バビロン出発
しかしバビロン再興に成功した救国王ネブガドネザルは、ニネヴェへの移住者が増加したこともあり、やがて同盟国のメディア王国に敵視されるようになった。メディア王国軍による侵攻を受け、城壁を修復していなかったニネヴェは陥落した。
これに焦った王はまたしても難題を私に押し付けた。バビロンの防御力向上であった。既に3重城壁を有するバビロンの防御力を更に向上させるには、日本城郭で言う所の惣構しかない、そこまでは確信したが、何を造ればよいか悩んだ。しかしニトの一言で全ては吹き飛んだ。
「壁や空堀がダメなら水堀を作ればいいじゃない」
こうしてバビロン北東方にユーフラテス川からの運河を複数本通し、残土で堤防や防御陣地を建設した。それでも不安な箇所であったティグリス・ユーフラテス川の間にも長城を建設する事で、2重惣構を敷いた。メディアによりニネヴェとの交易路は失われたが、この対策によりバビロンは安住の地となり、以後半世紀以上に亘って一切の侵攻を受けなかったため、「商都」として大いに栄えることができた。
しかし結局、彼女への手掛かりは見つからないまま十数年が過ぎた。不老不死の薬「金丹」―時空研究所で開発された『賢者の石』の粉末の事だが―により不老とはいえ、この後ここにいた所で有効な手掛かりはなさそうだ。そしてニトには世話になった事だし、と金丹を渡した。
「不老不死の薬?あのウルク王の叙事詩みたいね」
「その数千年後だけどね」
「…数千?」
「数千年後まで生きられるかもね、ってことよ」
但し、歴史が変わってしまうので、王には秘密で。そして別れの日、歴史が変わって『救国王』となったネブガドネザルとニトに別れを告げ、時空転移装置に手を掛けた。




