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真白のキャンバス  作者: フジ


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2/6

新生活とタイパ

あれよあれよと春休み?を過ごしているうちに大学入学式の日になっていた。


まだ着慣れないスーツを着て、椅子に座って色んな人の話を聞いてから、さらに入学式後の新入生説明会に参加する。


そこで受けた説明によると、大学の授業…いや講義は、沢山の選択肢の中から、必修科目というこれだけは取りなさいよ!という講義を入れながら自分で時間割を作るらしい。


4年間で取るべき単位数は決まっていて、ビチビチに講義を入れれば、最速で3年の前期で卒業に必要な単位数を取得できる。


とはいえ、実際は少し余裕をもって講義をとり、3年後期までにゼミを除く必修科目の単位を全て習得し、同時に就職活動に入る流れが一般的とのこと。


つまり自分のライフスタイルに合わせた組み合わせをする事ができるという事!何て便利な!何て自由な!何て自主的な!こんなのを求めていたんだ!…


なんて思ってるけど、実際のところ大学に通う以外は何にも決まってないから、結局とりあえず時間割を組んで、それに自分のライフスタイルを合わせていくしかない。


そう。卒業式から約3週間もの時間がありながら、彼は引っ越し以外何にもやってなかった。


あ、入学祝いとして両親が出資してくれたから車の運転免許は取った。


高校時代はバイク通学してる人たちを、いいなーって思って指を咥えて眺めながらママチャリ通学していた真白だったが、車の免許を取ったって話を聞きつけた近所のおじさんが、畑をやめたから乗らなくなった原付をタダでくれたので、嬉しくて嬉しくてそれに乗ってあちこち走り回ってるうちに入学式前日になっていたのであった。


「それでは説明会はここで終了です。なお、今から1時間ほど我々事務担当の職員がここにおります。ご質問があれば何でも聞いて下さい。カリキュラムは今決めなくても結構です。ご自宅でゆっくりと考えても差し支えありません。なお提出期限は4月14日の17時です。それまでに必ず学生課に提出して下さい。少しでも遅れると、本年は講義の受講をしないと判断され、受講できなくなります。毎年若干名そのような方がおりますが、事務手続き上、救済は不可ですので充分ご注意下さい。以上です」


おっちょこちょいの真白は、やらかさないように残ってとっとと終わらせちゃう事にした。


さてさて、どんなカリキュラムを組もうか。テレビで見ていたキラキラしたキャンパスライフってやつを送るにはどんな取り方をすれば良いかな。

ありったけの知恵を絞って、絞って、絞って…


モデルケースとほぼ同じ、というか全く同じカリキュラムを組んだ。必修科目も選択科目も無理なくバランス良く満遍なく入っている。我ながら上出来じゃないの!ってニヤニヤしていると、


「お前月曜日は午前休みにするの?」


「あー、サークルで試合が日曜にあるらしいからお疲れ休み。打ち上げとかもあるからそうしろって先輩が。必修科目もないし。お前は月曜から木曜午前に固まってるな」


「週末はバイト。でも土日のどちらかは遊びたいから、それ以外の日にシフト入れないとダメじゃん。金曜、土曜、日曜は遊びとバイト優先」


「いいよなー。俺は教職とるから土曜も講義入ってるよ。だから火曜、水曜は薄めにしたけど」


「まー必修科目はみんな一緒だから助け合いながらやろうや」


なんて話してるのを盗み聞きしながら自分のカリキュラムを見ると…見事に満遍なく、ある意味無駄なく取れている。


味も素っ気もないけど、午前が空いている日もあるし夕方以降や週末も空いているからそこで楽しくやればいいかな。なんてそれ以上考える事を放棄して、そのまま提出し家路に着いた。


