6/15
「そう。波動が乱れて消えた……ってやつ。あれについては今、情報部に調べてもらってる。ここ数ヶ月、急激に異獣が増え始めたのと関連があるかもしれない。加えて上位種らしき反応も、わずかだけど観測してる」
「そりゃあまた……不穏ですね」
眉をひそめてシブキが言う。彼らが上位種たる目目連と対峙してから、まだ丸一ヶ月も経っていない。
それなのにまた上位種の反応が出たという。普通なら、これほど短いスパンで上位種異獣が現れるはずはない。龍たちの知る歴史において、そのイレギュラーが起こっているのは大抵――大規模な異獣災害の直前である。
シブキの言葉に頷いて、柚木が話を続ける。
「現状、異獣の波動が乱れたケースに遭遇してるのは君たちだけだ。一応この件については他の龍使いたちにも連絡していってるけど、当事者である君たちにしかわからない感覚みたいなものもあるだろう。少しでも似たような現象を確認したら、すぐに報告してほしい」
わかった、とか了解、など各々が了承の意を示す。戦闘前ですら柚木に文句の一言二言言わねば気がすまない勇輝も、さすがにこの指示にまで突っかかる気はないようだ。
「それじゃあ、よろしく頼む。……ああそれと、次の任務なんだが――」
「律也!」
柚木の声を遮って、ヒョウが相棒の名を呼びながら待合室へ駆け込んできた。
ヒョウは柚木と目を合わせるなり、やや早口気味に要件を伝える。慌ただしい様子から、焦燥が滲む。
「異獣出現だ。中位種・オオアゲハが四体、場所は李雨日市サンカラ前。人通りも結構多いし、潜伏する気もなさそうだから急いだ方がいい」
「早速、か……。誠司、グレン、勇輝くん、シブキくん。頼めるかい?」
「はい」
「当たり前だ」
シブキと日向が力強い返事で答え、勇輝とグレンも首を縦に振る。
「ありがとう。オオアゲハたちは任せるよ。くれぐれも無茶はしないこと。じゃあ、行ってきてくれ」
柚木の声に頷いた四人は部屋を出、階段を駆け下りて支部の外へ飛び出していく。
人で賑わう街路を駆け抜け、目指すはヒョウに指定された場所――サンカラーストア李雨日市店前。都内ではそれなりに有名なコンビニチェーン店で、一般にサンカラと略される。
李雨日市の支店は規模も大きめだ。その近隣で異獣が発生したとなれば、当然事態は急を要する。
四人が目的の場所に辿り着くとすぐ、彼らの視界に巨大な赤と黒の蝶が映った。オオアゲハと呼ばれる中位種異獣、今回の標的である。
突如として現れた怪蝶に驚き、パニックに陥っている一般人も少なくはなかった。辺りをさっと見回したシブキが顔をしかめ、小さく舌打ちをする。
「……思ったより数が多いな。避難誘導が最優先だ」
「おれが食い止める。誠司、お前はその間に一般人の避難を。兄さんと勇輝はコンビニの方を頼む」
拳に炎を宿しながら指示を飛ばすグレンに頷き、シブキと勇輝はグレンと日向に背を向け、走る。
「勇輝! 外は俺が守るから、お前は店内の客が外に出ないようにしてくれ!」
「了解した。気を付けろよ、シブキ!」
「当然!」
相棒に従い勇輝が店に入ると、外からは聞こえなかった耳をつんざくようなざわめきがわっと溢れ出す。




