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 現実に引き戻されて口を閉じ、目線を上げて音のする方を見れば、見慣れた顔が二つあった。焦燥を抑えこむように眉を寄せている勇輝と、心配そうに眉を垂れる由紀だった。


 クサキに連れられてやってきた二人は、足早にシブキの座るベッドの方へと歩いてくる。


「シブキ」

「シブキくん、大丈夫?」

「あー……悪いな、二人とも。心配かけちまったみてーで」

「そんなのはどうでもいい。それよりシブキ、体は怠くないのか? 息は?」


 不安げに揺れる紫の波動はいっそ哀れだ。これではどちらが心配される側なのかわからない。どうにも可哀想になって、手を伸ばして彼の柔い癖毛を少し撫でた。


「大丈夫だ。まだちっとぼーっとはするけど、な」

「……おい、撫でるな」

「なんだ、こういうのは嫌いか?」

「もう子どもじゃないんだぞ」

「そうだったっけな? 俺と比べりゃまだまだ青いと思うがねぇ」

「種族が違うだろうが」


 言いながらけたけた笑うシブキに、勇輝は露骨に不服そうな顔をする。不安は少し薄れただろうか。


「黒神ずっる……」

「残念だったな」

「お前ヤなんじゃねーの?」

「まあ嬉しくはないが……」

「シブキくーん! 私は?」

「あーはいはい、こっち来な」

「は」


 ねだる由紀が妹のように思えて応えようと呼ぶと、勇輝が素っ頓狂な声を上げた。どうやら自分以外の人間が撫でられるのはもっと不服らしい。


 とことん素直じゃない奴だと、内心でシブキは笑う。


「おいシブキ」

「なんだよ、嬉しかねーんだろ?」

「そういう問題じゃない」

「めんどくさいなぁー黒神ー! 撫でてほしーなら言えばいいのに捻くれてるからこーなるんだよーだ!」

「貴様……………………」


 戦闘中でも聞かないようなドスの効いた声で勇輝が唸る。この二人の喧嘩は最初の頃こそ面倒だと思っていたが、今は弟と妹の喧嘩に見えて微笑ましい。当の本人たちは全く微笑ましくないのだろうが。


「こらこら、やめろオメーら」

「他人事みたいに言ってくれるな。誰のせいで俺たちがこんなに慌てたと思ってるんだ、シブキ?」

「あっそうだよそれだよシブキくん!」

「お前そこ突く?」

「こっちが本題だ」


 むすっとした顔で言われてもいまいち締まらない。ぎちぎちに締まっていたらそれはそれで居心地が悪いから、このくらい緩い方がシブキにとってもちょうどいいのやもしれないけれど。


 うっかり忘れるところだったが――むしろ、シブキには「適当にごまかそう」という魂胆が少しあったくらいだ――この二人はわざわざ喧嘩をしにここまで来たのではない。目覚めたシブキの見舞いに来たのである。


 二人分の視線をじいっと向けられて気まずくなったシブキが目を逸らすと、ちょうど部屋の扉が外から開けられた。


「シブキ、具合は?」

「あ……ヒョウ兄。姉さんも」


 入室してきたのは先程出て行ったクサキと、龍魔の長兄だった。動揺の色をちらりとも見せず毅然と振る舞っているヒョウだが、ほんの少し、心配するように波動が揺れている。弟が倒れたのだから当然だ。


 彼が問うたのは本日三回目の質問だったが、シブキも煙たがるほど薄情ではなく、律儀に首を縦に振って答える。


「大丈夫、大したことないよ」

「後遺症がないならよかったが……無茶するなって言っただろう?」

「ごめんって……けど、」

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