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翌朝、疲れの少し残るからだに鞭を打ち起き上がる。
日の高さを見て、少し長く眠ってしまったことに気づく。
「朝ごはん…。」
食欲に突き動かされ、身支度を整える。
昨日は肉屋での買取のはずが、食堂を営む店主も話を聞きつけての大騒動になった。
村の人数はそんなに多くないはずなのにである。
あくびをこぼしながら、朝食の場へ向かう。
「おはよう。」
「おはようございます。」
イーリャとの会話にも少しづつ慣れ、心に余裕が持てるようになった気がしていた。
「ターダ・ベイを倒したんだってね、すごいじゃないか。人は見かけによらないというが、まさにその通りだね。細いのによく狩ったもんだ。」
気がしていただけて、こうも褒められると気恥ずかしく、心乱れてしまう。
「そ、そうですね。」
「はっはは、謙虚だね、あんたは。村中が今感謝しているだろうね。夕飯よかったらうちで食べていかないかい。ターダ・ベイを狩ったんだ。それくらいしかできないが、腕によりをかけるよ。」
「い、いいんですか、ありがとうございます。」
「6時にはできるから、ここに来とくれ。」
「わかりました。」
「それじゃあ、朝食を持っていくから席で待ってな。」
昨夜は疲れのあまり夕飯も食べづに眠ってしまった。
厨房から朝食のいい匂いが漂い、お腹が鳴りそうになる。
いつもの席に着き、少しすると朝食が運ばれてきた。
「今日の朝食はヌーロよ。熱いから気を付けてね。」
「はい、ありがとうございます。」
目の前に置かれたのは、スープの中に麺が入っているものだった。
小麦粉を練って作ったような麺と、透き通ったスープである。
一口口にすると、温かさがじんわりと体に染み渡るようだった。
麺を食べるのは久しぶりで、とても美味しかった。
麺はもちもちしている食感で、食べ応えがある。
スープは濃すぎず、魚介の味だろうか思わずすべて飲み干してしまうくらいに美味しかった。
大満足の朝食を終え、ターダ・ベイの残りの素材を売りに出すべく部屋へ戻る。
昨日の惨事を思い浮かべ、少し気が重くなる。
すでにサトミがターダ・ベイを倒したことは村中に知れ渡ってしまった。
うかつであった。
そんなに大事になってしまうとは思いもよらなかったのである。
一瞬素材は土に埋めてしまおうかとよぎる。
だがお金は欲しいと考え直し、地図を広げる。
まずは革製品を取り扱っているお店に向かうことにした。
宿からそんなに離れていない位置にお店はありそうだ。
もうお店は開いている時間だろうと宿を出る準備をし、お店へ向かう。
宿を出ると少しだが人の往来があった。
サトミに気づいた村人は皆声をかけてはこないものの、目で追いかけてしまっていた。
居心地の悪さに少し速足になる。
「すまん、あんたもしかしてターダ・ベイを狩った人かい。」
そこへ一人の男性が声をかけてきた。
お店は目と鼻の先なのにと思いをこらえ、うなずきだけ返す。
「やっぱりそうか、よかった。ターダ・ベイの素材を譲ってくれないか。そこの店で店主をやっているんだが、ターダ・ベイの素材があるかと思ったらいてもたってもいられなくてな。」
「は、はぁ。」
「村で革製品を扱っているのは俺だけなんだ。値段もはずむ。どうだろうか。」
「いえ、今からお店にうかがおうと…」
男性の勢いにどんどんしりすぼみになっていく。
「それはよかった。他の骨の素材も買取をやっているんだ。うちは革製品だけど、他へ買い付けに行くときに取引の材料としてもいいんだ。」
「あっ、骨はまだ宿に」
慌てた様子で言葉を返す。まさか他の素材も一括でできるとは思いもよらなかったからである。
「店が近いとはいえ大変だろう。今荷車を持ってくるから待ってな。」
そういって男性はお店のほうへ駆けて行ってしまった。
一人取り残されたサトミはただ待つばかりである。
少しすると男性は荷車を引いてやってきた。
「待たせたな。」
「いえ。」
そのまま一緒に宿へ向かい、骨を荷車へ積み込むのだった。