教職、バイト…みんな色々と考えているなぁ。しかしお疲れ休み、打ち上げ、毎週末遊ぶって…学生のくせに良い身分だな。そんな事を思って舌打ちした。


真白は捻くれている。





さてさて渾身のカリキュラムを、うりゃ!とばかりに担当者に提出した次の日から大学での生活が始まった。


月曜日は入学式、火曜、水曜は午前中をメインに様々な説明会が行われ、午後は部活やサークルの勧誘祭りだった。


説明会だけしっかり聞いて、スルスルスルっと人混みを抜けて帰宅する事数日。ドアを開けても誰もいない部屋に哀愁のカケラも感じない真白はすでに一人暮らしに慣れ始めていた。


週末も数日過ごした中で気づいた足りない日用品等を揃えたり、来週からの講義で使う必要な教材が何かを整理しているうちに終わり、今日は月曜日。カリキュラムの提出期限もあと1週間ほど残っているのでまだ講義は行われていない。


この日は希望者に学校周辺で徒歩で行ける範囲の名所や公的な施設案内ツアーなるものに参加する。


実家から車で1時間半くらいの街とはいえ、大学に入学するまでは名前しか知らなかったから土地勘は養っておいた方が良いと思った。


ツアー後には大学で一番大きな学食で昼食を無料で食べられるという。その文言に惹かれた真白は、説明会で貰ったチラシを握りしめて、カリキュラム提出後に申し込みに行った。


人数制限があるツアーだけに応募者が殺到するかと思いきや、申し込み方がスマホで行う形式ではなく、今時珍しくわざわざ事務センターに行って申し込まなくてはいけなかったからか、説明会の内容が福利厚生の説明みたいな学生にとってはちょっと固い内容だったため誰も聞いていなかったからか、真白みたいにすっ飛んでく者はおらず、おかげで難なく申し込めた。


最寄りの駅前に集合した真白達参加者の前には2名の先輩らしき男女が立っていた。


「ご参加ありがとうございます。私が今日の案内役を務めます、経済学部3年の桜田と申します。私のしょうもない挨拶の時間ももったいないので早速ツアー開始です。俗に言うタイパって奴です。私の経験上、タイパ、タイパと騒ぐ輩ほどタイパとは相反する行動をとっている傾向があります。タイパが悪いからスーパーに買い物に行かずにネット注文で済ませる。一見合理的に見えますが、その分割高の代金を支払うことになり、その過剰に払った対価に見合う物が手に入る事はほとんどなく、実際に自分の目で見て選ばないため、予期せぬ商品であったなんて可能性も十二分に考えられます。その結果またスマホを弄って時間をかけて検索して注文し直すなんて時間もお金も無駄にする事となるのです。じゃ宅配の飲食物を頼めば良いという考えもありますが、さらに割高になる上、栄養面でも偏りが生じるため健康面にもリスクを生じさせます。皆さんは是非ご自身の発言にきちんと意識をもち、言行一致の行動を……」


「桜田。タイパ」


タイパ講義をおっ始めそうになっていた、いや、おっ始めていた桜田先輩の肩ををツンツンと指でつついて諌めたのは同じく案内役の先輩。


「私はニコラ・ライアンです。法学部3年。よろしくお願いします。それでは参りましょう。まずは駅周りの施設からご案内致します」


そう言ってスタスタ歩き始めてしまった。


桜田先輩はコホンと咳払いをしていそいそとニコラ先輩の後を追った。


自分の事を私という男を初めて見たが、細身ではあるものの180cmはあろう長身に、サラサラの髪によく似合う銀縁メガネの見た目通りの言葉選びだと思った。


同じく私呼びだけど女性のニコラ先輩は見た目からして外国人だと思った。168cmジャストの真白よりも頭ひとつくらい低い身長かつ細身の体系の割に何故か貫禄というかオーラがある。明るい金髪に高い鼻、くりくりとした大きな目の中の色は緑色だった。留学生にしては流暢な日本語を話す。というか彼女の日本語は生粋の日本人が話すそれだった。


色々と気になる組み合わせではあったが、まだツアーは始まったばかり。


参加者10名は皆一瞬キョトンとした後、ゾロゾロと2人の後に続いた。

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