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回を重ねるごとにシブキの仲裁が雑になっているのは気のせいだろうか。気のせいだということにしておこう。ひとまず勇輝と由紀の喧嘩は止まったから問題はない。
ここから先は機密事項。由紀は特例だが、本来なら一般人に聞かせるべき情報ではない。シブキの声が少し小さくなる。
「勇輝のアレは波動術、ってやつだ。他の龍使いと違って、こいつはほとんど龍結晶を使わねえ。代わりに波動術を使ってる」
「ハドージュツ? 龍結晶っていうのはアレだよね、黒神の持ってる宝石! シブキくんのチカラの結晶、だっけ?」
「そ。よく覚えてたな」
「へへ」
シブキに褒められた由紀はご満悦といった表情だ。対照的に勇輝の表情が若干不機嫌になるが。
「こいつは龍結晶――契約龍である俺の波動じゃなくて、自分自身の波動を武器にしてんのさ。お前が見た光ってのは"射光線"っつって、波動を光の矢に変換する攻撃手段だな。ほんとなら、人間に波動操作はできねえんだが……。勇輝は特例もいいとこだ」
言いながらシブキが勇輝の方に視線をやると、勇輝は大袈裟だと言いたげに首を振る。
「教わったことをやったらたまたまできただけだ。別に特別じゃない」
「『やったらできた』がフツーじゃねえんだっつーの」
「教わったの? それって誰に――」
由紀の質問を遮って、勇輝の携帯が音を鳴らす。取り出した端末の画面に表示される名前を見て、勇輝が渋い顔をする。
その表情で、シブキと由紀も電話の主を察したようだった。
「支部長からだ」
「ま、いい話じゃねえだろうなあ……」
「出るぞ。……黒神です。また異獣ですか」
電話に応答する勇輝の声は、柚木に対するいつもの声――結構とげのある声――だが、僅かに緊張が滲んでいる。
「……上位種? どの辺です」
眉を寄せた勇輝がそう聞き返した途端、耳を立てていたシブキの顔色が曇る。
「上位種、ねえ」
「ねえシブキくん、ジョーイシュって?」
「異獣の強さで分けたランクみてーなもんだ。一番弱いのが下位種。中間が中位種。李渦公園でお前を襲った百々目鬼はこれ。んで、一番強いのが上位種」
「じゃあ……もしかしてやばい?」
「さあな。まだなんとも」
恐らくは先日柚木が言っていた「上位種らしき反応」とやらだろう。話の全容がまだわからないのでなんとも言えないが、いい兆候ではないことは確かだ。
「……わかりました、準備はしておきます。では」
手短に通話を終えた勇輝は、端末をポケットに戻す。それからシブキに向き直り、口を開く。
「李渦市内に上位種異獣・角獣の反応を捉えたらしい。潜伏中だが、いつ顕現してもおかしくない、と」
「警戒しとけってこったな……にしても角獣とは、また厄介なのが出てきたモンだ」
ため息混じりにこぼすシブキの声は懸念の色を帯びている。
どうにもとんでもない化け物であるようだが、いまいちピンときていない様子の由紀は首を傾げた。
「どんなの?」
「でっかいサイみてえなドラゴンってとこだ。もし見つけたら知らせてくれ。履き違えても追っかけたりすんじゃねーぞ」
「サイみたいなやつね、わかった! 気をつけるね!」
お気楽な様子で返した由紀にシブキは苦笑を浮かべるが、聞き分けがいいだけまだマシだ。




