36 無茶振り
武尊は面食らっていた。
今までのどの子とも違う……
てっきり、自分にときめいたのかと思ったが、そういう訳では無いらしく、
「私に恋愛を教えてくれて」って、一体何をどうすればいいのか。
とりあえず、連絡先を交換したが、もう会うことはないと思っていた。が、
『武尊さん暇な時に会ってくれませんか?』
と、いきなりのメッセージが来た。
武尊はスマホを睨む。
そしてカイの部屋をノックする。
「カイ〜、助けてくれ〜」
◇
お昼休み、モモからデートの顛末を聞いたソラ。
「武尊さんに会えてよかったぁ。色々知ってそうだし、教えてもらうんだ」
モモはデートの失敗は全く忘れているようだ。
「それは良かったけど、具体的に何を教えてもらうの?」
ソラは疑問に思う。
「私が知りたいのは、好かれるにはどうすればいいか、デートは何を着ていけばいいか、どんな人と付き合うのがいいか……」
指を折りながら話し始めるモモ。
「まってまって!」
ソラが止める。
「どうしたの?」
「それって、相手ありきの話じゃないの?」
「相手?」
モモはピンときていない。
「好きな人がいてからの話じゃない? 好かれるにはって、誰でもいいわけじゃないでしょ?」
ソラはヤマトを思い出す。一方的に言い寄られるのはしんどい。
「まぁ、そうだけど。そうなのか?」
モモは考える。
「デートした相手はどうだったの?」
ソラが訊ねる。
「なんか楽しくなくて、合わないかなって思った」
「そっか。それはしょうがないね」
頷くソラ。
「なんか、ソラが大人に見える……何かあった?」
モモはソラを問い詰める。
鋭いなぁ
ソラは苦笑して、小さな声で白状する。
「私、カイさんのこと好きって気付いたの」
「え!」
モモが目を見開いている。
「でも、バイトは楽しいし、気まずくなるのもやだから心に閉まっとく」
「いや! そんな、勿体無い!」
モモが慌てる。
「勿体無い?」
ソラはポカンである。
「折角好きになったのに、しまわないでよ!」
モモはなんだか鼻息荒い。
「そうかな……」
俯くソラ。
「まぁ、無理にとは言わないけど」
「うん。ありがと」
ソラは優しく微笑んだ。
「私も頑張る!」
モモは何だか気合いが入ったのだった。
◇
武尊とモモは向かい合って座っていた。
ここは川沿いのカフェ。
隣の席には、カイとソラが座っている。
なぜこんなにデートっぽい場所に?
「お待たせしました〜」
とても豪華でかわいい苺パフェが登場した。
「わぁ、美味しそう!」
「すごいパフェ!」
はしゃぐ三人。武尊はそれをじっと見ている。
モモと二人で会っても、どうしたらいいか分からない武尊は、カイに一緒に行ってくれとお願いした。
カイが、じゃあソラも誘うという話になり、行きたかった店があるというので任せてみた所、こんなオシャレな場所になったわけである。
「武尊はコーヒーだけ?」
カイが訊ねる。
「まぁね。そんな大きなパフェ食べられないし……そもそも甘い物得意じゃない」
「そうだったっけ?」
気にしないカイはモグモグ食べ始めた。
「美味しいですね! これは全部いけちゃいます」
ソラも幸せそうに食べている。
「いちご甘い〜」
モモも美味しそうに食べ始めた。
「モモちゃん、あのさ……俺何したらいいのかな?」
武尊が肘をついてモモを見る。
「好きな人に好かれるには、どうしたらいいんでしょう?」
いきなりの質問に、武尊は面食らう。
「モモちゃん好きな人いるの?」
「いないです!」
「ええぇ〜」
空回りしている気がする。
「やる気なのはいいんだけど、先に好きな人見つけないと!」
ソラはモモの隣で武尊の話を聞いている。ごもっともな意見である。
「好きな人ってどうやって見つけるんでしょう?」
モモが首を傾ける。
「それは俺もなんとも……」
武尊も首を傾ける。
「武尊さん好きな人いないんですか?」
モモが訊ねる。
「いない」
「今までいた事は?」
「んー……ないかも」
「おいおい、教えられる事ないじゃん?」
カイが突っ込んでいる。
「そうなんだよー。俺チャラく見られるけど、意外と真面目だから……」
武尊が珍しく困っている。
「ふふふ」
ソラが堪えきれずに吹き出す。
「ちょっとソラちゃん、笑わないで!」
武尊がソラを見る。
「じゃあ、二人でデートしてみるとかどう?」
カイが提案する。
「え?」「え!」
モモと武尊は同時に驚く。
「せっかく待ち合わせしたんだし。俺もソラちゃんとデートしたいし?」
カイがソラを見て楽しそうに笑う。
ソラはカイを見つめる。心臓が跳ねた。
武尊はカイを睨む。
コイツ、最初からそのつもりだったな。
モモはソラを応援したい。武尊とのデートは、まぁ何とかなるだろう。
「いいですよ、私は」
そう答えるモモ。
それ言われたら断れないじゃないか……
「分かったよ。じゃあ、モモちゃん宜しく」
渋々提案を受け入れる武尊であった。
「ソラちゃんどこか行きたい所ある?」
カイが訊ねる。
「私は……」
「じゃあね」
ソラとカイは早速行き先を決めたようだ。
「モモちゃんどこかある?」
「いや、そう言われると……」
モモはスマホで何やら検索している。
「武尊さん、ここどうですか?」
「美術館か。いいね、デートっぽい!」
二人は美術館へ向かうことにした。
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