武尊編 2 スーツ
翌日の夕方、武尊は橘家でしっかりとスーツを着た姿でウロウロ歩き回っていた。
ノープランのまま、モモに勢いでメッセージを送ってしまった。
会ってどうする?
頭の中で考えがループしている。今日は橘グループでの食事会がある。武尊も出席する事になっている。
しっかりしなければ……
「武尊行くぞー」「大丈夫?」
カイと玲央が声をかける。
「大丈夫! 大丈夫!」
空元気の武尊が声を上げた。
結果、武尊はただ食事をして終わった。いつもなら周りを見て、相手の考えを察して、立ち居振る舞いを計算して……無理であった。
頭の中に占めている問題が解決しない限り、他のことは考えられないらしい。
皆と別れ、今日は自宅のアパートに戻ろうと歩き出す。一人になりたい気分だ。
コンビニでお酒でも買おう。酔わないけど。
入り口で、人とぶつかりそうになる。ちゃんと前を見ていなかった。
「すみません!」
「こちらこそ……モモちゃん?」
目の前にいたのは、頭の中を占めている張本人。
「武尊さん! スーツなんて、珍しい!」
モモは私服である。
「こんな時間にどうしたの?」
「えと、近所なので、ちょっと甘い物食べたくなって買いに来ました」
笑うモモ。自分の気持ちに気付いた武尊は、その笑顔で心臓を鷲掴みにされる。
「武尊さんは?」
「俺はちょっと仕事があって、一息つきたいなと……」
お互い買い物をして、お店を出る。
モモはチョコを数種類。武尊は日本酒を何本か。
「武尊さんてお酒飲むんですね?」
「うん。日本酒好きなんだ」
「あの、土曜日、楽しみにしてます」
「俺も、モモちゃんと遊ぶの楽しみ」
「おやすみなさい」
「おやすみ」
モモが歩いていく。
「モモちゃん、やっぱ送るよ」
武尊が足早にモモの隣に並ぶ。
「そんな、仕事終わりに悪いですよ」
「暗いし、心配だから」
「……ありがとうございます」
モモは俯く。武尊に女の子扱いされた事が嬉しい。
「土曜日、どこか行きたい所ある?」
「そうですね、秋っぽい場所とか!」
「秋っぽい……紅葉狩り?」
「それいいですね!」
ウジウジ悩んでいた事が嘘のように、武尊は今が楽しかった。
「モモちゃんといると楽しいよ」
思わず本音が出るほどに。
「え!」
モモは驚きで口をパクパクしている。
「じゃ、こんどこそおやすみ」
「おやすみなさい」
手を振って別れる。
武尊は、バーガーショップの事も忘れ、足取りも軽く自宅へと戻るのであった。
モモは玄関で座り込んでいた。
武尊さんのスーツ姿ヤバい!
かっこよかった……
しかも送ってくれるなんて。
モモは胸がいっぱいで、買ってきたチョコは食べられなかった。
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