真相は深層に
「カラクリ通路はまさかのデマだったんですね」
慧は放送室で銀のマドラーをぐるんぐるん回しながら不満を口にしていた。昭穂もなにかしらあると思っていたのだが、一日中探し回って見つけたのは通路に続く通路のみ。めぼしい隠し部屋やお宝なんてものはなく、やはり暇を持て余した学生の流したデマだったのだろうという結論に至った。
「ノートにはなにが書いてあったんですか?私見てないんだけど」
「ああ、基本的にはその当時のクラスメイトの万引き件数だったり、教員の不倫の話題だったり、大きなものでいったら自殺した生徒の名前といじめの主犯者の名前が記載された記事かな」
闇新聞はあくまで広報物であり、娯楽である。そこにいくら事実や告発を書いたとしても証拠もなければ、訴求力もない。実際にここに書かれている出来事のいくつもがうやむやにされ、正当な裁きを受けることもなく闇に葬られてきたことだろう。そして裁きとは生徒が行う私的なものであり、学校として対応を求められた事例については聞いたことがない。
「じゃあ証拠写真とかは一切なく、お宝の在処を示した地図もなく、ただただ記事の下書きとかしか載っていないって事ですね」
「だな。ここから似たようなものが見つかるかもしれないから、とびきりのスクープが見つかる希望はあるが事実だけを書き記しただけでは何とも言えないな」
「どうします?お焚き上げでもしますか?」
「証拠隠滅の間違いじゃないか」
「まあ、盗んだのは辻くんなんで私がどうしようと問題ないと思います。ただ、図書館からってのが怖いですよね。取引の品だったら、目をつけられてどこからともなく制裁が加わるので」
「仲介人の件だろ」
図書館の仲介人
図書館は本校舎とは異なる棟にあり、屋外の渡り廊下を渡ってたどり着くことができる。運営は基本的に図書委員に一任されており、蔵書の貸し出しや自習スペース予約受付など一般的な業務を行う傍ら、荷物の受け渡しを行っている。これが今派閥の幹部ならびに生徒の間で流行に流行っている。理由は簡単で、匿名での受け渡しが可能であるからだ。生徒には各々図書カードが発行されており、生徒は6桁の番号で相手を指名することができる。
そもそも普通の生徒であれば荷物を渡すのに匿名性を持たせる必要がないので相手の名前を伝えるだけで、番号を管理している図書委員が勝手に渡してくれる。だが、ここで図書委員が変な動きを見せた。
個人の番号を一般向けに公開しはじめたのである。これにより宛名不明の荷物が届くようになり、幹部間の取引に用いられるようになった。それによってより複雑で面倒であった学校事情がより面倒になった。
盗品が増え、それが学校中に出回っている。このあいだは運動部の鍵型が取引されていたとか。
「あれ普通に職権乱用に重ねて公共の安全を脅かす悪行だと思うんですけど、この学校には市井を取り締まる校則はないんですかね。あれやっていいなら私だって放送使ってソロコンサートでも漫談でも強行してやるのに。あ、ASMRもいいですね」
「お前に変なファンがついている理由がよく分かる」
「人気者は辛いね」
「喜べたもんじゃねえだろ。いつか靴とかリコーダーとか持って行かれるぞ」
「もう経験済みです」
なぜ平気な顔しているのかさっぱり分からない。昭穂は放送ブースに腰を下ろし、ノートの中を細かく確認することにした。こういった細かい作業はかずまや涙にやってもらう方が確実性がましていいのだろうが最近はめっぽう顔を出す回数が減り、勉強会という名のデートを繰り返し、涙に至ってはその時ののろけ話を詰め込んでくるばかりだ。業務放棄を指摘すれば気を利かせているだけだとはぐらかされるだけなので放送室は閑散としている。いや、十分にうるさい存在が一人いるのでそれは嘘である。
そんな賑やかな部屋にノックが響く。
「来客ですか?珍しい」
噂をすればうんちゃらとはよくいったもので、古くから言われている言葉の信憑性に昭穂の心臓は捕まれることとなる。




