18、トリプルテールの黒歴史
炎の国、ファイアルト王国での謁見が始まった。
キミッチはいつものみつあみから縦ロールに変わっている。正装モードだな。
「久しぶりだな、光の国の姫、キミッチよ」
「ご無沙汰しております、ファイアルト様。この度は謁見の許可を頂き、誠にありがとうございます」
「よい、こちらとしても各国の状況は気になっていた。最初の魔物の襲撃があの程度だったとはいえ、魔王を名乗り、世界に宣戦布告した上、通信魔法を妨げられているからな。近々使者を出そうと思っていたところだったのだ」
「あの程度、ですか?」
やはりこの国の被害状況は大した事ない様だ。となると、気になるのは四天王だな。
「それで? 光の国はどの様な状況なのだ?」
キミッチは状況を説明する。すると王様の表情が曇った。
「最初の魔物の襲撃でほぼ全滅……とはな。それで、無事だったそなた達が各国をまわる事になったと?」
「さようでございます」
「うむ、そちらの状況はわかった。ご苦労であったな。あとはこちらが何とかしよう。そなた達は安心して国に帰るが良い」
「え?」
あれ? そういう話だっけ? 俺達もう帰っていいの? その、国に? お前にも家族がいるだろうって?
「いえ、私達はこれから他の国をまわろうと思っております。また、四天王を倒す事にも出来れば協力させて頂きたいと思っております」
「心配するな、それは我が国が行おう。あの程度の魔物にてこずる様ではこの先の旅はきつかろう。四天王も、連れてくる魔物は大した事はないが、四天王自身はそれなりに強いと聞いておる。未熟なそなた達には荷が重い」
「そ、そんな……」
「光の国にはこちらから使者を出そう。後はこちらに任せるが良い」
キミッチがうなだれる。まあ王様からすれば、子供は戦いに首を突っ込まず、さっさと帰れって感じなんだろうなぁ。
「王様、ひとつお伺いしたい事がございます。よろしいでしょうか?」
ふいにランランが発言する。ござる口調じゃないランランはなんか新鮮だな。
「ふむ、何かな?」
「突然の発言、失礼致しました。お伺いしたいのは最初の魔物の襲撃についてです。襲ってきた魔物は様々な魔物が合成されたキメラだったと思いますが、この国に現れたのは何匹だったのでしょうか?」
「……騎士団長」
「はっ! 現れた魔物は2匹でした!」
は? 2匹って、なんでそんだけしか現れてないんだ?
「王様、ルカディアに現れたキメラの数は、100を超えておりました。どうやら我々の国とこちらの国では襲ってきた魔物の数が違うようです」
「なに?」
「そして王様、そのキメラのほとんどを我々はほぼ無傷で倒しました。残念ながら、我々以外は深手を負いましたが」
「馬鹿な! あの魔物を100匹以上倒しただと?」
騎士団長さんが食って掛かる。あの時は夢中で倒していたけど、100以上もいたのか。
「王よ、この者達の言う事は出鱈目です。あの魔物は、今の四天王が連れてくる魔物とは違い、そう簡単に倒せるものではございませんでした。それを100匹以上などと、よくも……」
「ふむ、という事だが、何かそれを証明する手立てはあるのか?」
「はい王様。実はその魔物のほとんどを倒したのは、こちらにいる、我らが最強にして最カワの戦士、ユミルにございます。彼女の実力を試して頂ければ、その事が証明になるかと」
「ほう?」
王様がこちらを見る。ランランめ、なにめんどくさい展開に持っていっているんだよ! てか最カワってなんだ、伝わるのかそれ?
「無礼を承知で申し上げます。ですが、私の最愛の者の活躍を、あの程度と言われては黙っていられません。王様、どうぞ彼女の力をお試しください。必ずや皆様を驚かせてご覧にいれましょう」
なんで急に話に参加しだしたのかと思ったらそんな事思ってたのかよ。いいよ別に! 俺は気にしてないから!
