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真白のキャンバス  作者: 格之進


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真白

人は皆須く理想を描いて生きている。


それが憧れの人だったり、理想の生活だったり、今励んでいる事の到達点であったり。


まるでキャンバスに絵を描くように、大なり小なり、良かれ悪しかれ、そのスピードが早くても遅くても筆を動かし続けている。


加えて言うとそれは一枚だけではない。


人の持っているキャンバスは無限。


何枚描いてもいい。描けるだけ描いていい。


渾身の一枚を描く事に全ての人生を賭けるもよし。


途中でなんか違うなと思ったら、そこでやめて、また新しく描き始めてもいい。


沢山描いて経験というコレクションを増やすもよし。


今から始まるのは、ひとりの青年が様々な出会いやチャレンジを経て世界が広がっていく話。


いつも何かが邪魔をして、描き始めた絵が完成した事がない青年が、そんな自分を脱却するためにがむしゃらに筆を振いまくる話。




まずは彼の事について知ってもらおう。


家から歩いて数分。彼はこの神社が好きだった。


なんか落ち着く。それだけの理由で。


彼の名前は日向真白(ひむかいましろ)


背は平均より少し低く、痩せぎすで、字は汚く、学力は中の下、絵は下手、歌も下手、要領も悪い。


The 目立たない子とも言える彼は、幼い頃から目立つグループの中にいた。幼馴染が目立つキャラだったからそのおまけである。


彼は人を喜ばせることや、楽しませることが好きだった。というよりも人が自分のした事や言った事で喜んだり、楽しそうにしている顔を見るのが好きだった。


だからというわけではないが、自分の本質に逆らって陽気なお調子者を装った。


自分の周りにいた彼ら彼女らは自分の事を良く思っていないと知らずに。


彼の言動で楽しそうにしてくれてるのを見ると、ついつい張り切ってしまう。それが空回りしているとは思っていなかった幼い頃、小学生くらいまでは毎日がただ楽しかった。


成長していくにつれて彼は周りに沢山の人に囲まれながら、ひとりぼっちだと気づいた。実はいつも一緒にいた友人だと思っていた者達が自分の事を好ましく思っていたわけではない。ただ自分が空回りしていたのだと。


本来は、目立たずひっそりとしているのが性分な彼だ。だからといって、ひとりになりたくてもそこから抜ける勇気がなかった。自分の事を友達と思っていない友達(仮)の集団から。


良い顔をしていても腹の底で何を考えているか分かったもんじゃない。成長していくにつれて彼は人を信じなくなった。小学生の頃のように、人の楽しそうな顔が見たいって気持ちはカケラもなくなっていた。


思春期という奴を迎えても思春期らしい事が何か分からず、友達(仮)が興じている話の輪に形だけ入って、楽しい振りをしながら、そして一丁前に片思いらしきものをして、誰にも話せず、誰にも知られずに失恋しながら学生生活を送っていた。


人を信じる事をやめて、表面上の付き合いだけと割り切ってからというもの、気持ちはかなり楽になったが、それでも1人になるのを怖がる自分が嫌いだった。


彼についてはこんな感じ。


さて、そんな彼も集団行動を強制される時間から卒業して、これからは時間の使い方は自分自身に委ねられる生活に入ろうとしている。





今、真白は家の近所にある大好きな神社にいた。


子供の頃からの特等席とも言える切り株に腰掛けて神社の御神木とも言える(と真白が勝手に思っている)木を見上げながら思っていた。


大学に進学し、一人暮らしをする事になったので、これまでのようにここに来られなくなるな。


新しく住む街にもこんな居場所は見つかるかな。なんてフォークバンドの歌詞みたいな事を考えていたけど、残念ながら真白はそんなセンチメンタルな奴じゃないから、そこからこれまでの思い出に浸るなんて事もせず、あー腹減ったと呟いた。


引っ越しはもう終わってる。


とりあえず必要最低限の家具を揃えた部屋での新生活はとても楽しみだった。まさか子供の頃から貯めていたお小遣いやお年玉がすっからかんになるとは思わなかったけど。


実家のある街から県外の大学に進学するなら、アクセスの関係から一人暮らしをするしかないと分かってはいたけど、こんなに金がかかるとは思ってなかった。


べらぼうな入学金を含めた学費や敷金・礼金なる物も含めた引っ越し費用を目の当たりにした後で、家具まで新調してくれた両親に小遣いも仕送りしてくれなんて言えなくて、当てにしていた貯金も尽きたとなるとアルバイトをしないとなと思い、引っ越し作業の際に現地のコンビニから持ってきた何冊かの就職情報誌?とかいうものをペラペラめくっていた…けど、何にも決められずに結局大半の時間はぼーっと木を見上げて、腹が減って家路についた。


漠然と進学したものの、あーなるだろう、こうなるだろうといったぼんやりとしたイメージは描いていた。可能な限り他人と関わらないようにするという前提の上で。


しっかり卒業して、ある程度の収入が得られる職について、可能であれば家庭なんてやつも築いて。


そういうありきたりな未来を誰もが手に入れられるものだとは思っていない。


きちんとすべき事をして、してはいけない事はしない。単純に見えて意外と難しい、そんな日々を滞りなく送った先に描ける未来。


それでいい。


今を楽しもうなんてしたからあんな思いをした。


だからもう欲張らない。


しかし彼は知らなかった。


これから始まる刺激的な日々を。


今は避けようと思っている新しい出会いや繋がりが彼をどれだけ成長させるかを。

初投稿です。


第一話、最後までお読み頂きありがとうございます。


今後も"なんか次が気になる"そんな話を書いていきます。


どうぞよろしくお願いします。

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