46 惚気
月曜日のお昼時間、ソラとモモは昨日のことを話していた。主にモモがだが。
「武尊さんの狐面がすごく上手でね! 生きてるみたいなの!」
モモが大興奮している。
武尊さんは狐の子孫だし、きっとお面に馴染みがあるんだろうな……
「そうなんだね!」
ソラが平常心で答える。
「びっくりしないの? あの、いつも軽い武尊さんがだよ?」
「まぁ。武尊さんってあのキャラ作ってるのかなって時々思うんだ」
ソラがボソッと話す。
「……ソラって武尊さんのこと、結構知ってる?」
モモが怪訝な表情をしている。
「カイさんの友達だから、知ってる事もある」
言えないけど。
「ふぅーん?」
あれ? 怒ってる?
「モモ?」
声をかけるが、モモは立ち上がる。
「私、パン買ってくる!」
そう言うと教室を出て行った。
どうしたんだろう? 私何か怒らせるような事言ったかな?
考えてもわからない。来たら聞いてみよう。
ソラは自分のお弁当を食べ始めた。
モモは無性に腹が立って、足早に進んでいた。
ソラってば、私のが武尊さんと二人で出かけてるし、知ってるんだから!
実は鋭い所とか、嬉しい時のはにかんだ笑顔とか、お面塗る時の繊細な筆使いとか……
気付けば購買ではなく、中庭に来ていた。考えずに歩きすぎた。そして、ふと気付く
あれ?
なんで私こんなにムキになってるの?
自分の行動の意味が分からなくて、立ち止まるモモ。もしかして、私武尊さんのこと大分意識してる?
首を振るモモ。
違う違う! 友達としてだし、好きとかじゃない!
自販機でコーラを買う。一気に飲んだ。
「ぷはーーっ!」
頭をスッキリさせて教室へと戻るのであった。
◇
カイと武尊は、食堂で牛丼ならぬ豚丼を食べていた。
「なぁカイ、見てみて!」
不意に見せてきた写真は、ピンクの狐面。
「なんだそのかわいい狐面?」
「モモちゃんが作ったんだけど、もうツボでさ。見ると笑っちゃうんだよ!」
「モモちゃん?」
カイが聞き直す。
「うん、昨日一緒に美術館行ってさ……」
楽しそうに話す武尊。
「武尊さ、絶対モモちゃんの事好きでしょ?」
カイが食べながら確認する。
「それはないって!」
「じゃあ、モモちゃんに彼氏できたらどう思う?」
ちょっと意地悪な質問をしてみる。
「モモちゃんに彼氏? ありえないって!」
武尊は手で罰を作る。
「ありえないの?」
本当にそうなったらどうするんだか。
カイは少し心配になった。
◇
今日はバイトがある。
ウキウキしながらお店へと向かう。
お昼、教室へ戻ってきたモモは、何故かパンではなくコーラを持っていた。
「怒ってた?」
ソラが聞くと、
「ごめん、私の気の迷いというか……忘れて!」
と。
なんだったんだろ?
お店に着く、
「お疲れ様です」
「ソラちゃんお疲れ」
「ソラ〜」
カイさんとミーちゃんが待ち受けていた。
カイは、床でゴロゴロしているミーちゃんを撫でている。
「ミーちゃん、いらっしゃい。エプロン付けてきます」
「うん」
優しく微笑むカイ。
「お前達、何か雰囲気変わったな」
ミーちゃんがゴロゴロしながら、カイに話しかける。
「ミーちゃん分かる?」
カイが嬉しそうに笑う。
ソラが戻ってくる。
「何話してるんですか?」
「俺とソラちゃんの話」
「ええ!」
カイが立ち上がり、ソラの頭を撫でる。ソラは恥ずかしくなった。
「カイさん、びっくりします」
「ごめん」
言いながらまた撫でる。
ミーちゃんは興味がないのか、寝ていた。
退勤の時間。
お店には二人以外誰もいない。
「お疲れ様」
「お疲れ様でした」
しばらく見つめ合う二人。
「ソラちゃん、ぎゅってしていい?」
ソラは息をのむ。
「……はい」
カイの大きい手がソラを包み込む。お互いの鼓動のドキドキが伝わる。ソラもカイをぎゅっとする。
安心する。
身体を離す。
「ソラちゃん、ほっぺにキスしていい?」
カイがソラに訊ねる。
「はっ、はい……」
唇が頬に触れる。ソラはもう真っ赤である。
「やばい、かわいい」
カイがまたソラを抱きしめた。
「カイさん、あの」
「ごめん。気をつけて帰ってね」
頭をポンポンする。
「はい」
二人は手を振って別れた。
はぁーー。
カイが盛大にため息をついた。
着信音が鳴る。武尊だ。
「もしもし?」
気怠げに出るカイ。
「もしもし、なんだ? 寝てた?」
「武尊、彼女が可愛すぎて苦しい」
「は? 惚気かよー!」
耳元で武尊の声が響いた。
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