表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【現代バディバトルファンタジー】Spla Brave   作者: 南河天狼
Chapter.3「鳴神探偵と李渦の主」
91/223

   12/13

「……アイツ帰すの、大変じゃありませんでした?」

「多少、な」

「あー……世話んなりました……」


 ヒビキの意味ありげな視線に、シブキは軽く頭を下げる。由紀のことだ、大方「シブキくんが帰ってくるまで待ってます!」とかなんとか駄々を捏ねたのだろう。彼女が一筋縄で帰されるとは思えない。


 一方、大人しく席に座っていた菊理は目を丸くしていた。


「早いのね。てっきり明日になると思って、帰ろうかとしてたところだわ。お弟子さんが絶対帰ってくるっておっしゃるから、半信半疑で待っていたけれど……」

「はは、現地調査は得意でのう」


 ハンチング帽を壁に掛けて、センリが笑った。安楽椅子探偵かと思う依頼人が多いが、実際は現場に赴く方が好きなのだと彼は言う。


「……それで」


 無駄話はほどほどに、静かな声で菊理が切り出す。


「父を連れていないというのは、()()()()()()なのね?」


 動揺も、怒りも、悲しみさえも見受けられない、ただ淡々と事実を確認する声。


 問うている割に、確信がこもっていた。問われたセンリが笑顔をやめた。


「……うむ。玖徳は異獣に喰われていた。正義感の強いあやつのことじゃから、自身の結界に誘き寄せたが返り討ちにあった……というところじゃろう」


 旧友であるのだろうか。真相は定かではないが、落ち着いた口調で話すセンリの声色には、それでもわずかに暗い色が浮かんでいた。


「――或いは、最初から負けるとわかっていたのか。彼はもう老齢であったが、結界は相当強固にできておった。あやつは最後に残された力で、結界に蓋をし……異獣を閉じ込めるつもりだったのやもしれん」


 言われてみれば、確かにおかしな話だ。シブキたちが駆けつけた頃にはもう、玖徳の世界はとっくに異獣の瘴気で上書きされていた。玖徳が行方を眩ませた時期と照らし合わせても、倒されてから三日は経っていたとておかしくない。


 しかしシノサキは大事に残しておいた玖徳の脚を喰らうばかりで、外に出ようともしなかった。あれはもしかしたら、出られなかっただけなのかもしれない。


「……何も、異獣と心中しなくたっていいじゃない」


 報告を受けた菊理の顔が歪む。ぴんと伸びた鼻筋が下を向く。


「本当……馬鹿なお父さん」


 ぽつり、と落ちた雫は一筋だけだった。


 ひどく哀しい声が聞こえたのは一瞬だった。


 未だ溢れて外へ向かおうと目尻に溜まる水滴を、前脚で器用に拭い、自分を落ち着けるように大きめに息を吐く。


「父が生きていないことは薄々わかっていたの。何も言わずに失踪するひとじゃないから。……死んでいるだろう父を捜せだなんて、少し酷な依頼をしてしまったかもね」


 諦めとは少し違う音色で、九尾狐はそう語る。


 再度上がった顔は、晴れやかだった。


「でも……ありがとう。父を、見つけてくれて」


 浮かべられた笑顔は作り笑いではない。優しい狐に、センリは目を細める。


「お安い御用さ。異獣も落雷で消滅した。神社の方は、もう近づいても問題ないじゃろう」

「そう。……じゃあ、綺麗にして、継いであげなきゃね。父の意志を」


 玖徳は自身の最期に、わざわざ自分が祀られていた旧神社の鳥居を選んだ。その中に、自殺のような作戦を立てるためだけとは思えないほど、美しい山の幻想を描いて。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