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いつもの飄々とした口調。しかし彼の肩はいつの間にやら海色のマントで覆われ、その手には剣が握られている。勇輝の右手にも同様に、薄紫の大鎌がある。
「眠ってもらおうか!」
威勢よく放たれたその言葉は狼煙のように、戦いの始まりを告げる。
凄まじい速度で角獣の足元に潜り込んだシブキは、右足に鋭い一閃を浴びせる。
硬い灰色の皮膚を切り裂いて飛び出た返り血がシブキに降りかかるが、そんなことを気にしている余裕はない。
鬱陶しそうに唸った角獣が、シブキの次の一撃をかわした。そのまま勇輝の方へ突進。比較的脆い龍使いから始末しようという算段か。
だがシブキも、そう簡単に相棒を奪われるわけにはいかない。無駄のない動きで角獣を追い、跳び上がってその眼前に躍り出る。にい、とどこか楽しげに口角が吊り上がっている。
「勇輝!」
「わかってる!」
一方の勇輝は真剣な表情だ。アメジストの瞳が目の前の敵を見上げて、光る。
「波動術――"射光線"ッ!」
力強い詠唱とともに表れた光の矢が、角獣の顔面に向かって放たれる。
それに一瞬視界を奪われた角獣が怯んだその隙に、シブキの準備は整った。深く吸い込まれた息に合わせて、握った剣に青い波動が収縮していく。
「――"ラピッズブレイド"‼︎」
言の葉に呼応して、剣の纏う波動は激流に変化する。
渦巻く水流を宿した刃が、角獣の額に生えた中央のツノを、情け容赦なく斬り落とす!
「グゥッ…………」
低い呻きが静かに響く。勇輝がとどめを刺そうと構えたが、シブキは左手でそれを制した。
「おい、シブキ?」
「…………」
黙り込んだシブキは不用意に動こうとはせず、角獣の様子に注視している。覚えているのは強烈な違和感。
(相手はあの角獣だ。この程度か? ンなわけねえ。何か企んで――)
疑念の答えはすぐに提示された。のっそりと、異獣の巨体が立ち上がる。そして。
「グオォオオオオオオォォォ‼︎」
地を揺らすような咆哮。シブキと勇輝は思わず耳を塞ぐ。断末魔なんてものじゃない。
むしろ敵は、十分余裕を残している!
鼓膜をつんざく絶叫が止み、目を開けたシブキたちの前にあったのは、三体の別の異獣である。
角獣の姿はそこになかった。
「ッチ……逃げた上に増援かよ」
あれだけ余力のある角獣を二人だけで相手するのも骨が折れるが、この状況も決して嬉しいものではない。
敵は中位種・ヤマオロシ。人間と同じ程度の背丈で、ハリネズミのようにずらりと棘を生やした二足歩行のリザードマンのような異獣だ。妖怪として鳥山石燕が描いたものとよく似ている。それが、三体。
ヤマオロシのうち二匹が跳ね、一匹は勇輝の真後ろに、もう一匹はシブキと勇輝の間に割り込んだ。
位置を変えなかった三匹目のヤマオロシは、シブキに狙いを定めて鎌のような爪を突き出しながら突進する。
咄嗟に剣で弾き返したものの、ヤマオロシは間髪入れず錐揉みするような回転突進で距離を詰めてくる。
刻まれる前に右に避けたシブキだったが、鋭い爪が左肩を掠めた。




