武尊編 1 雷の衝撃
昇降口で高橋とばったり会った。
「モモちゃん今帰り?」
「うん。高橋も?」
「そ。ちょうど良かった、腹減っちゃってさー、なんか食べに行かない?」
「え、いいけど」
「この前できたハンバーガーショップどう? オシャレなお店だから、一人だと入る勇気出なくって」
「分かる! オシャレすぎると気が引けちゃうよね!」
二人は話しながらお店へ向かった。
川沿いの通り、オシャレな雰囲気のハンバーガーショップが見えた。
「あった!」
「どれにする? 迷う〜」
武尊は川沿いを歩いていた。橘家に向かう途中だ。前方にはしゃいでいる高校生のカップルがいる。
楽しそうだなぁ。
ほんわかした気持ちでなんとなく見ていると、女の子の横顔に見覚えがある事に気付いた。
あれ?
「高橋決まった? 私これにする!」
「モモちゃん早いって、もう少し待ってて」
モモちゃんじゃん!
武尊は雷に打たれたような、頭をどこかにぶつけたかのような衝撃が走った。そして、そこから動けないまま、前方のカップルはハンバーガー店へと入って行った。
そこから、どうやって橘家へ来たのか覚えていない。心ここに在らずである。
「武尊、どうした?」
縁側に座っている武尊に、帰ってきたカイが話しかける。
「カイ、おっす〜」
弱々しく手を挙げる武尊。カイが隣に腰掛ける。
「俺、自分でびっくりしてる。こんなに気分が落ち込むなんて……」
「何かあったのか?」
「本当に女々しいんだけど、モモちゃんが男の子と仲良くハンバーガー店にいるの見ちゃってさ。すごく仲良さそうで」
遠くを見る武尊。
カイは苦笑する。
「わかりやすいな、武尊は。それ、ただの友達かもしれないよ?」
「そうだけど、そうじゃないかも……」
「確かめてみればいいだろ?」
その夜、スマホを見て考え込む武尊。かれこれ三十分は経っている。
そんな事言われても、何をどう聞いたらいいんだ?
あれは誰ですか? 彼氏と歩いてたよね?
何だか違う気がする。
モモと交換した狐の面を見る。
これを見れば元気になるはずなのに、今日はむしろ心を締め付けられる。
はぁ。いつから好きになってたんだろ?
武尊はスマホを置いて、布団に潜った。
◇
高橋とモモが、昨日のハンバーガーショップについて話している。
「本当大きくてさ、ソラも絶対行った方がいいよ!」
「びっくりしたよなぁ。小腹用じゃないよ、アレは!」
「いいね、今度行ってみるよ」
言外にデートで行くことが伝わってくる。じっとソラを見るモモ。
その時、予鈴が鳴った。皆んな席に戻りはじめる。
モモが小声で話す。
「ソラは、カイさんのどこが好きになったの?」
「え!」
「おはよう。席につけ〜」
先生が教室へ入ってきた。話は中断される。
モモなんで今そんなこと聞くのー!
どこが好きかなんて、沢山あって決められないよ。
ソラは顔が赤くなっているのを気付かれないように、教科書で隠すのであった。
ソラとモモは向かい合ってお昼中である。
「武尊さんから連絡来た。なんだろ?」
スマホを見るモモ。
メッセージには『土曜日会えない?』とある。内心ドキッとしたが、違うと心の中で否定する。
「武尊さんなんだって?」
「いや、土曜日に会うことになった」
「おお! なんで、デート?」
「そんな訳ないじゃん!」
そんな事を言いながら、モモはどこか嬉しそうだ。ソラは、うまくいけばいいなぁ……とこっそり思うのであった。
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