十四.
小学生の時に学校の図書室で見つけたマンガ、月刊小説雑誌に連載されている例のマンガは、今も連載が続いている。単行本も十五巻を数えた。十六年以上も連載していて十五巻というのはマンガの単行本としては少なく思えるが、連載媒体が月刊誌だからこのくらいだろう。
このマンガの作者、本屋次郎氏の名前は、このマンガ以外では見たことが無かった。大学生になった今になって、今更ではあるが、他に作品を描いていないか調べてみた。十年以上もマンガ家として活動を続けていて、作品が(長期連載とはいえ)一作しかないとは思えなかったから。
結果、見つけたのは、習作として描かれた作品が一作だけ。現在連載している作品よりも前に描かれたものだから、十六年以上前の作品だ。単行本も出版されているようだが、当然絶版になっている。念の為、出版社に問い合わせてみたが、在庫は一冊も無かった。
簡単には手に入らないとなると余計に欲しくなるのが人情というもので、それから僕は、古本屋を巡って、本屋次郎の習作というマンガの単行本を探し回った。
街を走り回り、見つけた古本屋に片っ端から入った。
電話帳で古本屋を探し、バスや電車を乗り継いで訪れた。
遠出する際には、行先近隣の古本屋をチェックしておき、多少遠回りしてでも寄り道した。
有名な古書店街へ赴き、古本屋をハシゴした。
求める本は、どこにも無かった。
十六年も前のマンガの単行本だ、そうそう見つからないだろう。習作として描かれたということは、発行部数も少なかっただろうし。調べて判ったことも少ない。タイトルと図書番号、表紙、出版年月程度だ。それ以外は何も判らなかった。
そもそも、作者の《本屋次郎》なる人物も謎だ。作品は、見つからない処女作と現在も続いている長編のみ。作品が少ないといっても、十年を超えて連載しているということは、それなりに人気があるはずだ。それなのに、作者の情報は名前以外何も出てこない。いったい、どういう人物なのだろう。
いや、作者については二の次で良い。今、僕が求めているのは本屋次郎の処女作の単行本だ。以前訪れた古本屋にも、もう一度足を運んでみようか。新たに手放した人がいるかも知れない。




