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真白-ましろ-  作者: 格之進


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外食

「真白くん、来週の木曜日の夜は何か予定はある?」


田坂との朝練から2週間が経った。あれから真白はほぼ毎日走っている。アドバイスをもらった通り、週に1日は休みを入れながら。今日も朝早くに走って、昼過ぎまでの講義を終えて、少し昼寝をして夕方からシフトに入った。浅川に声をかけられたのは店も落ち着いて片付けに入った頃だった。


「いえ、講義が終わる夕方以降でしたら特に予定はありません」


各テーブル設置の調味料を回収しながら真白が答える。


「じゃあ飲みに行こうよ。瀬尾さんがくれたクーポンを使ってさ」


あ、そういえばそんな事もあったな。瀬尾がアルバイトしている居酒屋のクーポン。最近は会っていないけど、瀬尾は浅川が来るのを心待ちにしているのかもしれない。


「はい。是非お願いします。でもまずは瀬尾先輩に連絡をさせて貰えますか?絶対に自分がいる時に来いと念を押されているので」


その約束を破ったら瀬尾がガッカリするだけじゃく、ニコラがド怒りするだろう。


「分かった。じゃあその日で都合よければ予約もしておいて。18:00から2名で」


「はい。分かりました」


瀬尾が働いている和風創作料理が売りの居酒屋は、チェーン店ではなく個人で経営している店で、学生には少し敷居が高い…有り体で言えばお高い店だ。浅川とクーポンの話をしている時に聞いていたらしきマスターが、「あの店の板前の腕は本物だぞ。以前灯と行ったが、酒よりも料理にばかり意識がいってしまった」と言っていたくらいだし、浅川が奢ってくれるらしいし楽しみだ。


帰宅して瀬尾にメッセージを送ると、すぐに返信があった。


"日向くん、連絡ありがとう。その日は私もシフトに入っているからありがたいよ。予約もこっちで入れておくね"


"お手数かけますがよろしくお願いします"


"うん。楽しみにしてるね。料理はこっちに任せてもらっていいかな?"


"はい。浅川さんからもそう言われています"


"オッケー!じゃまたね!"


浅川にも予約完了の旨を伝えて店のホームページを見た。確かにどの料理も凝っていて凄く美味しそう。写真に写っている従業員も和服を着て、旅館の仲居さんみたいだ。


あ、瀬尾が写っている。席にお客さんを案内している場面だろう。満面の笑みで接客している彼女は和服がめちゃくちゃ似合っていた。


これはもしかすると、もしかするんじゃないか…


なんて事を考えた真白は、すぐに頭をブンブン振って余計な妄想を吹き飛ばした。浅川もマスターや灯に習って料理を始めてから、家でも色々作るようになったらしい。だから今度行く居酒屋の料理に凄く興味があると言っていた。真白自身も宵の明星以外で外食をするのは学食を除けば浅川と瀬尾と一緒に行ったイタリアンレストラン以来。凄く楽しみだ。



その数日後の日曜日、バイトに行くと膨れっ面をした田坂に絡まれた。


「真白くん!浅川さんとご飯食べに行くんだって?」


着替えに向かおうとしていた真白の襟首をふん捕まえて田坂が喚く。


「なんで私も誘ってくれなかったの?男子だけで遊びに行くなんてずるいじゃん!」


「行くのは俺と浅川さんだけで、マスターは行きませんよ。あと、クーポンが2人までしか割引にならないんですよ」


田坂の顔が近くてちょっと緊張した真白は何とか落ち着かせようと言い訳を並べる。


「これも実は学校の先輩から頂いたものなんです。以前浅川さんが先輩の進路の相談にのったことがあってそのお礼にと」


「あ、そうなんだ…」


納得したようなしていないような気もする返事だったが、じゃ、そういう事だからとサッサと更衣室に避難した真白。一息ついたのも束の間。着替えてからテーブル整理や軽い掃除などの開店準備をしていると、スーっと田坂がやってきた。


「その先輩は一緒に行かないの?女の子?」


うん。やっぱり気になるよな。


「女性です。居酒屋でその先輩が働いているんですよ。だからクーポンも手に入ったようです」


「じゃ真白くんじゃなくて私が行ってもいいんじゃないかなぁ。ほら、真白くんはお酒が飲めないし」


あんたも飲めないだろ。年齢的にじゃなくて体質的に。という言葉を飲み込んだ真白。


「俺は美味しい料理が食べられればそれでいいので」


これは譲ってあげたい所だが、それはそれで色々とまずい。田坂には申し訳ないが、ここは引いてもらうしかないだろう。


他人の恋路は側から見ている分には面白いこともあるけど、その渦中に入ると面倒くさい。


「浅川さんに田坂さんが、俺だけ浅川さんと出かけるなんてずるいって怒っていたと伝えておきますよ」


それを聞いた田坂が狼狽する。


「わ、わ、私はその居酒屋に行ってみたいってだけで、浅川さんがどうとか関係ないし…そ、外の確認行ってくるね!」


あ、逃げた…


素直じゃないなぁ。


まぁ瀬尾だけに肩入れするのもフェアじゃないし、今度何らかのアシストをしてあげようと思う。


その日は田坂のテンションがちょっぴり変だった。

今日も"真白-ましろ-"をお読み下さりありがとうございます。

私用のため次週は休載致します。

季節の変わり目で体調を崩しやすい時期ですのでお身体ご自愛下さい。

ではまた再来週に!

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