー。いい匂いがするでござるー」


 ランランが身体を摺り寄せてくる。

 少しビックリしたが、俺は懐いてくるランランがなんだか愛おしくなり、頭を撫でてやる。


「ランラン、いつもありがとう。これからもよろしくね」

「ゆ、ユミル殿!」


 ランランの頭を撫でていたら、突然ランランに押し倒された。


「ちょ、ちょっとランラン?」

「はぁ、はぁ、ユミル殿! 拙者は! 拙者は!」


 ランランの息が荒い。これはどうも、まずくない?


 ランランの顔が近づいてくる。

 唇が、すぐ目の前までせまってくる。



「そこまでにしておけ、まだ戦いは終わっていないんだ。続きは後にしろ」


 ランランの動きが止まり、デュノスの方を向いて唇を尖らせる。


「ぶー、もう少しだったのに、デュノス殿は空気読んで欲しいでござるー」

「もう! ランラン、いいから早くどいて!」


 俺はランランを押しのける。

 ……危なかった。ていうかまだドキドキしてる。

 落ち着け俺! ランランの中の人は男、ランランの中の人は男……


「あれを見ろ」


 デュノスに言われた方向を見ると、空に水の魔法が見えた。


「あれって」

「どうやら四天王があっちに行った様だ。急ぐぞ、合図があったという事は」

「四天王が現れて、苦戦している、という事でござるな?」

「急ぎましょう! ロミリアちゃん達を助けないと!」


 俺達は大急ぎで来た道を戻った。

 間に合ってくれ! みんな!



 ユミル達が魔法に気付く少し前。

 ファイアルト王国の正門前で、ロミリア達は待機していた。


「あーあ、私もユミルさんと一緒に行きたかったなー」

「しょうがないよ、もし四天王がこちらに来たら、私達だけで戦わないといけないんだ。出来ればデュノスにはこっちに残って欲しかったくらいだよ」


 ロミリアが不貞腐れていると、クリーナが話しかけてきた。


「それはわかりますけどー」

「だったらそう不貞腐れな……」


 クリーナの言葉が途切れる。


「クリーナさん?」

「どうやら、事態は悪い方に動いているみたいだ、来たよ」

「え?」


 クリーナの言葉通り、ファイアルト王国に四天王のひとり、ピアノヴァがやってきていた。


「ん? なんだあいつらは?」


 ピアノヴァは手と足から炎を噴射し、空を飛んでいた。そして空からロミリア達を見つけたのだ。

 ニヤリと笑うと、ピアノヴァはロミリア達の元に降り立った。


「みんな! 来るよ!」


 クリーナの言葉に全員が構える。

 今ここにいるメンバーはロミリア、クリーナを筆頭に、キミッチ、トリメンテ、リーノ、ヤラレール、カマッセ、ポルンのメンバーに加えて、この国の騎士団長だ。オリブーは戦えない為、城で待機する事になった。


 メンバーの前に、ピアノヴァが降り立つ。


「ようてめえら! 見ない顔だな? 新入りか?」


 目の前に現れた男は、全身が赤黒い肌をしていて髪は炎で燃え盛っており、全身に炎を纏っていた。

 その姿に、ロミリアとクリーナだけは見覚えがあった。


「あなたは!」

「まさか、炎神、ノヴァリート?」

「ほう、てめえら、俺様の事を知ってやがるのか!」


 炎神、ノヴァリート。オンラインゲーム、「Fine Online」で登場する中ボスである。


「いかにも、俺様のこの姿は、ノヴァリートアバターだ。それを知ってるって事はてめえら、この世界の人間じゃねえな?」

「ノヴァリートアバターって、確か」

「うん、炎神ノヴァリートを一定数倒すともらえる、魔物アバターだね」


 魔物アバター。指定された魔物を一定数討伐するともらえる容姿変更用のアイテムである。

 「Fine Online」ではキャラクターの容姿を途中で魔物の姿に変更する事が出来るのだ。


「でも確か、ノヴァリートアバターって」

「うん。ノヴァリートを500回倒しても手に入らなかったって聞いた事がある」

「そりゃそうだ、俺様がこのノヴァリートアバターを手に入れたのは、1000匹以上倒した頃だったからな!」

「……あのノヴァリートを1000回も?」


 ノヴァリート自体は中ボスの為、1回倒すだけならそれほどでもない。しかし、何度も倒すとなるとそれは相当な苦行となる。その証拠に、ロミリア達がゲーム内でノヴァリートアバターを見たことは一度もなかった。


「まさに俺様は選ばれし者だって事だ。しかしそれを知ってるとなると、てめえらもあのゲームやってたんだな?」

「……「Fine Online」」

「そうだ! まさかこの世界に、俺様達以外に飛ばされてきたやつがいるだなんてな!」


 飛ばされてきた、俺様達以外。その言葉からわかる事は……


「改めて名乗ろう! 俺様はピアノヴァ! 四天王の一人、炎の闘士、ピアノヴァ様だ!」


 四天王の一人が自分達と同じ、転生者。そしておそらく他の四天王も、もしかしたら魔王も?


「まずいね」

「クリーナさん?」

「どうやらあいつは私達と同じ転生者。しかもノヴァリートを1000回倒せる実力の持ち主だ。おそらく、強い!」


「さあて! あいさつはここまでだ! てめえらが俺様と同じ世界の出身者だろうと、てめえらは今、俺様達の敵なんだろう?」

「それは、そちらの目的によるかな?」

「目的か! 俺様達の目的はな! 世界征服だ!」


「……子供?」

「ガキじゃねえよ! 異世界に飛ばされた大人の、本気の夢さ! 戦争だって大人がするもんだろう?」

「……決定、お前は私達の敵だ」

「そうこねえとな!」


 そう言い放つと、ピアノヴァの全身から炎が燃え盛る。


「よろしかったの? 彼、あなた達の知り合いだったんでしょう?」

「ううん、今日初めて会った。強いて言うなら故郷が同じってだけ。あいつは、私達の敵だ」

「信じていいのね?」

「ああ」


 キミッチ、トリメンテがクリーナに確認する。


「だったら話は早い! この俺が、四天王だろうが何だろうが、叩き切ってやるぜ!」


 ヤラレールがピアノヴァに向かって駆け出す!


「見せてやるぜ! この俺の最強の奥義を!」


 ヤラレールは身体を捻り、回転しながら相手に突撃する。


「奥義! 絶対背撲斬!(ぜったいはいぼくざん)」


 ヤラレールは身体の回転を利用して、相手の背を取り剣を振る。


 ……だが。


「はっ! おせえよ!」


 ピアノヴァの炎を纏った拳が、ヤラレールを貫いた。


「ぐあああああああ!!」

「や、ヤラレーーーーーーーール!」


 カマッセの声が周囲に響き渡り、戦闘が始まった。


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