第7話・本当の楽しみ
家に帰った僕は昼食を済ませ集合時間まで部屋でテレビを見ていた。チャンネルを買えていると昼のバラエティー番組では今頃夏のお勧めスポットを紹介していた。芸能人が実際その場所に行ってレポートをしたりしていた。その中には今日行くプラネタリウムのこともやっていた。しかも取材されている場所はまさにその場所だった。これは人が多く来そうだな。
そのまま番組を最後まで見ていた。番組が終わるとちょうどいい時間だった。
「さて行くかな」
クーラーが効いた部屋からまだ暑い空の下に出た。
外ではまだ休みなのだろう小学生が元気に走っていた。なるべく日陰を通りながらしのぶちゃんの家に向かっていると道中にあるコンビニで雑誌を立ち読みしている涼の姿が見えた。涼も僕に気づき店から出てきた。
「翼も今から行くところか?」
「そうだよ。まだ早いけど家にいても暇だし」
「俺も同じだ。そんじゃ行くか」
「あれ? ところで青葉さんは?」
辺りを見渡しても青葉さんの姿が見えない。いつも涼が遅れるため青葉さんが一緒にいるはずだが今回は涼1みたいだ。
「青葉ならもうすでに向かっているぞ」
「さすが青葉さん。早いな」
僕と涼はしのぶちゃんの家へ向かった。歩いている途中前方を歩いている美羽の姿が見えた。
「おっ、美羽ー」
僕が呼ぶと美羽は気づき振り返り立ち止まった。僕と涼は美羽と合流して歩きだした。
「2人とも早いですね」
「家にいてもやることないから」
「私も同じです。一人暮らしだと暇なので」
「天野って一人暮らししているのか。両親は?」
「両親はちょっと遠くに居るので」
「遠く? わざわざ俺たちの高校に来るわけでもあったのか?」
涼は美羽がこの世界の人じゃないってことはもちろん知らない。僕は咄嗟にフォローした。
「えっと、実は美羽はここの街出身で今までは県外に居たんだけど両親が海外に行くってことになって、それで思い出のある街に住みたいってことで。そうだよな?」
「あ、はい。そうなんで」
僕は何とかそれっぽいことを言って誤魔化そうとした。自分でもこんなすぐに言えるとは驚きだ。
「なるほどな。でも一人暮らしっていいよなー。俺もいつか絶対したいぜ」
涼は中学の頃から一人暮らしに憧れて居た。兄弟が居るとかそういう理由ではなくただ一人暮らしはかっこいいって言う理由らしい。
「でも一人暮らしって心細いですよ。風邪ひいたときとかは特に」
「俺、まったく風邪ひかないから分からねぇや」
「ひいたことないんですか?」
「まぁな」
涼は誇らしげに自慢した。そういえば涼は今まで学校を休んでいるのを見たことないな。馬鹿は風邪を引かないってやつか。
話しているうちにしのぶちゃんの家が見えた。毎回来るたびにこの豪邸は刺激が強い。家の前には黒い高級車が停まっていた。
黒い車の運転席が開き、一人の男性が出てきた。見おぼえあると思ったらその人はしのぶちゃんのお父さんだ。
しのぶちゃんのお父さんは若くして企業を成功した実力者で最近では雑誌などでも紹介されるほどの人だ。僕たちの事は幼稚園の頃から知っている。
「おじさんこんにちは」
「ん? あぁ、翼君と涼君じゃないか。久しぶり。そっちの娘さんは?」
「あ、始めまして。天野美羽って言います」
「美羽ちゃんだね。よろしく」
おじさんは昔から気前がいい人だ。それだから企業で成功したとも雑誌に書いてあった。
「しのぶちゃん居ますか?」
「居るよ。ついさっき青葉ちゃんも来て入って行ったところだから」
「それじゃお邪魔します」
僕たちは家の大きな門をくぐり玄関へ向かった。歩道を歩いて行き玄関に着くとそこでは青葉さんとしのぶちゃんが居た。
「おーい」
涼が呼びかけると二人はこちらに気づいた。
「これでみんなそろったわね」
「タカさんは?」
駐車場にはいつもの車がなかった。
「お兄ちゃんはもう少し時間かかるみたい。暑いから上がって。アイスあるよ」
「お、さすがしのぶ、気が利くな」
僕たちはしのぶちゃんの家に上がり客間に向かった。
「飲み物とアイス持ってくるね」
しのぶちゃんはキッチンに行き僕たちは客間に入った。
客間は赤いパーペットが敷いてある和風な部屋で周りには高そうな骨董品や掛け軸が飾ってある。
僕たちはそれぞれソファーに座った。
しばらくするとアイスと飲み物を持ってきたしのぶちゃんが戻ってきた。
「おまたせ。アイスどぞー」
しのぶちゃんはみんなに飲み物とカップのアイスを配った。
アイスを食べながらみんなで話していると駐車場に1台の車が止まった。
「あ、お兄ちゃん帰ってきた」
「それじゃそろそろ行こう」
僕たちは駐車場へ向かった。
駐車場にはタカさんの姿があった。
「おう、待たせたな」
「タカさんも今日から大学か?」
「まだ休みだけどちょっとやることがあったからな。それじゃ行こうか」
僕たちは車に乗り込みプラネタリウムのある〝ディスカバリーエリア〟へ向かった。そこは海の近くで結構静かな場所だ。行くのは何年ぶりだろう? 小学生の頃はよく親たちと一緒に行って居た。
車で移動すること二十分ほどが経ちようやく目的地のディスカバリーエリアについた。
「やっと着いたー!」
涼は車から一番の降り盛大に伸びをした。続いてみんなも車から続々と降りた。
「海の風が気持ちいですね」
「潮の香りがするな」
このディスカバリーエリアは海沿いにあり耳を澄ませば波の音が聞こえる距離だ。
