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不思議なカフェ  作者: 紙絵


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33/50

32 お土産

 ミーちゃんはお店のドアを開けようとするが、閉まっている。


 昨日も閉まっていた。

 そういえば、狸がどーとか話してたっけ?

 この場所でお昼寝すると、ぐっすり眠れるのだ。故に、ほぼ毎日来る事を日課としている。

 回れ右して帰ろうとした時、頭上から声が降ってきた。


「ミーちゃん、遅くなってごめん」


 鍵を開ける音。ドアが開く。

「どうぞ、おくつろぎください」


 ミーちゃんは中に飛び込む。

「カイ遅いー」

「ごめんごめん!」

 カイは寝癖が付いている。寝坊したらしい。


「水飲む?」

「もらう。おやつもある?」

 おやつをペロペロしていると、ドアが開いた。


「お疲れ様です」

 ソラが顔を出す。

「お疲れ〜」

 カイが返事をする。二人は目が合うと微笑む。

 以前よりも二人の空気が柔らかくなった。


「ミーちゃん、おはよう」

「おはよー」


「これ、愛媛のお土産です」

 ソラが紙袋をカウンターへ置く。

「ええ! ありがとう」

 中身は大福のようだ。白くて丸い。


「みかん大福です。カイさん好きそうだなって思って、私も食べてみたくて」


 丸ごとの蜜柑が大福の中に入っている。ボリューム満天である。


「俺は、みかんジュース買ってきた。美味しいよ」

 みかん尽くしになった机の上。

 甘酸っぱい香りがするような、しないような。


「狸会議はどうでしたか?」

「花火の写真うまく撮れてたね?」

「道後温泉すごい良かったよ」

「下灘駅ってところが……」

 二人は隣同士に座って仲良く話している。


 ミーちゃんはそんな声を心地良く聞きながら丸くなる。

 本人達は気付いているのか、いないのか。物理的な距離も、以前より近くなっているようだ。


「ミーちゃん寝ちゃいましたね」

「猫はよく寝るなぁ」

 少し静かになる空間。しかし黙っていても気まずくはない。


「ソラちゃん」「カイさん」

 お互いを呼ぶ声が重なる。

「あはは、同時」

 ソラが笑う。

「そうだね。ソラちゃん先どうぞ?」


「えと、大した事じゃないんですけど……花火、一緒に見たいなって思ったんです」

 カイが少し驚いてソラを見る。

「愛媛で、花火上がるの見てた時に。カイさんと見たかったなって」

 言いながら少し照れたようにソラが笑う。


 カイの心臓が跳ねる。


「俺も、道後温泉のライトアップされた綺麗な姿見た時に、ソラちゃんに見せたいって思ったよ」

 カイがソラを見て微笑む。

 その優しい微笑みに、ソラの心臓も跳ねる。


「えへへ。同じですね?」

「うん。でも、俺の方が……」


 コンコン!

 ノックの音にビクッとする。反射的に立ち上がるカイ。

「お疲れ様ーー」

 ドアが開く。


「武尊?」

「ソラちゃん、こんにちは! 愛媛でも会ったね」

 マイペースな武尊である。


「はい……こんにちは!」

「近くまで来たから、ちょっと寄ってみた。喉乾いたーー」


 武尊が机の向かいに座る。

 外は太陽が照り付けている。少しでも出歩けば汗ばむだろう。


「それ目的だろ」


 カイは落ち着かない心臓を抑えて、お茶の棚を物色し始める。

「ありがとう、カイ様」

 武尊は拝む仕草をしている。


 ミーちゃんが目を覚ました。武尊の膝へ飛び乗る。

「ミーちゃん久しぶり」

「武尊は相変わらずだね」


 なんだか友達のようだ。


「二人は知り合いなの?」

 ソラが疑問を口にする。


「まぁ、猫又と狐だからね」

 さらっと武尊が答える。


「猫又って、あの長生きの猫の妖怪?」

「妖怪なんて大したものじゃないよーー。少し長く生きてるだけの、ただの猫だよ」

 ミーちゃんが武尊にじゃれつきながら答える。


 やっぱり猫又だったんだ!


 今更の事実に納得するソラ。


「ミントティーだよ。暑いし涼しくなると思う」


 爽やかな味に、頭がはっきりする。


「生き返る!」

 武尊は一気に飲み干している。

「全部飲んじゃったんですか」


 ソラが驚く。

「喉乾いてたからね。カイおかわり」

 グラスを渡す武尊。


「はいはい」

 しぶしぶ立ち上がるカイ。

「武尊なんでこの辺にいたの?」

 おかわりを作りながら、カイが訊ねる。


「狸会議でさ、飲んだ日本酒でめっちゃ美味しいのがあって、それってコッチで売ってないかと思って探してた」


「へぇ、武尊さんてお酒好きなんですね」

 ソラが驚く。


「うん。味が好きなんだ。ソラちゃんも大人になったら一緒に飲もうね?」

 武尊がソラに笑いかける。


「ほら、おかわり」

 カイがソラと武尊の間に、アイスティを置く。


「こいつ酔わないから、絶対二人で飲むのダメ」

 カイがソラの隣に座りながら武尊を睨む。


「はいはい。おかわり、ありがと!」

 武尊はカイを見てニヤッと笑う。狐の血を引いているからだろうか、時々、狐っぽいなと思う。


「じゃあ、邪魔者はこれで退散するよ。ソラちゃんまたね」


「武尊、俺も帰る」

 ミーちゃんも外に出る。武尊は手を振って出て行った。


 突然嵐がさった。

「じゃあ、仕事しよっか」

「そうですね!」

 二人はエプロンを付けた。

読んでいただき、ありがとうございます。

感想、反応いただけると大変嬉しいです。

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