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強烈にその場を支配する八岐大蛇の波動に各々戦慄していたが、ついにシブキが口を開く。少しだけ声が震えているが、それでも青い瞳は目の前の異獣から離されない。
「八岐大蛇つったな、アンタ。……あの、八岐大蛇か?」
「……如何にも」
蛇の口角が不気味に吊り上がる。
跳ね上がる心拍数には無視を決め込んで、シブキは尚もその化け物に食ってかかろうとした。
「こんなところでお目にかかるとは思わなかったぜ。何が目的だ」
「それを言うには、貴様はまだ青すぎる。……いずれまた会おう。期が熟せば、嫌が応にも知ることになろうさ」
意味深な言葉を残して、八岐大蛇は何もない空間に消えてしまった。
そうしてようやく、四人は呼吸さえできなくなりそうな圧迫感から解放された。はあ、とため息をつきながら、シブキが肩を落とす。
「ったく、なんだってんだ。次から次へと……」
「…………」
「ん……グレン?」
何やら違和感を覚えたシブキが、隣の弟に声をかける。苦しげに肩で息をするグレンの目は虚ろだ。
「わるい……げんかい、だ」
「は……っ、おい、グレン!」
即座に剣を消滅させ、自分の方に倒れてきた弟を両手で受け止める。それに気づいた勇輝と日向も駆け寄ってきた。
「おいシブキ、グレンは⁉︎」
「あー……焦んな日向。大丈夫だ、生きてる。気ィ失っちゃいるがな。ちっと休ませてやってくれ」
穏やかな声色で言い、炎の中心部に似た弟の金髪を優しい手つきでそっと撫でる。
彼が焦燥を見せたのは弟が倒れた直後くらいだ。すぐに平静を取り戻したあたり、さすがは兄といったところか。
「気力で立ってたんだろうな、さっきまで。気が抜けてぶっ倒れたんだろ。……たまにとんでもねえ根性見せんだよなあ、コイツ」
グレンの呼吸はいくらか安定しはじめたが、日向は尚も不安そうな表情をしていた。
ひとまず力の抜けたグレンの体を日向に預ける。相棒の鼓動を確認してようやく、日向の緊張は解けたようだ。
炎の龍と龍使いが落ち着いたところで、勇輝がシブキに声をかける。
「お前は大丈夫なのか」
「あー、俺は平気だよ。こんくらいは休めば治る。グレンの方も、クサキ姉さんに任しときゃ心配ねえ。お前らに怪我がなかったのが一番だ」
あっけらかんと言うシブキだが、彼の負った傷も相当なものであるはずだ。不満げな顔で勇輝が相棒のあばらに手を当てる。
「いッで……オメーいきなり何しやがんだ!」
「平気だとか言ったのはどこのどいつだか」
「悪かったって、拗ねんなよ……いってぇ……」
「肩は貸す。意地を張るな」
「……じゃ、遠慮なく」
事実、シブキも支えなしで立っているのはなかなかに苦しかった。大人しく勇輝の肩に腕を回す。
ちらりと見上げた相棒の横顔は、やはり悔しそうだ。
「結局、助けられてばっかりだ」
「バーカ、何言ってんだ。お前のおかげで生きてんだよ、俺は。誰一人欠けてちゃ退けられなかった。頼りにしてるって言ったろ? 相棒」
に、と歯を見せて笑う水龍の言葉に偽りや虚勢はない。まっすぐな信頼を受け、勇輝の表情が少し解れる。
それに満足げな顔をしたシブキは、勇輝から日向へと視線を移す。




