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 異獣はこちらの都合には合わせてくれない。であればこちらが調整するしかないのだ。


「構いません。それで――どこですか」


 社交辞令は不要だと言わんばかりに、食い気味に勇輝が本題を促す。


『先日と同じ場所だ。李渦公園近辺から、上位種・角獣の反応。中位種・ヤマオロシの反応も三体分確認してる』


 間違いなく以前乱入してきたあのヤマオロシたちだろう。ヤマオロシは中位種とはいえ、他の中位種異獣よりも基本的な戦闘能力が高い。


 小細工はほとんどしてこないものの、鋭い鉤爪と堅い守りはなかなかに厄介だ。事実、ハンデこそあれどシブキと勇輝も若干の苦戦を強いられた。


『ひとまず、警察には周辺の警備を頼んでる。誠司とグレンも向かっているから、合流次第討伐にあたってほしい』

「わかりました。では」


 通話が切れたのを確認して、シブキが椅子から立ち上がる。大きく息を吸い込んで、吐いて。


「……っし。気合入れてくぞ、相棒」

「ああ。お前こそ油断するなよ」

「当然!」


 迷いも恐怖も吹き飛ばすような声は、さざなみの音色にも似ている。


 そうして水龍と龍使いは、晴天の下へと駆け出した。






 李渦公園には物々しい雰囲気が漂っていた。立ち入り禁止の黄色いテープが辺りに張り巡らされている。日時のおかげか野次馬はほとんどいないが、警察官が何人も集っている光景は異様でしかない。


 シブキと勇輝の姿を見ると、警官の一人が彼らを止めた。


「ちょっと君たち、悪いがこの先は――」

「そいつらはオレたちの仲間です。通してやってください」


 テープの向こうから、冷静な声が聞こえた。振り向いたのはクリーム色の髪の少年――日向だ。


「そうなのか、引き止めて悪かったね。頼んだよ」


 敬礼をして警官は横に退く。シブキと勇輝も敬礼を返してから、立入禁止区域へと足を踏み入れる。


 先に到着していたらしいグレンが不満げな顔をした。


「遅いぞ、兄さん」

「遅かねーだろ、全速力だぜ?」


 軽口で返答した後、シブキの視線は弟から公園を囲む木々の一角へ移る。


「ったく、またあそこか。見つかりにくいからかは知らんが、随分狭いトコが好きなヤツだぜ」

「おい、そろそろ行くぞ」

「まあそう急かすなって。準備はできてっけどな」


 日向の咎める声を受け流し、シブキの口角が不敵な三日月を描く。波動の一部が剣の形に変化して顕現する。


「さ、任務開始といこうぜ」


 四人の青年たちは一斉に走り出す。木陰の方から気味の悪い空気が漂っている。角獣がどこにいるかは明白だ。


 幹に近づくと、待ち構えていたらしいヤマオロシが三体、彼らに襲いかかってきた。


 一体は龍使いの二人を、二体目はグレンを、そしてもう一体はシブキを狙って飛びかかる。


 素早く剣で弾き返すシブキの動きには、先日よりも余裕がある。不意打ちでもなければ負傷状態でもない。その上今度はこちらが数的有利をとっている。この状況でやられるほど弱くはない。


 唸りながら後退したヤマオロシはすぐに突進を繰り出してくるが、シブキの大振りな回転斬りに巻き込まれてわずかによろける。

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