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真白のキャンバス  作者: 格之進


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パフェ

ニコラに付き合ってもらい、気に入ったリュックも購入した。


靴に関しては試着もして気に入った靴もあったが、予算オーバーで泣き泣く諦めた。


「まだ時間もあるし焦らなくて大丈夫。ゆっくり考えて決めなよ」


ニコラもそんな風に言っていた。


店を出て、真白はニコラをお茶に誘った。


わざわざお付き合い頂いたお礼って事で。そんな提案をすると、ニコラは目を輝かせて真白の手を引いて歩き始めた。


「じゃあ私がたまに行くカフェにしよう。コーヒーもこだわってるみたいだけど、それ以上に甘味が充実していてね、こないだ行った時にはミニケーキ3種セットを頼んだよ。でも、隣のテーブルの女の子2人が頼んでいたパフェが凄く美味しそうでね…」


相変わらず止まらないニコラの肩を空いている方の手でポンポンとたたき、


「分かりました。場所はお任せします。恥ずかしいので手離してもらえますか?」


この人混みで誰かに手を引かれて歩くのは真白には耐えられない羞恥だ。


「あ、ごめんごめん!すぐそこだから」


慌てて手を離したニコラについていく事しばし。大通りを一つ中に入った路地にある昔ながらの喫茶店のような佇まいの平屋店舗。表にはおしゃれなイラストや文字が書かれたA看板が出ている。レトロとモダンのコラボレーションだ。


ニコラが扉を開けるとカランカランとベルが鳴る。宵の明星のドアにあるのと同じような音でなんだか親近感が湧いた。


「いらっしゃいませ。あ、こんにちは。席はお好きな場所にどうぞ」


愛想の良い学生風の女性スタッフが案内してくれた。ニコラはたまに行くと言っていただけあって彼女と面識があるらしい。


「いつも座ってる席はあそこなんだけど先客がいるから、あっちの奥に行こう」


ニコラに案内された席は入り口から丁度対角の位置にある文字通り店の1番奥の席だ。隅っこや狭いところを好む真白は割と好きな場所でもある。


「メニューです。決まりましたらお呼びください」


水とおしぼり、メニューを置いたスタッフににっこり笑って頷いたニコラは早速捲し立てる。


「コーヒーは豆を選べるから好きなのを選んでね。あとさっき言ったパフェはここ。私が初めて来た時はパンケーキにあんことクリームが乗っかってるやつを頼んでね、あれはまさにカロリーの暴力だったなぁ。でもあの時はここにくる前に家でサラダをたくさん食べてきたから0キロカロリー……」


うんうんと適当に流しつつメニューを見ると、なるほど甘味の種類が多い。というか、メニューの7割が甘味、残り3割が飲み物と軽食だ。


こんな店は女性客ばかりではなかろうかと周りを見渡すと、以外にも男女比率は6:4で少し女性が多いくらい。男性は1人で来ている者だけだが、自分だけじゃなくて良かったと思った。


パフェは10種類くらいある。トッピングを工夫すればバリエーションは無限なんじゃないだろうか。


でも真白は悩まない。アイスコーヒーとフルーツミックスパフェに決めた。


真白は何かを選ぶのはめちゃくちゃ早いのだ。


「え?もう決まったの?まだ1分も経ってないよ!ちょっ、ちょっと待って、パフェにする事は決まったんだけど…」


パタンとメニューを閉じた真白を見てニコラが慌てる。


「いえ、ゆっくり選んで下さい。俺はいつもこんな感じなので」


真白は悩まない。悩んで行ったり来たりしても、結局1番初めに心を惹きつけた物に戻ってくるのが常なのだ。あれこれ考えるだけ無駄というもの。


今回は暑いから冷たい物を。そこからの選択肢はパフェかアイス。せっかくカフェに来たのだからそこらのコンビニとかじゃ食べられないもの。ゆえにパフェ。ザーッと見渡して見た目華やかなフルーツミックスパフェに目が行った。それだけだ。


それから10分くらい悩んだニコラは、練乳苺パフェに決めた。


「早くこないかなー。日向くんのフルーツミックスも良いなと思って悩んだんだけど、別のを頼んで日向くんから貰えば良いかなって。私のもちょっとだけあげるね」


嬉しそうに話しているが、どうやらこいつは真白のパフェも食ってやろうと思っているらしい。


いつもなら、やらねーよ!って即答する所だが、今日に限っては借りってものがある。ニコラの好きらしいフルーツをシンプルな苺パフェにトッピングしてやるのもやぶさかではない。


それから登山に向けて用意しておくべきものを改めて確認したり、ウェブマップを見ながら高尾周辺の登山ルートを説明してもらったり、先週八王子に行ったって言っていたけど誰と行ったの?と聞かれて、今更その話を蒸し返すか?と困惑したりしているとパフェがやってきた。


「う、うわー!」


ニコラが震えている。


「もうちょっと日向くんのパフェをこっちに寄せて。そう!そこ!私のをこっちにこうやって置いて、コーヒーはそっち!もうちょい右!そこ!で、日向くんは手を組んでテーブルについて、ちょっと右にずらして…そこ!」


そう言ってパシャパシャ写真を撮って見せてきた。


「見て。匂わせ写真。さりげなく自分以外の人も一緒にいる事が分かるように隅っことかに映して、見た人に、誰と行ったの?って思わせるテク」


ウザっ!って思ったが、たまにSNSで見るこんな写真の裏にはそんな思惑があったとは。面倒臭いことをする奴もいるもんだ。


ともかく、撮影タイムがひと段落した様子のニコラに尋ねた。


「ニコラ先輩、好きなフルーツを取ってください。苺だけじゃ物足りないでしょ」


ハッとした顔で真白の目を見つめるニコラ。


「君イケメンだね。じゃ遠慮なく」


そう言って桃とみかんとパイナップルをサッサッサと取った。


真白は考えた。好きなフルーツを取ってください。と、好きなだけフルーツを取ってください。は日本語として違うよな…


え?違うよな?


そして自分のパフェに標準装備されているイチゴと、なぜかバナナは取っていない。


結果として真白のパフェはフルーツミックスの匂いの残った苺パフェ〜幾つかのフルーツの残骸を添えて〜になった。


でも、はいどうぞ。と言われて遠慮のない奴は嫌いじゃない。


さっきまで超豪華だったがシンプルになったパフェを突きながら、さっきまでシンプルだったが超豪華になったパフェを幸せそうに頬張るニコラを見るのは悪くない気分だった。


それからもパフェを食べながら、ニコラが宵の明星の面々と行った山行について話し続けるのを真白は聞き続けた。


なんか知らない山の名前やら専門用語やらが出てきて付いていけない箇所もあったが、とにかく楽しそうに語るニコラを見て、真白の心に少し動きがあった。


自分もこんな風に何かに狂ってみたい。


時間や空気を読むことを忘れるくらい何かに夢中になりたい。


週末に行く登山がその一歩になったら良いなと思いながら帰路に着いた。

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