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翌朝、昨日の疲れを引きずりながら目を覚ます。
朝ごはんのためには早起きも頑張る、食い意地の張った根性である。
軽く身支度を整え、部屋を出る。
厨房からは食器の音がした。
「おはよう。今日は私特性のパンだよ。席で待っててね。」
そう言ってイーリャは厨房から少し顔をのぞかせていたが、せわしなく厨房の中へ行ってしまう。
昨日と同じ席が空いていたため、その席に座る。
窓から見える景色は時間を感じさせないのどかな様子だった。
「おまたせ、クラの実のパンと卵スープね。」
「ありがとうございます」
目の前に置かれた湯気の立つ朝食によだれが出る。
まずはスープからとスプーンを持つ。
中には細かい野菜も少し入っている卵スープであった。
少しスープにとろみがあり、卵は輝いて見えた。
口に入れつと鳥の出汁がきいた味とふんわりした卵が口の中に入り、美味しかった。
次に目を付けたのがクラの実のパンである。
パンを持つと少し熱いくらいだった。
まずは半分にパンをちぎる。
パンの中に閉じ込められていたものが溢れるように湯気があがる。
一口かじるとクラの実の香ばしさが口の中にほのかに広がる。
パンは少し甘く、クラの実とのコントラストが素晴らしい。
自然と口元の口角は上がっていた。
夢中になって食べていると、いつの間にか目の前の朝食はなくなっていた。
イーリャに声を掛けたらもう少しもらえるだろうかと思案する。
声をかけるか悩み、視線を空の食器と厨房の間をせわしなく動かす。
「はははっ、おかわりするかい」
その様子をイーリャに見られていたらしく、笑われてしまった。
「パンとスープ、両方あるよ」
その言葉に目が輝く。
「パっ、パンをください。」
「ふふふっ、そんなに気に入ってもらえると嬉しいね。待っててね。」
イーリャは厨房へ行き、パンを持って戻ってくる。
「はいよ。おまけにバターもあげる。」
「ありがとうございます。」
もう目はパンに釘付けだった。
「ごゆっくり。」
イーリャはサトミの様子に気分よく笑いながら厨房へ戻っていった。
パンに今度はバター付きである。
パンをちぎり、バターをつけて食べていく。
バターの味が口に広がり、後からクラの実の味が追いかけてくる。
幸せな溜息がこぼれる。
それから黙々と食べ進め、お腹いっぱいになった。
その後部屋に戻り、ターダ・ベイの素材とお肉を売る準備に取り掛かった。
まだ朝早く、お店が開くであろう時間までゆっくりと進める。
お肉は傷みやすく今日中には売ってしまいたいが、量がある。
まずは一塊だけ持ち、宿を出る。
地図を広げ、今度は慎重に目的の肉屋を目指す。
肉屋に着くと、筋肉質な男性がいた。
あまりの迫力に気圧されながらも、お金のために一回深呼吸をして向かう。
「す、すみません。」
「何だ。」
「ターダ・ベイのお肉なんですが、買取ってやってますか。」
「・・・」
「・・・」
しばらくサトミと男性は目を合わせた状態で固まる。
男性は驚きで固まり、サトミはへっぴり腰になりながらも一歩後ずさり恐怖で目をそらせずにいた。
異様な光景である。
「ターダ・ベイって言ったか。」
「・・・きゃい。」
噛んだ。
「見せてくれ。」
噛んだことには触れず、または驚きのあまり気づかなかったともいうが、男性は買取の意思を見せてくれて少し安心する。
「これです。」
「少しだけ切って食べてみてもいいか。値段はそれから決める。」
「わかりました。」
お肉を売りに出すときによくある流れだ。
この流れの時には腕のいい人が当たることが多い。
男性は少しだけ切り、お肉に火を通すため店の奥に姿を消す。
そんなに時間がかからないうちに戻ってきたが、様子が少し興奮しているようだった。
目が先ほどより大きく見えるのは気のせいだろうか。
「本当にターダ・ベイなんだな。畑を荒らしていたやつじゃないのか。よく狩ったな。相当強いはずだぞ。これで村の畑が安全になる。よかったよかったよ。これは村長に伝えに行かないとな。あと畑のやつらもか、これから忙しくなるな。」
「あ。あの・・・」
「あぁ、すまない。思わずな。」
「値段っていくらになりますか。」
「そうだな、20ルンってところか。どうだ。」
「それでお願いします。」
「おうよ。」
「まだ宿に一頭分のお肉があるんですが、その買取もお願いしたいんです。できますか。」
「ターダ・ベイ一頭分だったらうちだけじゃ金が足りないな。他の肉屋に声かけるから宿へ向かうよ。こんなにいい肉だ。運ぶところ手伝ってやる。」
「ありがとうございます。助かります。」
そうして村中の肉屋にあっという間に話は広がり、最終的にターダ・ベイの肉の競りが始まったのだった。
「疲れた。」
お風呂を済ませ、ベッドに転がる。
あんなに盛り上がってしまうとは予想外であった。
骨や皮なども売りに出すはずが、そんな時間は無くなってしまっていた。
「また明日かな。」
楽しかったが、もっと穏やかに明日は過ごせるよう祈りながら眠りについた。




