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夢の、書店。  作者: 夢乃
同窓会

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20/22

二十.

 一次会が終わるまで、夢ちゃんは現れなかった。幹事を務める同窓生が一次会の終わりと、この後二階にある別のホールで二次会があることを伝えて、この場はお開きになった。

 夢ちゃんに逢えないなら、これで帰ろうかな、それとも、彼女が約束を守ることを信じて、二次会にも出席しようか。そんなことを考えながらロビーに出た時だった。


 入口の自動ドアが左右に開いて、一人の女性が小走りに入って来た。僕の頬が自然に緩む。

「遅れちゃったぁ。もう終わっちゃったの? あ、久し振り~」

 息を切らせて入って来た彼女に、入口近くにいた同窓生たちが彼女に答えた。

「夢ちゃん遅~いっ さっき一次会が終わったとこだよ」

「でもこれから二階で二次会だって。出るでしょ?」

「うん、行く行く」

 夢ちゃん、二次会には出るんだ。なら、僕も行こう。

 彼女が旧友と話しながら、ちらりと僕に視線を送って微笑んだ。自然と僕の頬が綻ぶ。良かった、今日の同窓会に出席して。




 イベントホールの二階での二次会は、丸テーブルを椅子が囲んでいることは同じだが、自由席になっている。既に何人かの同窓生が席に着いて談笑している。僕も適当に、まだ誰もいないテーブルを選んで座った。部屋の入口が見える場所に。

 ぱらぱらと同窓生が入って来て、席が埋まってゆく。しばらく待っていると、夢ちゃんが何人かの女友達と一緒に入って来た。彼女は、自然な足取りで僕の着いているテーブルに来て、まだ空いている僕の隣の椅子に座った。

「久し振りだね」

「うん。来られたんだね」

「言ったでしょ。絶対来るって。急用で遅れちゃったけど」

 と言うことは、やっぱり夢で約束したことはぼくの夢のではなかったんだ。・・・いや、そうじゃない、夢が夢でないってどう言うことだよ。けれどそれなら、彼女の言葉をどう解釈すれば良いのだろう?


「それじゃ、二回目の乾杯するぞっ 酒は回ってるかっ」

 主催した同窓生の声で、二次会が始まった。夢のことは後で考えよう。




「瞬くん、今どうしてんだっけ~?」

 アルコールの回って来た幼馴染が僕に言った。口調ははっきりしているが、すこし酔いが回っているようだ。

「まだ親の脛齧り。大学院に行ってるよ」

「へぇ、そんなんだ~」

 彼女は腰を少し上げて椅子を僕の方に寄せた。

「瞬くん、彼女とかいるのぉ?」

 妙に艶めかしい声で囁く。

「ううん、いないよ」

「ならぁ、あたしと付き合って」

「え?」

 僕は耳を疑った。彼女に好意は持っているが、まさか彼女も好意、それも愛情を持ってくれているとは思わなかった。

「えっと、それ、本気」

「うん、本気だよぉ。高校の時久し振りに会ったでしょぉ、あの時から想ってたのぉ」

 そうなのか。いやいや、酒に酔った勢いで心にもないことを言っているんじゃ。


「夢ちゃん、酔ってるよ。酔った勢いでそんなこと言っちゃ駄目だって」

「酔ってるけどぉ、あたしの気持ちは本気だよぉ」

 彼女は椅子に座り直し、姿勢を正して僕を真っ直ぐに見た。

「瞬くん、好きです。付き合ってください」

 夢ちゃんははっきりと言った。

「夢ちゃん、だいた~ん。みんないる場所でぇ」

「瞬く~ん、返事してやんなよぉ」

 同じテーブルに着いていた同窓生たちが囃し立てる。けれど、周りの言葉など聞こえないように、幼馴染は真っ直ぐに僕を見つめている。僕も、旧友の声は耳に入っているものの、聞こえてはいなかった。夢のちゃんと僕は、二人だけの世界にいた。あの、夢の中のように。


「僕で良ければ、喜んで」

「やったっ」

 夢ちゃんは小躍りせんばかりに喜んだ。それだけに留まらず、僕の腕を取って立ち上がる。腕を引かれて僕も彼女の隣に立たされた。

「ちゅうもーく。あたしから報告でーすっ」

 何を言う気だろう。まさか。

 夢ちゃんの声に、会場が静まり返り、無数の視線が僕たちに集中する。夢ちゃんは僕の顔を見て極上の笑顔を見せると、会場に顔を向けて、息を吸った。

「あたし、本屋(もとや)夢乃(ゆめの)は、瞬くんとお付き合いすることになったことを、ここに報告しますっ」

 一瞬の沈黙。次の瞬間、会場は僕たちを祝福する声に包まれた。

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