43 恋模様
高校の教室。
「おはよー」
「……」
ソラは朝からボーッとしていた。モモの挨拶も耳に入らない。
「ソラ? 大丈夫?」
「あ、モモ。おはよう」
目がうつろである。
「寝てないの?」
心配するモモ。
「うん、少しは寝たと思うんだけど」
「何かあったの?」
「えっと」
カイの言葉を思い出して赤面するソラ。
カイさんのあんな真剣な顔、初めて見た……
「もぅ、全然大丈夫じゃないね。保健室行って寝て来たら?」
モモに促され、トボトボと保健室へ向かうソラ。
「失礼します」
保健室のドアを開けると、ヤマトがいた。
「ソラちゃん、どうしたの?」
「ちょっと寝させてもらおうと思って、ヤマト君はどうしたの?」
「俺、部活で転んで擦り傷。先生、多分すぐ来ると思う」
「そっか……」
空いてるベッドに座るソラ。
「なんか元気ないね?」
ヤマトがソラの隣に立つ。
「そうかな?」
頬に手を当てる。暑いような気がする……
ヤマトがソラのオデコに触れる。
「暑いよ? 熱あるんじゃない?」
「へ?」
その時、保健室のドアが開く。
「先生、絆創膏ちょうだい……」
そこにはアカリが立っていた。こちらを見て目を見開いている。
「アカリ?」
ヤマトが声をかけると、アカリは廊下へ飛び出して行った。
「アカリさん、追いかけた方がいいんじゃない?」
ソラがヤマトへ伝える。
だって、多分アカリさんは……
「俺が?」
ヤマトは不審な顔をする。
「うん」
ソラがヤマトを見る。
「なんで?」
「だって、アカリさんヤマト君の事気になってるのかなって」
ヤマトはソラをじっと見る。意を決した様に話す。
「俺が今好きなのはソラちゃんだから」
「……え、だって友達だって」
戸惑うソラ。
「ソラちゃんが俺の事、何とも思ってないって分かってるけどさ」
少し寂しそうに笑うヤマト。
「ごめんなさい。私、他に好きな人が……」
俯くソラ。
「分かってるよ。あー断られちゃった。もう、ちゃんと寝るんだよ?」
ヤマトは、ソラのオデコにキスをすると出て行った。
「!」
顔が火照っているのが分かる。
ヤマト君、本気だったんだ……
からかわれてると思ってた。でも、私はその気持ちに応えられない。
その時ドアが開く。
「あら、ごめんね待ってた?」
先生が帰ってきた。
ソラはベッドに横になった。
◇
ちょっと寝たら元気になった。
教室へ入ると、席にいたアカリと目が合う。アカリはすぐに目を逸らす。
「アカリさん、ちょっといい?」
声をかけると、少し驚いた顔でソラを見た。
ソラはアカリを廊下に連れ出した。人のいない方へと進む。
「なに?」
アカリはソラにつっけんどんな態度を取る。
「あの、私ヤマト君とは何もないから」
「は? 保健室でイチャイチャしてたくせに?」
やはりそう見えていたらしい。
「告白されたけど断ったの。アカリさんヤマト君のこと好きなんでしょ?」
「なんであんたにそんな事!」
アカリはソラを睨む。
「私には関係無いけど、誤解されたままなのは嫌だから。じゃあ、それだけ」
そう言うと、ソラは歩き出す。
アカリは下を向いたまま、しばらく動かなかった。
◇
放課後、バイト先のカフェへ到着したソラ。
どうしよう、緊張してきた……
ドアの前で深呼吸する。心を落ち着かせる。
よしっ!
目の前のドアがいきなり開く。
「あれ、ソラちゃん!」
カイさんが顔を出した。一気に体温が上がる。心を落ち着かせたのは無意味だったようだ。
「中々入って来ないから、何か困ってる人かと思って……ごめん、何か邪魔しちゃった?」
カイが少し気まずそうに聞く。
ソラはカフェへ入る。
「いえ、その、あの……」
しどろもどろで言葉にならないソラ。
深呼吸してたなんて、恥ずかしくて言えない。
「じゃあ仕事しよっかー?」
カイさんが察して、助け舟を出してくれる。本当に優しい。
「はい」
少し気まずい。ミーちゃんは、こんな日に限って来てくれない。そんなこんなで、退勤の時間である。
「お疲れ様。気をつけてね」
「はい」
外へ出るソラ。
「……」
カイはしゃがみ込み、大きなため息を着いた。
「はぁあ」
今日は緊張していて疲れた。ソラの気持ちを聞きたいけど、聞くのが怖い。
ドアが開く音がした。振りむくとソラが立っていた。
「ソラちゃん……?」
ソラはカイの隣にしゃがみこむ。
「……私も好きです」
小さい声で呟くソラ。俯いている顔が赤くなっている。
カイは驚きと嬉しさで言葉に詰まる。ソラの横顔を見つめた。
「本当?」
「本当です」
カイが床に座り込む。
「じゃあ、俺、ソラちゃんの初彼氏ってことだよね?」
カイが嬉しそうに笑った。
「カイさんが、私の彼氏……」
ソラはその事実に、また顔が火照るのが分かった。
「……ソラちゃん、赤くなっててかわいい」
「え! かわっ?」
カイはソラの右手を優しく掴むと、ぎゅっと握る。ソラは赤い顔で、目がうるうるしている。
カイは楽しそうに笑っていた。ソラは高鳴る心臓を感じていた。
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