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火車はひらりと身をかわして最初に突進してきた一体を避ける。
方向転換してもう一度突進してきた百々目鬼だったが、火車は狙い通りという顔で真上に跳ぶ。
一体目は後から襲ってきた二体目の百々目鬼と正面衝突し、目を回した。
その隙に火車は空に向かって手を振り上げる。すると背後に控えていた燃える車輪が回転を始め、宙を滑って百々目鬼たちの頭上に現れた。
車輪は炎の勢いを増し、火車が上げた腕を振り下ろすのと同時に百々目鬼二体の頭に乗る。
「"煉獄車・輪"!」
不敵に口角を吊り上げた火車がそう叫ぶと、車輪の回転は激しくなり、派手な火炎と火花を散らして異獣どもの頭蓋を削り取っていく。
「にゃは、ぼくってば絶好調! いい火力だぜ!」
「相変わらず悪趣味な技だな。異獣相手とはいえ、オーバーキルはどうかと思うが!」
「戦いなんて血生臭いもんさ! そういう雷龍くんも、いつも通り豪快だねぇ!」
火車を叱責したヒビキの方は、両の腕を龍腕に変化させて百々目鬼と殴り合っている。
黄色のがっしりとした腕と、手先から伸びる赤く硬い爪で百々目鬼を圧倒していて、サンドバッグでも相手にしているような勢いだ。
火車はちらりと自分の車輪に潰されている百々目鬼たちを見る。すでに瀕死だ。炎が燃え移っているから、じきに消滅するだろう。
「さてさて、ぼくはもう飽きたし、こっからは観戦といこうかな」
車輪は異獣から離れ、回転を弱めて火車のすぐ近くに戻ってきた。
横に傾いて地面と並行に浮遊するそれが回り終えたのを確認すると、火車は車輪の上に飛び乗って座る。
車輪は火車を乗せたまま無回転で上昇し、ビルの三階くらいの高さで停止した。
「おい貴様、なに勝手に離脱している!」
「あとはきみたちだけでどーにかなるでしょ? それにさあ」
文句を飛ばしながらも電気を帯びた回し蹴りで二体同時にダウンさせるヒビキから視線は逸れて、火車の黄緑の眼はシブキと勇輝を捉える。
「あの子たちの戦いも、ちょっと見てみたいし」
シブキたちの戦闘スタイルは、火車のように奇抜なものではない。基礎と経験に基づいた、一見乱暴に見えるが堅実な攻めだ。
場数を多く踏んできたシブキの判断力と、経験こそ浅いものの足並みを一切乱さず相方に合わせる勇輝の適応力がなせるコンビネーション。特出した派手さこそないが、彼らの戦い方はなかなかに洗練されている。
火車の眼下、勇輝が姿勢を低くした状態から鎌を大振りし、百々目鬼二体の足を引っ掛けた。
一体が体制を崩した瞬間シブキが敵の懐に飛び込み、弱点である単眼に向けて最速の突きを繰り出す。
もう一体は転ぶ寸前で体勢を立て直し、仇を討たんと背後からシブキに襲い掛かろうとしたが、勇輝が鎌の石突を百々目鬼の横腹に押し込んで怯ませる。そのまま隙を与えず"射光線"で眼球を貫き、撃破した。
今ので六体目、全ての百々目鬼が消滅した。こちらの勝ちだ。
「いやあ、いいねえ! 鮮やかだよ、実に!」
頭上から聞こえてきた拍手と歓声に、戦いを終えたシブキは苦笑を浮かべる。
「余裕だなあ、アンタ……」
「そりゃあぼくは猫だもの! 常に余裕綽々、敵を上から見下げる猫ほど強いのさ」
「サボりの理由にはならんだろうが」




