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不思議なカフェ  作者: 紙絵


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30 会議

 ソラは昨日の事を考えていた。まさかばったりカイさんに会うとは……自分の手をじっと見る。


 カイさん、なんで手を。もしかして、私のこと……いやいや、きっと転びそうで心配してくれただけだ。


「百面相でどうした?」

「ミツキ兄、なんでもない!」

 ソラは自分の顔を手で仰ぐ。

「昨日のヤツの事考えてただろ、あれは彼氏か?」

 隣に腰をおろすミツキ。

「違うよ! バイト先の人……」

「ほーなん? まぁいいけど、明日帰るだろ。どっか行きたい所とかない?」

「んー……あ、下灘駅行きたい。友達に写真撮ってきてって言われてた」

 モモの顔を思い出すソラ。好きなアイドルのPVに使われているらしい。

「あそこ有名だから、よっし、じゃ行こか。リク呼んでくる」



 下灘駅は、海の見える素朴で素敵な駅だった。様々なドラマやアニメに使われている駅だ。

「すごい、海がよく見える!」

「なんだか懐かしい気持ちになる……」

 はしゃぐ兄妹。一通り写真を撮り終え、帰りの電車を待つ。


「ミツキ兄元気ないね?」

 ソラが兄に耳打ちする。

「昨日祭りから帰ってから元気ないんだよ」

 ミツキはコソコソ話すソラ達にも気付かず、一人海を眺めている。


 昨日会った元カノの事だろうか。悲しそうなミツキの顔を思い出す。

 三人は来た電車に乗り込んだ。


 ミツキがスマホを取り出す。

「えっ」

「どうかした?」

 リクが心配そうにミツキを見る。

「えっと、いや、その。元カノから、話があるから会いたいって……なんやろ」

 困惑している様子のミツキ。

「今から?」

 リクが訊ねる。

「いや、明日……」

 ミツキは画面を見たまま動かない。


「今度は見栄張らないで、頑張って、ミツキ兄」

「見栄?」

 リクが聞き返す。

「わー! 何でもない!」

 ミツキが焦っている。


 車窓からは、穏やかな海が見えていた。


 ◇


 カイと武尊は老舗旅館にいた。

 有名なこの旅館は、県外や海外からのお客様が絶えない。そんな旅館も、今日は貸切である。


 大勢の人達が会場へ入っていく。一際大きな体のおじいさんが宴会場の上座に腰を下ろすと、一斉にお腹を叩く音


 ポン!


 人の姿のままでも、腹太鼓の音は狸である。宴会が始まる。

 カイは一通りの狸達に挨拶する。

「これはこれは、橘家の方ですか。ゆっくりしていってください」

「子狸を保護してくれたのはあなたですか! その節は、ありがとうございます」


 武尊は挨拶もそこそこに、酒を飲み始めている。

「カイ、そこの日本酒とって?」

「ほれ、あんまり飲みすぎるなよ?」

「ありがとう」


 狸達もお酒を飲みはじめた。どんどん騒がしくなっていく。カイはそっと宴会場を出た。

 途中で退席しても大丈夫だと、事前に武尊に聞いている。


 温泉でも入ろう。


 愛媛の温泉といえば、道後温泉だ。

 幸い近くである。カイは暗くなり始めた温泉街を一人歩いて行く。


 ーーーー


 カイは温泉に浸かっている。

 夏の温泉も、なかなか良いなぁ〜


 お風呂上がり、みかんジュースを飲みながら表に出る。やはり自分は、お酒よりもこっちの方が好きだ。

 三千年の歴史を誇る、道後温泉本館を改めて見上げる。ライトアップされていて、すごい重厚感である。


 思わず写真を撮る。

 カイはそれをソラに送ろうとして、やめた。

 昨日会ったばかりなのに、ウザいと思われたら嫌である。

 カイは今、ソラとの距離感をつかめずにいた。

 嫌がられてはいないと思う。

 風呂上がりの清々しい気持ちが少し泡立つ。


 スマホが震える。

「もしもしカイ? 今どこ?」

 武尊からだ。そういえば、ここに来ること言ってなかった。

「温泉入ってた。今から旅館帰るよ」

「分かった」


 またスマホが震えた。

 画面を見て、一瞬立ち止まる。

 ソラが送ってきたのは花火の写真。

 思わず口元が緩まるカイ。


 自分も今の写真を送ろう。


 足取り軽く、旅館へと一人戻るのだった。

読んでいただき、ありがとうございます。

感想、反応いただけると大変嬉しいです。

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