「そこまで言うならよかろう、騎士団長、この者の力、試してみせよ」
「はっ!」
そう言って、騎士団長と呼ばれていたおっさんが前に出る。
「私これ、やらなきゃ駄目なの?」
「……ここまで言ってしまった以上、やらなければそれこそ問題になりますわ」
キミッチからもGOサインが出てしまった。どうやら逃げ場は無い様だ。
……ここはやっぱり、あの台詞しか、ないよな?
俺は意を決して、あの伝説の台詞を言う事にした。
「やれやれ、本当は嫌なんだが、しょうがないな」
……自分がまさかこの台詞を言う日が来る事になるとは、思いもしなかった。
実際言ってみるとすっげえ恥ずかしい! 完全に黒歴史だわこれ。
ロミリアちゃん達がニヤニヤ見てる。やめて! そんな顔で見ないで!
「ユミルさん、顔が真っ赤でとっても可愛いです」
「やばい、萌える」
「これはこれは、口を出した甲斐があったでござるなー」
俺は真っ赤になってプルプル震える。ちくしょうランランめ、覚えてろ!
「あー、その、何がなんだかわからんが、いいのか?」
「はじめましょう! すぐにはじめましょう!」
俺は恥ずかしさを振り切る様に、前に出て、エターナルを取り出す。
金色のトリプルテールが光り輝き、光が収束し、1本の剣になる。エターナルが俺の手に現れる。
エターナルの輝きが、周囲を魅了する。
「……なんとも不思議な光景だ。それにその剣、良い剣だな」
「ありがとうございます。これ私が作った自慢の剣なんですよ、褒めて頂けると嬉しいです」
「なんと! 君は鍛冶師だったのか?」
「昔、少しかじった程度ですよ」
「そうか。その剣なら問題あるまい。では、はじめようか」
そう言って、騎士団長は剣を構える。
「え? ここでやるんですか?」
俺はつい咄嗟にエターナルを取り出したが、まさかここですぐに戦うとは思っていなかった。
俺は王様をチラ見する。
「よい、ここでその力を示してみせよ」
「……わかりました」
という事は、エターナルブレイカーは禁止だな。こんな所で使ったら、城ごと吹っ飛ぶし。いや、元々使うつもりはなかったけど。
俺は剣を構えて、騎士団長と向き合う。
「しかし君があの中で一番強いとはな。むしろあの男の方が強そうだが?」
騎士団長はデュノスの方を見る。
「確かに彼も強いですよ。戦い方によっては私も勝てるかどうか、といった所ですね」
「ならば、彼に任せた方が良かったんじゃないか?」
「いえいえ、私も彼も、どちらがやっても多分、負けませんよ?」
「ほう、言ってくれるじゃないか?」
「最近少し思い直す事がありまして。戦いになれば躊躇せず、強気でいこうと決めたんです」
「戦いに躊躇しないか、良い事だ。戦いを躊躇する者は、自分だけではなく、周りも危険に晒してしまう」
「はい、それがわかりましたので」
「そうか。どうやら見くびっていたのは私の方だな。ではいくぞ!」
王様が手を上げる。
「はじめ!」
そう言って手を振り下ろす。
その瞬間、俺は相手に向かって駆け出す。
騎士団長が反応するが、遅い。俺は騎士団長の剣を上に弾き、右肩、左肩、右脇腹、左脇腹に軽く剣を当てる。
そして素早く後ろにまわり込み、背中に剣を当てて、ニッコリ笑う。
「降参、します?」
俺の言葉を聞くと、騎士団長は身体を捻り、剣を振るう。けどそれも遅い。
「エターナル・キル」
俺はエターナルのキルモードを発動する。エターナルが赤く輝き、その赤い軌跡が相手の剣を捕らえる。
俺はエターナルで、騎士団長の剣を真っ二つにした。
「ば、馬鹿な……!」
唖然となる騎士団長。王様も驚いている。これで十分だろう? ランラン。
「これでいいでしょうか?」
俺は王様に尋ねる。
「うむ、どうやら実力は本物の様だな」
「ありがとうございます」
俺は再び笑顔になり、エターナルのキルモードを解除する。
自慢のトリプルテールをなびかせて、エターナルを仕舞った。




