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撃鉄を起こせ  作者: 二口 八分
第二章
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勝手に意見交換会


 あいにくの雨だが、これもまた悪くない。柳は月1回開催される『勝手に意見交換会』に高崎を招待し、そして見事に一時間の待ちぼうけを食らっていた。毎回のことであり、特に気にもせず授業を飛んで、校庭に降り注ぐ雨を眺めていた。園芸部が手入れしている紫陽花はもう枯れてしまっていて、どれだけ抗おうとも逆らえない時間という存在について考えるきっかけを得る。つまり卒業がもう目前に迫っているのだ。とは言ってもきっと受験はそこそこに、仲間内で菓子パンを貪りながらだべって過ごす放課後ばかりが続くのだろうと楽観視している。


「まだいるんだ。懲りないね」


 遅れてやってきたくせに意気揚々と軽口をたたける豪胆さは目を見張るものがある。


「一時間ぐらいの遅刻は誰にでもある」


「前の彼女の言葉?」


「ちげーわい。てかいつの話しだよそれ。久しく俺に彼女はいないぜ」


「中学の時かしら。みっちゃんだっけ?可愛い子だったのに」


「まあ、俺なんかに引っかかる残念な女ではあったな」


 これまで付き合ってきた彼女の数は、人よりは多い自負がある。しかし、誰よりも惨めなフラれ方を数多くしてきたことも自負できる。蓋をしていたその思い出たちは鉄砲水のように吹き上がり、脳のあらゆる部位を刺激した。


「ああ!本題と逸れるからこの話は無しだ」


「分かったわ。で、その本題はなに」


 鉄の女がチャーチルなら、高崎はなんだろうか。鉄より化は人間味があり、それでも内包する薄幸な性質とそれを体現したか細い腕はこれから提示する問題を抱えるのに耐えられるだろうか。まあ、無理なら背中に負ぶってもらうまでであるが。


「最近、うちの中で明らかに違反行為を繰り返している奴が増えてるんだ。撮りだめしていた教員のスクープ写真や消火栓、防火シャッターの破壊行為、それに純粋な落書きまで多種多様なんだが、歯止めが来かけなくなっている」


「そんな下品な動きはそちらの十八番じゃないの。計画性がなくてゲリラ的に問題起こして短期の登校禁止処分を受ける。退学処分までのチキンレースで誰がどれだけ長い処分を受けたのかを競っているんですってね。まるで極道に憧れるラッパーに憧れる中学生みたいな高校生ですね」


「まあ、男の誉れってやつだよ」


「だから男子は嫌いなの。バカやるなら潔くバカのまま死ね」


 見慣れた癇癪には無視が一番だと柳は知っている。落ち着いた頃合いを見計らって話を続ける。


「前まではかわいげがあったんだよ。ただ最近は違う、もう俺のいうことを聞く気がないみたいで責任を分散させるために組織にいるみたいなんだ。いや、組織の破壊が目的というか、クーデターが目的なのか」


「つまりあなたの椅子がねらわれているってだけでしょ。なにもこちらには問題はない。それともなんだ、こちらにポストを用意して欲しいって事か?それならしんがりがいなくなったからやってくれ。かわいがってあげるよ」


「気に食わない奴は一網打尽にするくせにか?女子の甘い言葉はカカオ98%のチョコぐらい苦いんだ」


「でも、2%に期待するんでしょ」


「それがロマンというものだ」


 忠告のつもりではあったのだが、彼女のことだから常にその点に関しては誰よりも気を張っているだろう。多方面から女帝やらアイドル気取りやら散々なことをいわれている。柳も男の趣味が悪いなとは思っているが、その地位に喜びを感じているような安い人間でないことは知っている。だからできれば高崎には長い間、東風派のトップに立っていて欲しいと思っている。


「まあ、なんだ。気をつけろよ。お前も。今は歯止めが利いているからいいが、ルールも統制も、きっかけ一つでがらりと変わるからな」


「ご心配ありがとう。でも、そんな心配している暇はないの。私はこの学校を守らないといけないの。あなたと違ってね」


 本気なのかどうか分からない。むかしからそういう奴だったが、最近はそれに拍車がかかっている。


 疲れた顔が板についている。


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