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真白のキャンバス  作者: フジ


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11/33

寄り道 3

話を一つ飛ばしてました!

大変失礼しました!

以後気をつけます…


早く投稿にも慣れないと…

帰りは行きに通った男坂ではなく、女坂から下る事にした。


こっちは石段ではなく坂になっている。斜度も1号路の急峻な坂に比べたら緩やかなもので、杖をついた高齢者もしっかりとした足取りで歩いている。


帰りは比較的に気持ちに余裕がある。初めての道とはいえ一度通った道だし、今はニコラが一緒にいるというのもあるかもしれない。


「これもそうですけど、高尾山は天狗を祀っているんでしょうか」


参道沿いにある天狗の像を見上げて真白が呟いた。


「うーん。確かに祀っているのは間違いないかな。でも高尾山天狗伝説っていうのはちょっと違うんだよねぇ」


勿体ぶって話すニコラはどこか台本を読んでいるように続けた。


「高尾山は僧侶の修行の場なんだよ。昔からね。山伏の格好で山の中を駆け回り、滝に打たれ、法螺貝なんか吹いたり。そんなのを一心不乱に日夜一生懸命やっていたんだね。そんな白装束で鬼気迫る様子の修験者たちを見た麓の人や参拝者が天狗様がいたって話したんだって。それが高尾山天狗伝説の話のひとつだよ」


すごく腑に落ちる話だった。さっき薬方院でお参りをしている時に境内から太鼓や法螺貝の音と共にお経が聞こえてきた。それは鳥肌が立つような迫力だった。


高尾山の信仰には疎いので詳しい目的は分からないが、かつての修験者もとてつもないパワーを放ちながら修行に励んでいたのだろう。


「すごく興味深いです。歴史は好きなのですが、伝説や逸話も紐解くと意外な背景にたどり着くものですね」


素直に感想を述べた真白を見てニコラは目をパチパチと瞬かせた。


「真白くんって学者みたいな話し方するね。めちゃくちゃ頭良さそう。まぁいいや。どう?今ので伝わった?」


話に夢中で気付いたらケーブルカー乗り場と1号路への分岐地点まで来ていた。景色を楽しむ余裕はあれど、話しながらだと記憶には残らない。


でも今日はそれ以上に有意義な話を聞けたと思っている。それだけニコラの話は興味深かった。


「はい。凄く分かりやすかったです」


でもなんでそんな事を聞くんだ?と訝る真白にニコラは照れくさそうに答える。


「もう会っちゃったから話すけど、桜田のツアーの時に次は私の番って言ったでしょ。それで高尾山満喫ツアーを計画してるの。その中で参加者に今の話をしようと思って。ただ登山となるとハードルが高く感じるかなというのと、教授には私を含めて2名以上登山経験者を同行させる事って言われてて。薬方院までは舗装路だけど、その先は未舗装もあるから。それで私の山の師匠に相談しに行ったんだよ。あ、串団子でも食べてく?」


「その山の師匠が宵の明星のマスターですか。あとこの後食事をする予定なので串団子は次回に取っておく事にします。というかニコラ先輩はさっき蕎麦を食べたばかりですよね」


残念そうに唇を尖らせながらニコラはブツブツ呟く。


「さっき食べたのは八王子ラーメンだし…若いんだから団子のひとつや二つ食べたうちに入らないでしょ…」


「いや、僕は食べないと言っただけですよ。ニコラ先輩は遠慮なく食べてください」


そう言った真白をチラッと見て、さらに頬をぷくーっと膨らませて言う。


「知ってる?高尾山の団子はひとりで食べても美味しいけど、誰かと一緒に食べるともっと美味しいんだよ」


知らねぇよ。という言葉が喉まで上がってきたが既の所で飲み込んで話題を変えた。


「それで、ニコラ先輩の師匠が宵の明星のマスターなんですか?」


あ、そうだそうだという顔をしたニコラは頭の軌道修正も上手くいったらしく本題に戻ってきた。


「2人とも登るけど、私が師事してるのは奥さんの方。さっき相談に行ったら、行程が確定したらまた来てって言われたから確定させに来たの」


この人はせっかちらしい。でも即時行動する人には素直に好感をもつ。


「きっと来る人も真白くんみたいに初めての人がいるから、今日の経験を踏まえて色々話を聞かせてよ。私も一緒にお店に行くから」


スキップせんばかりの勢いで坂を下るニコラに真白は一生懸命着いていく。


「登りも辛かったですけど、下りも脚にきますね…帰りは楽できるかなって思っていたんですが…」


太腿と膝だけじゃなくて足の裏も痛くなってきた。


「下が硬いから土の登山道よりも膝とか足の裏が痛くなるよね。気づかなくてごめんね!」


ニコラはそう言ってペースを落としてくれた。おそらくツアーの際のペース配分を考えているのだろう。しかしこの人元気だな。


げんなりしたり、ニコラの楽な歩き方講義を聞いているうちに1号路登山道入口まで辿り着いた。


「お疲れさま!それじゃお店に行こう!それとも蕎麦でも食べてく?」


もう突っ込むのもかったるくなっていた真白は、


「またの機会に。このままお店に向かいましょう」

そう返して、指差した蕎麦屋を名残惜しそうに見つめるニコラを背にお土産屋&蕎麦屋通りを抜けた先にある甲州街道に向かった。

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