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17、トリプルテールは躊躇しない

 俺達は見張りの盗賊2人を倒して、アジトの中に入っていった。

 薄暗くて臭い。これが本物の盗賊のアジトか。

 アジトの中の罠はランランがなんとかしてくれました。さすが一家に一台。


 途中現れる盗賊を倒しながら進むと、広い場所に出た。


「オイオイ、この俺様のアジトに攻めてきた奴がいると聞いて見てみれば、ただのガキ共じゃねーか!」


 盗賊のお頭っぽいおっさんが俺達を見て叫んでいる。


「しかもなんだ! 女の方が多いじゃねーか! へへっ、これは今夜は楽しめそうだぜ」


 そう言って舌なめずりする。相当気持ち悪い。


「俺様はこの盗賊団、ゴッドファイヤーズの頭、エンゼル様だ! てめえらここから無事に帰れると思うなよ?」

「さっきから1人でずっとしゃべってるけど、こっちも何か言った方がいい?」


 俺はいい加減、聞き続けるのも飽きたんで、おっさんに話しかける。最初はお約束過ぎておもしろかったんだけど、聞いていてだんだん腹が立ってきた。


「ケッ! 強がっていられるのも今の内だぜ? 野郎共やっちまいな! 男は殺せ! 女は犯せ! ただし! そこの三本角の女は俺に犯らせろ、生意気言った罰だ!」


 ピキッ


「ねえ、今、なんて言ったの?」

「あ? てめえは俺が犯……」

「その前、誰が……なんですって?」

「は? なんだよ、てめえのその三本角がどうかしたか?」

「エターナル」


 俺は無表情でエターナルを呼び出す。


「あーあ」

「やっちゃったでござるな」

「私達の出番、無いね、これは」


 ロミリアちゃんとランランとクリーナが何か言ってるが気にしない。

 それよりもこのおっさんを、ぶっ飛ばす。


「おい、なんだその剣……」

「だれが……三本角だああああ!!!」


 俺はエターナルを振るい、盗賊たちを吹っ飛ばす。それは完全に、一方的な虐殺だった。


「ま、待て! なんだそれは! というかなんだお前、その強さは!」

「私のこれはトリプルテールだああああああああ!!」

「話を聞けええええええええ!!」


 しばらくして、盗賊団は全滅した。しかしそれでは終わらない。


「エターナルヒール」


 俺はエターナルのヒールモードを起動する。エターナルが緑に輝く。エターナルでおっさんを切ると、傷が塞がり回復した。


「へ? なんだ、何をしやがった?」

「これはね、切った相手を回復する事が出来るの」

「な、なんで俺を回復した?」

「それはね……?」


「こうしてもう一度、ぶっ飛ばす為よ!!」


 そうして俺はまた、エターナルでおっさんをボコボコにする。


「や、やめろおおおおおおお!!」


 その後、何度か盗賊たちをぶっ飛ばしては回復して、盗賊たちの心を折った後、縄で縛って放置した。


「ふう、これで後は村長さんに報告して、クエストクリアね」

「そうですわね……」


 相変わらずキミッチは元気が無かった。


「ごめんねキミッチ、少しは気晴らしになればと思ったんだけど」

「え? そうでしたの?」

「うん、ほら、もちろんしょうがない事だし気持ちはわかるんだけど、ちょっと気負いすぎというか、ね?」

「あいえ、その事ではなくて、私今回はユミルさんがストレス発散の為に盗賊退治を引き受けたのかと思って」

「え?」


 なにそれ、どういう事?