晴れた日は海岸から富士山が見える絶景スポットでもある。
「みんな早く早くー」
しのぶちゃんは一足先に入り口にいた。
僕たちは建物内に入った。中には親子連れが多く賑わっていた。
「プラネタリウム真でまだ時間あるからそこの体験コーナー行こうぜ」
「賛成―!」
涼としのぶちゃんは先に1階にある体験コーナーへ入っていった。
「あの二人は自由よね。先に券売機でチケット買っておきましょう」
「はいっ」
「それじゃ僕たちも体験コーナー行こうか」
「俺はそこの休憩スペースにいるから時間になったら呼びに来てくれ」
そういってタカさんはいつの間にか持っていた本を持ち休憩スペースの椅子に腰かけた。
僕と美羽と青葉さんは先に人数分のプラネタリウムの入場券を買い体験コーナーへ入った。
体験コーナーには宇宙的な科学体験が出来るコーナーがいくつかあり、それぞれがゲーム感覚で遊べるのだ。
すでに涼としのぶちゃんは遊んでいた。
「二人ともこれプラネタリウムのチケットだから」
「おぉ、サンキュー」
「ありがとー」
二人はチケットを受け取った。僕たちは時間まで各自この体験コーナーで時間を潰した。
青葉さんは涼としのぶちゃんが居なくならないように一緒に付き添うことに。僕は美羽と体験コーナーを回った。
「美羽はこういう科学って好きなのか?」
「全然わかららないです。でもここにいるだけで不思議な気持ちになれますね。世界が違うけど宇宙は共通みたいですし」
「そうなのか? ってことは美羽の世界って宇宙のどこかにあるとか?」
「それはちょっと違いますね。私が居た世界も同じ地球なので」
「よくわからないな」
「背中合わせにある世界って感じですよ」
美羽と話していると館内放送が流れた。
『ご来店の皆さまにお知らせします。本日プラネタリウムは14時からとなります。入場の際には1階チケット販売機よりチケットをご購入のうえお越しください』
「もうそろそろだからみんな呼んで来よう。僕はタカさん呼んでくるよ」
「分かりました。私は青葉さんたちと合流して来ますね」
「それじゃエレベーター前に集合で」
「はいっ」
僕と美羽はそれぞれみんなを呼びに行きエレベーター前に集合した。
「みんなチケットはいい?」
青葉さんはみんなに確認を取った。しっかり一人1枚持っている。
僕たちはエレベーターに乗り込んだ。するとエレベーターの内部は突然明かりが消え周りには綺麗な星座などが映し出された。
「な、なんですかこれ?」
美羽は辺りを見渡した。
「エレベーターの中も宇宙みたいよね」
「すごく綺麗ですね」
その光景もゆっくり見る暇なくエレベーターはあっという間にプラネタリウムのある階へ着いた。
僕たちは入り口にいた受付のお姉さんにチケットを渡して入場した。
「席は自由みたいだからどうする?」
「私は上の方にするわ。あまり上向くの辛いし」
「俺は一番前の方にするぜ。映写機かっこいいし」
「同じくー」
涼としのぶちゃんはプラネタリウムよりそれを映し出す機械の方に興味があるみたいだ。やっぱり似た者同士だ。
タカさんも青葉さんと同じ上の方に座った。
「美羽はどこにする?」
「どの辺りが一番よく見えますか?」
「ん~……真ん中辺りかな? 上向くことになるけど」
「翼君と同じところでいいですよ」
「それじゃ真ん中辺りにするか」
僕と美羽は真ん中あたりの席に座った。
時間になるとアナウンスが入り徐々に暗くなり空には無数の星が現れた。
「綺麗……」
美羽は空を見ながらそう呟いた。そしてその瞳には涙が輝いたように見えた。気のせいだろうか?
いろいろな星座のことや聞き覚えのある星の名前から有名な惑星のことをいろいろ知った。
プラネタリウムも終わり僕たちは建物を出た。
涼としのぶちゃん、青葉さんは施設の敷地内にある足つぼの散歩コースを楽しんでいた。結構足裏が痛くなり慣れないときつい物だ。タカさんは車に戻り、僕と美羽は隣にある海へ向かった。
「風が気持ちいな」
「富士山も綺麗に見えますね」
海岸からは綺麗な富士山が見えた。かなりの絶景スポットだが地元の人以外はあまり来ないので静かだ。
美羽とテトラポットの近くで座って海を眺めていた。すると美羽の手元に光の塊が現れ光の中から緑色の羽根が出てきた。
「あれ?」
美羽はなんだか不思議そうだ。僕はてっきり出てくるのを知っていたかと思っていた。
「どうした?」
「この羽根は〝癒し〟なんですけどどんなに頑張っても出なかったんです」
「他には何かしたのか?」
「家で好きなケーキ食べたり感動する本読んだり映画見たりしたんですけどなかなか出なくて」
その時僕はプラネタリウムを見ていたときの美羽を思い出した。
「でもプラネタリウム見てるとき泣いてなかった?」
「えっ、うそ!?」
美羽は頬を赤くして恥ずかしそうに頬を手で覆った。
「きっと涙が出るくらい幸せだったんだろうな。とにかく今回も無事達成だな」
「これで5枚目なので残りは2枚ですね」
「よし、頑張ろう」
「はいっ」
「おーい、二人ともそろそろ行くよ」
青葉さんが僕たちを呼びにやってきた。
「行こうか」
「そうですね」
僕は美羽の手を引きみんなのもとへ向かった。
読んでいただきありがとうございます
最近作詞の方がいろいろありまして小説の方が手薄に;
そしてこの話も残りわずかになります
次回もお楽しみに
@huzizakura




