表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【現代バディバトルファンタジー】Spla Brave   作者: 南河天狼
Chapter.3「鳴神探偵と李渦の主」
86/223

   7/13

「なるほど。ここまですぐに見抜けたのはあなたが初めてよ。噂通りの凄腕ね」


 彼女の言うように、その変化は類稀なるものだった。


 若いとはいえどそれなりに経験を積んだシブキでさえ、彼女の正体を一発で見抜けなかったのだ。


 しかしセンリは迷いなく、平然と彼女の本性を見破ってみせた。


「だけどまだ、判断材料が足りない。……ねえ、探偵さん。()()はお好き?」


 それでも()は疑り深い。妖麗な笑みを浮かべ、試すようにセンリに問いかける。依頼に移る前にセンリの技量を見極めようとしているのだろう。


「たまにそういうのもいいのう。どれ、聞こうか」


 対するセンリも、動揺ひとつ見せない。細い金の眼はやはり緩く弧を描いている。


「じゃあさっそく、ひとつめ」


 状況が飲み込めていないシブキたちを差し置いて、依頼人は()()を出し始めた。


「"十里の道を今朝帰る"」

「濁り酒」

「……へ?」


 出題を聞き、不要な間を一切置かずセンリは答える。


 あまりの速度と難解な問いに由紀は間抜けな声を漏らしたが、センリはにこにこと笑ったまま説明する。


「"十里"というのは二つの五里、と置き換えられる。二の五里、つまり『にごり』じゃ。"今朝帰る"は『け』と『さ』をひっくり()()()『さけ』。で、合わせて濁り酒、じゃな」

「……えぇ?」


 解説を受けても由紀は未だ頭を傾げている。シブキや勇輝も驚愕を隠せていなかった。外野で唯一、ヒビキだけはセンリの実力を知っているからか、顔色を変えていなかったが。


 依頼人は手応えありといったように、にやりと不敵に口角を上げる。


「正解。さすがね。じゃあふたつめ」


 無駄を好かない性格なのだろう。所感はそこそこに、すぐ次の問題に移る。


「"上消したる雪ぞ絶えせぬ"」

「狐」


 当たり前のように、これも即答だ。


「"雪"の上、つまり頭文字である"ゆ"を消して『き』。"絶えせぬ"は常と言い換えられるので『つね』。よって『狐』じゃ」

「ほぇ〜……」


 由紀はもはや理解することを諦めたらしい。脳がパンクしたのか、表情が若干虚ろである。


「これも正解。なら次はどう?」


 由紀たちの困惑には目も暮れず、依頼人は淡々と問いを出し続ける。


「"命は笛の間"」

「猫。干支で"いのち"、つまり亥の(のち)は『子』。いろはうたで"ふ"と"え"の間は、け()()て、じゃから『こ』。二つを合わせて読めば『猫』となる」

「さっ……ぱりわかりません」


 ハイテンポで駆け抜けた謎解きに、いよいよ由紀が白旗を上げた。いつもなら「これだから猪は」だとかなんとか罵倒するはずの勇輝も、今回ばかりは由紀と同意見だ。


「全て正解よ。それにしても早かったわね。もしかしてご存知だったかしら?」


 冷静に振る舞う依頼人も驚嘆していたようで、いつの間にか出されていた茶を口にしてから尋ねる。


 対するセンリは、未だ余裕綽々である。


「うむ。いずれも後奈良院御撰何曽ごならいんぎょせんなぞからの抜粋じゃな」


 後奈良院御撰何曽とは、室町時代に後奈良天皇が集めた日本初のなぞなぞ集のことだ。見聞の広いセンリは当たり前のように知っていたらしい、が。


「それにしてもあの速度は……」


 珍しく驚きが顔に出ている勇輝が呟くと、依頼人も長い髪を揺らして頷く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