34 発見
カイはまだ夏休みである。大学の夏休みは長い。
今日は朝からお店に入り浸っている。
ミーちゃんが寝ているのと、もう一匹の猫が丸くなっている。
カイは二匹を撫でる。
カイが子どもの時、橘家にも猫がいた。真っ黒の猫で、カイによく懐いていた。
大人に混ざる機会が多く、子どもらしくいられる期間が短かったカイ。
しかし、黒猫の前ではただの子どもだった。
その猫もいなくなり、外面を磨いてきた。それを見抜かれた事も一度もなかった。ソラに会うまでは。
自分の気持ちに気付いてから、ソラに対して大分オープンになっている。隠しているのが苦しい。
「もういいかなぁ?」
つい口に出ていた。
猫達はそんなカイの事などつゆ知らず、気持ちよさそうに寝息を立てていた。
◇
武尊は広島の蔵元、酒造をいくつも渡り歩き、ついにあの時飲んだ日本酒を見つけた。
「やっと見つけた!」
感無量である。
狸会議の時はグラスに入っていて、どれがどの銘柄か分からなかったのだ。
試飲し、これだと思った時は思わず泣きそうになった。
それは最近発売になったばかり、果物の香りと甘めの口当たり。
日本酒を持って、足取り軽く歩いていると、前方に下を向いてこちらへ向かってくるソラを見つけた。
「ソラちゃん!」
手を振る武尊。
気付いたソラは顔を上げる。
「武尊さん、何だか嬉しそうですね?」
「わかる? ついに見つけたんだよー。飲みたかった日本酒を」
「それは、おめでとうございます」
微笑むソラ。
「今からバイト? 俺もちょっと寄ってこうかな」
二人でお店へ入る。
「おぉ?」
カイが猫を撫でながらこちらを振り返る。
「そこで会ってさ、見てよカイー! 見つけたんだ! 飲もう?」
武尊は日本酒をカウンターへ置く。
「仕事中に飲めないだろ?」
苦笑するカイ。
「ちょっとだけ!」
「はいはい」
小さいグラスを渡すカイ。
「カンパーイ!」
武尊は美味しそうに飲み干す。
「お前、日本酒そんな飲み方する奴いないぞ?」
カイが呆れている。
「カイも少し飲みなよ? 美味しいから」
「んー、じゃあちょっとだけ……」
カイはほんの少しだけ飲む。
「あ、飲みやすいね」
大人二人を横目に、ソラはエプロンを付けて丸くなっている猫を見つめる。
この子は初めてかな?
「それじゃあ、俺帰る! ソラちゃんまたね」
武尊は嬉しそうに去っていった。
「武尊さん、お酒見つかってよかったですね?」
ソラがカイを見る。
「そーだね」
カイは少し顔が赤い。
「カイさん、顔赤いですよ? 大丈夫ですか」
「大丈夫。俺アルコール弱くって、すぐ赤くなるの……でも、少ししか飲んでないから大丈夫」
「カイさんフワフワしてて、かわいいです」
ソラが笑う。
カイがじっとソラを見る。
「ソラちゃん? かわいいって言われても嬉しくない」
「すみません」
ニヤッとしてしまうソラ。
「何笑ってるの?」
カイが近付く。
「えへへ」
笑うソラ。
「全然悪いと思ってないでしょ?」
カイの手がソラの頭に乗せられ、思い切り撫でられる。
「あはは、髪の毛ぐしゃぐしゃ!」
ソラが大笑いしている。
今度はそっと撫でられる。
見上げるソラ。
「お仕置き」
楽しそうに笑うカイ。
やばい……
「ほら、お仕事するよ!」
カイがカウンター裏へ歩いて行く。
ソラは煩い心臓を抑える。
私、カイさんが好きなんだ。
笑顔を見て、唐突に気付いてしまった。
読んでいただき、ありがとうございます。
感想、反応いただけると大変嬉しいです。
評価、レビュー、ブックマークお願いします!




