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防御が緩んだその刹那、水龍の剣はヤマオロシの軟い腹を突き通した。ギャッと覇気のない悲鳴を上げて、ヤマオロシが光の粒と化し消滅していく。
消えていく異獣の血液を払うように剣を一度振り、他の三人の様子を見ようとシブキが後ろに目を向けると、勇輝と日向が一体を挟み撃ちにして仕留めているのが見えた。
既に戦闘を終えたらしいグレンも、シブキの隣まで歩いてくる。
「頼りになるねえ、俺たちの相棒は」
「感心してる場合か。……そら、お出ましだ」
「わかってるって」
空間を切り裂くように、それは現れた。
ゆっくりと近づいてくる巨獣の、憎悪を宿した双眸が、シブキたちを見下ろす。
角獣だ。以前シブキが斬り落としたツノは、すでに新しいものに変わっている。
「なるほど――今度は弟も連れてきたか。ますます奴らのようで憎たらしいな」
「そりゃどーも。アンタも絶好調みてーで」
「口の減らぬ小僧め。此度は容赦せんぞ」
実際、角獣の波動は二日前とは全く質の違うものだった。気を強く持たなければ呑まれてしまうほどの、凄まじい殺意。
しかしシブキが怖気づくことはない。それが仲間の死につながることを知っているからだ。
むしろ味方を鼓舞するかのように、ニヤリと笑って挑発する。
「こっちだって万全なんでね。ナメてかかると痛い目見るぜ?」
「フ……面白い。ならば」
殺気が、増していく。
「地獄を見せてくれようぞ」
不気味な低音で言い放った後、角獣が咆哮を上げる。大地を揺さぶるようなそれに思わず目と耳を塞ぐシブキだったが、これではまずいとすぐに瞼をこじ開ける。
突進してくる角獣は、こちらを真っ直ぐに狙っている。すんでのところで右に転がり、どうにか攻撃を回避。避け際、角獣の脚の爪に左腕を裂かれた。
「あッ、ぶね……!」
跳ね上がった心拍数のせいで息が切れそうになる。少しでも油断を見せれば命はない。邪悪なまでの破壊力の手前、それは明らかだった。
獲物を狩り損ねた角獣はすぐに急ブレーキを掛け、しつこく追尾すべく方向を変える。
しかし角獣の追撃は不発に終わった。
「"スラッシュバースト"」
こちらとて一人ではない。
グレンの握った剣には炎が宿っている。角獣の尾を斬り落とした紅の斬撃は、軌跡を描き終わったと同時に派手な爆発を起こし、尾の断面を焼きつける。
顔を顰めた角獣は、自身の背後に立つ炎龍を蹴り払おうと左後ろ脚を地面から浮かすが、相棒がやられるのを黙って見ている龍使いなどいるわけがなかった。
「龍術――"火花"!」
声を張り上げたのは日向だ。リングルに嵌めたグレンの龍結晶が眩く輝き、角獣の眼前に技名通りの激しい火花を放つ。
わずかな間視界を奪われる角獣の後ろで、グレンの波動が真っ赤に燃え上がる。それはまさしく彼に与えられた名にふさわしい、紅蓮の色だ。
炎龍の目論見に気づいたのか、角獣は低く唸って己の波動を具現化させる。現れたのは鋭く尖った岩の欠片。それがいくつか宙に浮いたかと思えば、恐ろしい勢いでグレンへと放たれる。
しかしそれをも上回るスピードで、岩と炎龍との間に水龍が割り込んだ。
「やらせるかよ――"キャタラクトウォール"!」




