38 将来
「どうだった? 昨日の武尊さんとのデート」
ソラとモモは学校でこそこそ話している。
「普通に楽しかった! 発見があったりして。ソラはどうだったの?」
「楽しかったんだね! 私も楽しかった」
二人は笑い合う。
「相手によって違うんだね。よく分かった」
モモが下を向いている。
「焦らなくても、モモならきっと大丈夫だよ。すぐ人と仲良くなれるんだから」
ソラが伝える。
「そかねー?」
モモはソラを見上げた。
「そうだよ。武尊さんは? そういう感情ないの?」
「いや、考えた事ないかも……私の理想は、無口で頼りになるイケメンだから!」
鼻息荒く理想を語るモモ。
「無口な人? 絶対合わなそうだけど……」
ソラは少し心配になるのだった。
ーーーー
大学の長い夏休みにも終わりが来た。
カイと武尊は食堂で向かい合っていた。
「昨日はやってくれたな? 最初からソラちゃんと出掛けようと思ってたでしょ!」
武尊がカイを睨む。
「まぁね? 武尊はどこ行ったの?」
カイが悪びれもなく訊ねる。
「美術館」
「へぇ! 意外!」
「いや、それが凄いよくてさ! また行きたいって思っちゃったよ」
思い出しながら楽しく話す武尊に、驚くカイ。
「……武尊さ、モモちゃんと合ってるんじゃない?」
「え?」
思わぬ指摘に止まる。
「いや、楽しそうだと思って。まぁ、好きにしたらいいんだけど」
カフェオレを飲み干すカイ。
武尊は正直、恋愛に興味がない。今までも来る者拒まず、去る者追わずでやってきた。不思議な力があるが故なのか……本人の性格か。
「モモちゃんは少し心配ではあるけど、そういう感情はないなぁ」
武尊はモモを思い出しながら答える。
心配ねぇ。
俺も最初はほっとけないって思ってたな……
「ふーん。そろそろ授業行くか」
カイと武尊は立ち上がった。
◇
気づけばすっかり秋めいてきた。
もうすぐ中秋の名月だ。
「狐のお祭りがあるんだよー! 行きたくないよー!」
武尊が橘家の畳の上でゴロゴロしている。
「なんで?」
カイが聞く。
「ちゃんとしなきゃいけないんだよー! 今年は俺が主役でさ、出番が多いんだよー!」
「武尊はやれば出来るんだから、頑張って?」
玲央が優しく励ましている。
「狐の長って厳しいんだ。橘家の会長達と大違いだよ」
武尊はため息を吐く。
「カイ、俺達もそろそろ準備しよう」
玲央が立ち上がる。
「え? 何処か行くの?」
武尊が寝転がったまま訊ねる。
「橘家の上半期お疲れパーティーだよ。結構なお偉いさんも来るから、僕達もちゃんとしないとね」
玲央が伸びをする。
「はぁそうだな」
カイが立ち上がる。
「それは大変だな。頑張れよ」
「お前もな」
カイに返される。
武尊は寝転がったまま激励するのであった。
ーーーー
スーツ姿の玲央とカイの二人は、まさしく目の保養だ。その場の空気がきれいに感じる。
会場へ入るや注目の的である。
「若き経営者だね」「お兄さんはもう仕事を引き継いでるらしい」「二人ともカッコいいわね〜」
ホテルでのパーティーは大勢の人が集まっている。橘家代表として、父親が挨拶し、途中で玲央が呼ばれる。
「紹介します。私の息子、橘玲央です。今経営している一部を引き継いでいきます」
「橘玲央です。皆様には……」
父親と兄が話しているのを見ているカイ。
俺もああやって引き継いでいくのか。
今までは漠然としていた将来が、具体的な未来となっていく。
「兄貴、お疲れ」
戻った玲央へ声をかける。
「ありがとう」
微笑む玲央。
パーティーは滞りなく終わった。
帰り道、外に出ると月が光り輝いていた。満月まであと少しの月だ。
ソラちゃんに見せたいな。
カイは、ふとそんな事を思うのであった。
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