時空研究所室内
「どうやらその感じだと、バビロンに探し人は見つからなかったようだね」
そういえば、さっきはそのまま飛ばされたが、一体「美子がいそうな場所」というのはどうやって算出しているのだろうか。そう訊くと、
「この画面を見てごらん」
そういって博士が取り出したタブレットには、地球儀と時間軸がある。時間軸の部分を博士がなぞると、地球儀のある位置が光った。
「ここが、美雪ちゃんのいそうな場所だよ」
「こうして時間軸を動かしていくと…」
BC1000からAD2000まで動かして、光った場所は全部で7箇所。さっきのバビロンに加え、BC300頃からAD70頃の東地中海、北宋初期の中国、陥落寸前のコンスタンティノープル、1600年代のイギリス、1930年頃のNY、1970年代の上海の6つらしい。
またそれぞれの時代の人物についての詳細データを電子辞書にダウンロードしてもらい、なるべく権力者にすり寄れるようにした。やはり今回のタイムトラベルで分かったのは、権力者は強いということだった。その分、負担も大きかったが。そこで負担軽減のため、そして歴史をなるべく変えないために、辞書を拡充することとしたのだ。
ところで、何故こんなにも親身になって捜索に協力してくれるのだろうか。すると博士はこう告げた。
「え?ただの実験台だよ?」
「えっ!?」
思わず驚いて声が出てしまった。
「っていうのは嘘で、実は美雪ちゃんが、『時空の鍵』を持ってるみたいなんだ」
『時空の鍵』?
「時空を自由に編集できちゃう権限みたいなもの」
つまりは、その鍵があれば、世界に何ら矛盾を生じることなく歴史を変えてしまう、まさに「世界の管理者権限」みたいなものらしい。
「でもそのままだと美雪ちゃんが危ない」
「というのも『時空の鍵』は所有者が気付かぬうちに所有者自身を改変してしまう恐れがあるんだ」
どうやら持っているだけで危ない代物らしい。
「だから、美雪ちゃんの最初のタイムスリップに連動して引きずられちゃった彼氏の君に、美子ちゃんを助けてもらいたい、ということ。分かった?」
「『時空の鍵』は所有者を殺さないと手に入らないものだと長らく信じられてきた。でも今は違う。傷つけずに回収できる。だからこそ、早めに回収しておかないと…」
「別の組織に狙われるかも?」
「そういうこと。絶対時間的にもそうだけど、相対時間的にも、見つけるのが早ければ早いほど良いの」
「という訳で次のタイムトラベル先はBC346のペラ!」
「行ってらっしゃい!」
博士の掛け声が聞こえるとともに、時空転移装置が作動した。声に反応したのか。




