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【現代バディバトルファンタジー】Spla Brave   作者: 南河天狼
Chapter.3「鳴神探偵と李渦の主」
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   8/13

「お弟子さんの言う通り、覚えていたとしてもすごかった。ここまで早く解かれるとは思わなかったわ」

「ははは、恐悦至極じゃのう」

「……じゃあ。次が最後よ」


 しかし依頼人も、まだ切り札を残していたらしい。凛とした、鋭い視線がセンリに向けられる。


「とある神の名前が答えです。正解できたら、正式に依頼を申し込むわ」

「よほど自信があると見た。楽しみじゃ、受けて立とう」


 センリの目の色が変わった。穏やかながらも鋭く、静かな波動だ。


「では、答えて」


 ゆっくりと。依頼人の口が開かれる。


「――"清めれは 口説(くど)くすももに ありし(えん)"」


 芯のある、落ち着いた声が四つめの()()をかける。今度はセンリも即答ではなかった。探るように金色の目をぐっと細めている。


「ふむ、聞いたことのない()()じゃのう。きみが考えたものかな」

「ええ」

「なるほど。……では、解いていくとしようか」


 言いながらも、センリの中ですでに見当はついている。揺らぎを見せない彼の狐目がそれを表していた。


「まず"清め"るというのは濁点を除くこと。"清めれば"ではなく、わざわざ"清めれ()"と詠んでいたからのう。となると"口説(くど)く"は『くとく』と読めるか。で、すももときて、最後は縁、と」


 その声は謎解きの最中というより、解き明かしのようだった。もう決着はついている。


「縁の神といえば数多いるが、『く』と『く』……『くく』と読めばあとは察しがつく。(すもも)という漢字は『り』とも読める。『くくり』に縁の神。これで完全に絞れるのう」


 探偵の口元に、薄く三日月が浮かぶ。


「よって答えは――菊理媛神(くくりひめのかみ)。日本神話においてイザナギとイザナミの仲を取り持ったという、縁結びの神じゃな」


 センリが答えを出してから、三秒間の沈黙の後。依頼人はついに感嘆のため息を漏らした。


「……正解。おみそれしたわ」


 そういって彼女は変化を解いた。黒髪が徐々に明るい稲穂の色となる。


 しばらくして、そこにあったのは人間の女性ではなく、美しい毛並みを持つ九尾の狐だった。顔や体のところどころには鮮やかな朱の紋が描かれている。


「私は幻獣・九尾狐の菊理(くくり)といいます。鳴神探偵、あなたに依頼があって参りました」


 最後の問いの答えと同じ名前。姿こそ全く違えど、その凛とした声は確かに先ほどの女性と同じ音色だ。


 ふと、由紀が菊理の言葉に首を傾げる。


「……シブキくん、幻獣ってなに?」

「龍とも異獣とも違う種族だよ。肉体は本来はなくて、波動だけの生命体だ。顕現してる時は身体つけてっけどな。人や龍の善の波動から生まれたって言われてて、龍みたく人と契約して異獣と戦ってる奴もいる。まあわかりやすく言えば、いい妖怪みてえなもんだな」

「へ〜……いろんな種族がいるんだね」


 確かに菊理の姿は妖怪そのものである。九尾の狐というのは定番だ。とはいえ、彼女はとても恐ろしいものという感じはしない。だからシブキは、幻獣を「いい妖怪」と喩えたのだろう。


 彼女の正体を最初から見破っていたセンリは特に驚くでもなく、にこりと柔らかい笑顔を浮かべる。


「では、菊理殿。きみの依頼というのは?」

「父を――玖徳(くとく)という九尾狐を、探してほしいの」


 狐の真っ直ぐな瞳が、窓から差し込む陽光に照らされて淡い輝きを放つ。

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