「その、あの手の拷問になれていたみたいですし、これまでにもそうしてきたのかな、と」

「いやいや! 私も盗賊退治は実際には初めてだったからね? ってか、拷問ってなに?」

「え? そうなんですの? 私正直、あまりの慣れっぷりと非道っぷりにドン引きだったんですけど」

「なにそれこわい」

「いや、怖いのはあなたですからね?」


 そ、そんなにやり過ぎた気はしないんだけど……


「ユミル、お前は以前、もっと残忍になった方がとかなんとか悩んでいたな? 心配するな、お前は十分残忍だ」


 デュノスにまで言われた。……殺してないからセーフだもん。

 どうにも三本角って言われるとカッとなってしまう。これからはもう少し気をつけよう。


 帰り道、ロミリアちゃんとランランとクリーナ以外のみんなの距離が、遠かった。捕まっていた村の人達も目を合わせてくれなかった。


 キミッチは少し明るくなっていた。まさか自分の事を気にしてもらっているとは思わなかったそうだ。自分でも少し気負いすぎていたと気づいたらしい。



 エンジョーイ村に戻って村長さんに報告した後、いくらかのお礼と食料を貰った。

 再会した村の人達を見て、少し目頭が熱くなったのは秘密だ。


「依頼、受けて良かったですわね」

「……そうだね」


 キミッチも少し目が赤かった。



 その後、俺達はすぐさま旅立とうと思ったが、大事な事を思い出して一泊する事にした。

 盗賊退治でエターナルを使いすぎた事だ。

 エターナルブレイカーは使ってないからそこまでではないと思うが、おそらく次の日、空腹感が襲ってくるだろう。そうなると、旅先では食料が心許なくなってしまう。

 その為、俺達は次の日、しっかりと食事をしてから村を出た。


 目指すは炎の国、ファイアルトだ。

 俺達は健やかな気分で、旅を再開した。


 ……が、すぐに続かなくなった。


「暑い」


 炎の大陸の暑さを、忘れていた。



 数日後、俺達はようやくファイアルトに着いた。町の中に入ると、やっぱり暑さが軽減された。


「これって、何かの魔法なんだよね?」

「その様でござるな、町に入った瞬間、魔力を感じたでござるし」


 便利な魔法だ、いっそ大陸全体にかけてほしい。


「HAHAHA!、ユミルサンノ考エテル事 ワカリマスガ、ソレハダメデース。コノ暑ーイ気候ニヨッテ育ツ作物ガ アリマスカラネー」


 ここに来るまで、道中楽しそうに色々と採取していたオリブー。まあそういう側面もあるんだろうけどさー。あの暑さは堪えるんだよ、マジで。


「それでキミッチ、この後はどうするの?」

「まずは宿をとりましょう、その後、城に報告して、相手の出方を待ちます」

「そっか、いきなりやってきて、王様会って下さいってわけにはいかないもんね」


 俺達は宿を探して町をまわった。


 ……平和だった。炎をあしらった独特のモチーフの建造物や、炎を利用した道具など、見た事無いものがたくさんあったが、何より気になったのはその平和っぷりだった。とても最近、魔王襲撃があったとは思えない。


「ねえ、ランラン」

「わかっているでござるよ、平和すぎる、でござろう? 拙者ちょっと調べてくるでござる」

「お願いね、くれぐれも気をつけて」

「ユミル殿のその一言で、元気百倍でござるよ」


 ランランはそう言うと、偵察に行った。この国に、何があったのだろう?


 その後、俺達は宿をとって休んでいた。

 王様は明日には会ってくれるそうだ。


 部屋でゆっくりしていると、ランランが帰ってきた。


「ただいまでござるー」

「おかえり、どうだった?」

「どうもこうも、何もなかったでござるよ」

「そうなんだ?」


 ランランが収穫無しなんて珍しい。


「いや、情報が何もなかったというわけではないでござる、そうではなくて、町では何もなかったのでござるよ」

「……どういう事?」


 いまいち要領を得ない。


「つまり、魔物の襲撃がなかった、という事でござる」

「襲撃が、なかった?」


 どういう事だ? 魔王は世界中にあのキメラを放ったと言っていた。確かに戦えない者に対しては襲ってこなかったらしいが、建物なんかは壊されていた。なのに何もなかったなんて。


「あの日、空に魔王が現れたらのは確からしいでござるが、誰に聞いても魔物なんて知らない、ただうるさかっただけで、その後も町は平和そのものだったみたいでござる」

「つまり、この国にはキメラはこなかったって事?」

「少なくとも、町の人達は見ていない様でござるな」


 俺達はあれだけたくさんのキメラを倒したっていうのに、どういう事だよ?


「とはいえまったく動きがないかというとそうでもなくて、どうやら四天王が魔物を引き連れて何度かこの国に襲い掛かってきている様で、城の方は何人かが動いている様でござるな」

「四天王が!?」

「そうなのでござる。とはいえ、四天王が連れてくる魔物は大した事はないらしく、町に辿り着く前に倒しきって追い返している様でござるな。だから町の人たちは何も知らないでござる」


 なるほど、それで町では何も無し、か。


「四天王も、大した事無いって事?」

「それが、四天王本人は、今まで1度しか手を出していないそうでござる。その時の事は誰も口を割らなかったので、残念ながら四天王の強さは不明でござるなー」

「そっか、ありがとう」


 ランランの情報によると、初日、キメラの襲撃は少なくとも町にはなく、被害も出なかった。その後四天王が何度か魔物を引き連れて襲ってきているが、魔物自体は大した事は無い。四天王は1度しか手を出してきていないから強さがわからないって所か。


「わざと手を抜いているのか、魔王以外の戦力は大した事ないのか、この国の兵士達がよっぽど強いのかって所かしら?」

「うーん、ぶっちゃけ兵士達は大した事なかったでござる。まあめちゃくちゃ強い兵士が隠れている、という事は無いわけではないと思うでござるが、そういう話もなかったでござるよ」

「そっか」


 俺達はこの事をみんなにも知らせた。キミッチも特にこの国の戦力について詳しいわけではなかったので、結局答えは出ず、明日王様に聞いてみるしかないという結論に達した。



 翌日、俺達は城に呼ばれた。

 城の中は炎の国ってのを主張しすぎじゃないかって位、炎をあしらった装飾品が多く、見ているだけでちょっと楽しかった。


「いいなぁ、ファンタジーだなー」

「ですねー。わかってはいましたけど、改めて感動です」

「ユミル、ロミリア、あんまりキョロキョロしないでちょうだい。私達は一応、光の国の大使としてこの国に来てるんだからね!」


 俺とロミリアちゃんは、ファンタジーな城の内装にはしゃいでいたら、トリメンテに怒られた。

 それはそうなんだけどさー。


「今度、ゆっくり見てまわりたいですね」

「そうね。四天王を倒したら見物させてもらえるかしら?」

「その時は、2人でゆっくり見物しましょう」

「そうね」


 俺はロミリアちゃんと約束す……


「抜け駆け禁止」

「そういうのは、みんなで一緒でござるよーロミリア?」

「ちぇー」


 クリーナとランランが口をはさんできた。そうしてはしゃいでいると、またトリメンテに怒られた。



 やがて王座に辿り着き、謁見が始まった。


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