土曜日の思い出〈過去)
「闇新聞?あの品のない集団の発行する薄汚いペラ紙になんで興味あるんだ」
あれは確か、昭穂がまだ私の前に現れる日のことだ。私は黛と、それからリスカと3人で放送部の月間報告書を書いていた。些細な娯楽新聞として、校内校外問わず話題を取り扱い、時には近くのスイーツ店のクーポンなんかもつけたりした。全部商店街のアイドルだったリスカが取り付けてくれて、それ以降読者が爆増した。
そこで私は危惧していた。このまま放送部の存在が、そこら辺にある有象無象の部活と変わりないものになってしまうことを。だから少しだけ、責めたことがしたかった。
「だって清司郎の目的は学校を壊すことでしょ、だったらなかから崩していくべき!」
「慧、俺の目的はそんなスモールなスケールでは語れない」
気持ち悪い横文字はただ英単語を繋げているだけで、私の話をまともに取り扱っていないことがよく分かった。
「意味が分からない。あの面倒な派閥争いを終わらせることじゃないの?」
「それに近いけどね。闇新聞は意外と歴史が長くてな、下手に手を出すと面倒なことになりかねないし、そこまで大きなインパクトを残せるとは思えないんだ。それこそ印象操作とかにはうってつけだけどな。今の責任者も俺は知っているし、傘下に加えるってのはこの学校で上手くやっていくにはいいんだが、どうせ俺が壊しちゃうから意味ないね」
放送部はそのころただの部活として活動していた。第三勢力と言われているが内実は伴っていなかった。闇新聞は教師の不祥事だったり、生徒の熱々三角関係を火曜サスペンスばりの脚色を加えて報じている。
「いいか、あの組織は少し歪だ。きっと仲間に加えたところでその真価を発揮することはないし、いつか痛い目を見ることになる。爆弾を抱えるのはごめんなんだよ。この放送部は居場所なんだから」
黛は薄い笑みを浮かべた。絵に描いた好青年の微笑み。真っ二つに切ったレモンのようなみずみずしさと爽やかさにリスカは頬を赤らめていた。私はそれを見て口角が上がらないようにするのに必死だった。とっても楽しい土曜日だった。
黛清司郎の死から十日後のことだ、昭穂が闇新聞を手中に収めたのは。




