ダラオ村 1
旅を始めて道を歩く。
何もない道をただ歩く。
次はどんな村や町へたどり着けるのか。
どんな人がいるのかと考えると怖くなるが、歩みを止めない。
途中イーリャからもらった食べ物を昼食に食べた。
中には食べやすいようにパンにスパイスのきいたお肉が挟まっているものだった。
旅の途中で美味しいものが食べられるのは嬉しかった。
そのまま数日あるき、しばらく人ともすれ違わなくなった。
この先に人里があるのか不安になるほど人気が無い。
ふと森へ視線をやると小さな人影を見た気がした。
「お…おばけ…」
少し暗くなっている森の中、頭をよぎるのはそれだけだった。
止まっていた足を動かそうとしたとき、少し高い声を聴いた気がした。
「…た……て…」
放ってはおけない声のような気がして恐々森の中を目を凝らしてみる。
すると小さな子供がこちらへ向けて走っている姿を見つけることができた。
だが頭には動物の耳のようなものがついている。
「助けて」
子供の後ろを見るとウーダーラが追いかけてきていた。
即座に弓をかまえる。
「伏せて」
大きな声で子供へ向けて叫ぶ。
声に驚き子供は顔を上げる。
弓をかまえる姿を見ると、その場の地面に伏せる。
弓を弾くと光とともに矢が現れ、ウーダーラへ向けて放つ。
矢はウーダーラの頭部に当たり、倒れる。
倒れたことを確認すると子供へ駆け寄る。
「大丈夫ですか。」
子供のもとへ行くと呆然と伏せの状態から顔を上げていた。
「ふぇ…」
まずい。
泣き始めてしまう。
子供のあやし方を知らないサトミはうろたえた。
何とか立ち上がらせ、とりあえず泣き止むまで待つこととした。
「どこから来たのですか。」
「ダラオ。」
聞いてみたものの、ダラオ村がどこにあるのかがわからない。
「お姉ちゃん、ありがとう。」
自分の服を握りしめ、お礼を言う。
「どういたしまして。」
子供の女の子の後ろに視線をやるとウーダーラが倒れたままになっている。
猿のようなその姿は、解体したところで大したお金にはならないだろうと考える。
「ダオラから歩いてきたのですか。」
小さな女の子に問いかけると、小さくうなずく。
「お母さんに薬草を届けるの。」
女の子の手には草が握りしめられていた。
どうやら女の子は薬草を探しに一人森の中を歩いていたようだ。
「では一緒にダオラへ行きましょうか。」
「うん。」
女の子は笑顔で今度は大きくうなずいた。
暗くなり始めており、このままでは村にたどり着かないかと思ったが、遠くに門が見えてきた。
一安心である。
門に近づくと、人だかりがあることに気が付いた。
皆険しい顔で森を見て話し合っていた。
そこへサトミ達に気が付いたのか、一斉に視線が向く。
「ナノカか」
「パパ」
女の子は男性に向けかけていく。
「ナノカ」
男性は大きな声で女の子の名前だろう言葉を叫び、女の子を抱きしめる。
「よかった。何処も怪我はないか。」
「ごめんなさい、ごめんなさい。」
女の子は心配させてしまったのがわかったのか、再び泣き始めてしまった。
サトミは安心したのとともに、自分はどうするべきか考えていた。
門に集まる大人たちは皆頭に動物の耳がついていたのである。
こういった場所では排他的なことが多い。
もしかしたらと思っていたが、予感は的中してしまったのである。
「あのね、お姉ちゃんに助けてもらったの。それでね、それでね。」
しゃくりあげながら一生懸命話す女の子。
サトミは凍り付いていた。
ウーダーラを倒さなければいけない場だった。
後悔はない。
ただ、弓を使った力を見せてしまった上に口止めを忘れていたのである。
ただただ冷や汗が流れる。
そんなサトミの様子を見て不審に思った大人たちは警戒心をあらわにする。
お互いが緊張感をもって動向を眺めるだけであった。
サトミの弓の能力っは翼を持つ者たちしか持たないものである。
女の子がその後大きな声で泣き続けるので、この場では言わないだろうと安心し視線を大人達へ向けると警戒されていた。
女の子に何かしていないだろうなと訝しむ視線に、誤解を解くべく頼みの綱の女の子に視線を向けると今だ泣いている。
話してほしいのか、黙っていてほしいのか不思議な心境である。
その後何とかウーダーラを倒したこと、女の子にそこで出会ったことを話し、無事誤解を解くことはできたのであった。




